第6回 仕事の質に決定的な影響を与える問い -「成果は何か?」

前々回、前回とドラッカーの「マネジメントを成功させる為の五つの質問」のうち、第一問 「事業は何か?」第2問「顧客は誰か?」第三問「顧客は何を価値として買うか?」について書きました。

第4問目は、「目指す成果とは何か」、そして最後の第5問目に「その為の計画はどうなるか?」と続きます。このように、ドラッカーの問いは「非常に大きな視点の問い」から、徐々に「具体的な、実行・実践的な問い」へと集約することが特徴です。

組織や役職に応じて、問いへの答えはさまざまだと思います。大事なのは「問いを立てる」ことです。その問いに対して、メンバーの意見も取り入れながら「組織やチームとしての答え」を創っていくプロセスがマネジメント計画になります。

そういう意味で、第4問目の「成果は何か」という問いは、仕事の質を決める決定的に重要な問いです。私が日々、問題意識を感じるのは、多くの組織で「目指す成果」についての議論が曖昧なまま仕事が進んでいることです。

例えば、社員研修企画の際に、下記のようなやりとりがよくあります。

人事ご担当者Aさん「今回の研修では、○○スキル講座も入れて、著名な大学教授などもスピーカーとして講演していただく形にしたいです。」

私(コンサルタント)「なるほど。ところで、今回の研修にかなりの時間的・財政的投資もされると思いますが、目指す成果とは何でしょうか?」

Aさん「次世代の弊社の経営を担うリーダーの育成ですよね。」

私「はい、それは分かるのですが、今回の研修を終える際に、具体的に参加者の方が特にどんな気づきや学びを得てほしいでしょうか。いろいろあると思いますが、どうしてもこれだけは達成したい!と思うことを一、2点挙げて頂けませんか。」

Aさん「そう問われてみると、なかなかイメージできていないかもしれません・・。」

このように、「成果は何か」という問いが徹底して議論されていないことで、努力や投資が空回りしてしまうことは大変残念です。

この研修のケースで言えば、目指す成果がクリアになって初めて、「どんな講座を重視するか」「何日間行うか」「誰をゲストスピーカーとして招聘するか」といった各論が決まるはずです。もちろん、組織の事情で各論が一部先に決まることもあると思いますが、全体計画では必ず「成果は何か」に立ち返ることが大切です。

これは、全社経営会議を開催する際にも、マーケティング用のWebサイトを構築する際にも、新製品のプロモーションイベントを開催する際にも、すべて共通して必要な問いです。

「成果」は複数あるかもしれません。ドラッカーも、「経済的な成果(利益等)」「新しい価値の創造に関する成果」「人材の育成に関する成果」といった複数の種類の成果が組織には必要だと力説しています。

目指す「成果」を共有することで、メンバーの目的感、現場で判断をする際の優先順位、必要な機能や人材の要件などについて明確な一つの方向性が生まれ、圧倒的に仕事の生産性が高まります。

難しい議論ではありません。「我々がこの仕事で達成したい『成果』とは一体何だろうか」を確認し、何らかの答えを導き出しておくことが大切です。メンバーの側から見れば果たすべき貢献がより分かりやすくなります。また、その後に控える「その為の計画は何か」にも答えが出しやすくなります。目指す成果のイメージが具体的になっていないと、適切な計画も立てられないはずです。

ドラッカーの問いは、コストをかけなくとも、正しい「問い」をマネージャーが立てることで仕事を成功させられることを教えてくれます。是非、皆さんも日々の業務で試して効果を実感してください。

次回は2012年6月7日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

PROJECT INITIATIVE株式会社 代表取締役

藤田 勝利

1972年生まれ。上智大学卒業後、住友商事、アクセンチュアを経て、クレアモント大学院大学 P.F ドラッカー経営大学院にて経営学修士号取得。ベンチャー企業執行役員として事業開発に従事後、2010年独立。次世代経営リーダー育成や新規事業の分野で幅広く活動中。著書:「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」(日本実業出版社)
PROJECT INITIATIVE株式会社

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