第18回 「知識資本」が豊富で儲かる会社とは

「もっとお客さんを喜ばせ、感動を与えられるサービスはないだろうか」
「どうすれば、もっとワクワクする、喜ばれる商品を提供できるだろうか」

このような強い関心と欲求にドライブされ、活発なコミュニケーションを通じて創造的な「知」が次々と生まれ、それが商品やサービスに反映され業績につながっている会社は、「知識資本」が豊富な会社です。そのような会社は、社員の働きがいと収益性の両方が実現できています。人間にとって自分たち独自の知恵や技能が形となり顧客に喜ばれることほど働きがいが高まることはないからです。

「資本」とはそもそも何でしょうか。
一般的に会社で言う「資本」とは「財務資本」すなわち「お金」を意味します。
資本金という事業に必要な資金が最初にあり、その資金が投資活動により「産業資本」つまり工場、土地、設備・機器などに形を変えていきます。
貸借対照表(Balance Sheet)上では、会社がお金をどのように集めたかが右側の「負債の部」と「純資産の部」に、その資金をどのように投資しているかが左側の「資産の部」に示されます。

かつては、この財務資本・産業資本の中身と規模が会社の収益性を決めるほぼ唯一のバロメーターでした。
すなわち財務力を駆使して土地、機械、設備、労働力などを大量に有することが競争優位の源泉でした。

しかし、財務資本が如何に豊富でも、知識資本が乏しい組織は成功しにくい環境になりました。
知識資本とは、そこで仕事をする人間の知識、知恵、技能、思考・アイディア、協力・チームワーク、顧客からの強い信頼感などです。
仮に財務資本がほぼゼロに等しくても、知識資本が豊かであれば次々に事業機会が発見され、収益が生まれます。
知識資本は財務資本・産業資本と異なり外部からは判別しにくく模倣しにくいため、長期利益にもつながりやすい特性があります。

ドラッカーは、50年以上前からこの「知識資本」の時代の到来とそのための準備の必要性を唱えていました。
彼はこう言います。

「知識が主たる生産手段、すなわち資本となった。いまや知識労働者が、資金の提供者と同じように資本を提供している。」

会社は誰のものかと問われれば多くの人が「株主(お金の出し手)」のものだと答えるはずです。
社会の「ステークホルダー」(利害関係者)全体のものだと言う人もいるでしょう。
しかし後者はやや情緒論になってしまう傾向があります。

ドラッカーは、その会社で仕事をする「知識労働者」が財務資本の出し手と同様に、企業発展のための重要な「資本」の提供者、すなわち所有者の一部であることを論理的に語っています。
財務的な資本が厚くても、社員が知識や知恵を仲間と存分に共有し、磨き合い、製品やサービスにつなげる意識がなければ早晩その会社の経営は行き詰まってしまうということです。

スポーツの世界で考えても分かりやすいです。資本力にものを言わせて大物選手を集めても、そのチームの中でアイディアや技を共有し合う土壌と、その結果としての知識資本が育っていなければチームとしては結果が出ません。
逆に財務資本に頼らず「組織としての知の共有」によって周囲が驚くような結果を出すチームもあります。

知識資本が経営の主役に躍り出た背景は様々ありますが、情報化やグローバル化により個々の人間が過去の何十倍もの多くの情報・知識・知恵を有するようになったことが大きな要因です。
情報技術の発展が結果として、ますます組織における「知識資本」すなわち人間から生み出される知恵、アイディア、卓越したチームワークの必要性を高めているのです。

皆さんの会社や組織では如何でしょうか。社内の「知識資本」の増強にどれくらい有効な手を打てているでしょうか。
社員の行動を統制・管理しようとしすぎる余り、彼/彼女が内面に持っている顧客満足につながるアイディアや知識・技能を活かしきれていないということはないでしょうか。

財務資本が投資や運用によって増殖していくのと同様に、知識資本の増強には「率直なコミュニケーション」の土壌が不可欠です。
互いに信頼し、制約なく意見交換しあえる関係がなければ、どうやっても「知」は循環していきません。

業績管理や業務管理からという作業から一旦目を上げ、メンバーが持っている知識資本を共有し合う場を創ることをお薦めします。

「彼/彼女が持っているこの知識を新商品のアイディアに反映させてみよう」
「このノウハウを新サービスに役立てて新しい顧客層を開拓しよう」

現場を熟知し、顧客の声を聞いている社員の豊かな「知」から、さらに儲かる有望な商売・サービス・製品のアイディアが必ず見えてくるはずです。

次回は6月6日(木)の更新予定です。

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