第17回 「顧客にとっての価値」に社員のベクトルが合う瞬間

「社員やメンバーの『ベクトル』がなかなか合わない」

このような悩みを抱えるマネージャーが多くいます。一般に企業で使われるベクトルという言葉には、「志向性」「方向性」「視点」といった意味があります。
複数のメンバーの志向性や方向性が同じであれば、意思やゴールイメージが同一となり、注がれるエネルギーや力も大きくなります。
結果、組織やチームの行動・活動が分散されることなく、組織として生み出す成果も大きくなる、という考え方です。

では、会社のベクトルが向かうべき先とは端的に言うと何でしょうか。
マネージャーにこのように問うてみると、実は「ベクトルが合っていない」ことが悩みというよりも、「ベクトルの向かう方向自体が自分でも定義しきれていない」ことが悩みの根っこである場合が多いです。

企業としては、どこに社員の「志向性」が向かうことが最も健全でしょうか。
長期的な収益の向上、社員の幸福や成長、社会的な問題の解決・・いろいろあるでしょう。
しかし、それらを実現するためにも、「顧客が喜び、満足し、笑顔になってくれるような価値」に社員の視点が合うことが最も生産的ではないでしょうか。

ドラッカーも再三強調してきたように、
「顧客はどのような(ニーズを持っている)人で」
「その顧客が何を価値と感じ、何を購入するのか」
これらの問いの答えに社員が焦点をあわせ、貢献するようになることが企業にとって最も生産的・創造的な状態です。
結局は顧客が価値を感じ、対価を払ってくれることで企業も経済も社会も健全に発展していくからです。

その顧客にとっての価値を探る際に、以下の問いから考えると良いアイディアが生まれると思います。

「自社の製品やサービスを利用した顧客が、どのような言葉を発して欲しいか」
「その製品やサービスをまわりの人にどのように伝え広めて欲しいか」

価値を「概念的に」考えてもなかなかリアリティがわきません。
実際にそのお店、その製品を利用したお客さんが、笑顔で、どのような具体的な「言葉」を発して欲しいか。これを探ることで本質的に自社が提供したいと強く願っている価値が社内で見えやすくなります。

飲食店であれば、「この値段でこれだけ美味しいものが食べられる店って他にないよね」なのか、「これだけ落ち着ける店って他にないよね」なのか。
あるいはそれ以外にもいろいろな「言葉」がありえるでしょう。

アパレルメーカーであれば、「とにかく軽くて着やすい。機能性で言ったらこのブランドがダントツ」という言葉でしょうか。
「シンプルだけと洗練されたデザインがすごく気に入っている」という言葉でしょうか。

あるいは、業務用機器のメーカーであれば、「処理速度が抜群に速いし、機能がシンプルで使いやすい」といったことでしょうか。
あるいは、「カスタマーサービスの対応がずば抜けてよい」ということでしょうか。

家族客を対象とした宿泊施設であれば?
交通機関であれば?
学校であれば?・・例は無数にあります。

「顧客にどのような満足の言葉を発して欲しいか?」のイメージには、社員が提供したい自分たちの強みや自信がある技術、また顧客が潜在的に持っているニーズが現れてきます。概念で整理するよりも言葉の方がリアリティと具体性があります。

私自身、ソフトウェア開発のベンチャー企業でマーケティングや事業開発を手がけた際、そのことを実感する経験をしました。
自社の商品をPRする、無数にあるソフトウェアの機能候補を絞り込む、という場合に、なかなかメンバー同士でイメージが合わない。
そんな中、「ユーザー(利用者)の方が、このシステムを操作しているときに、具体的に何と言って欲しいかな?」というテーマに議題を切り替えてみると、議論の質が一気に上がりました。

「画面デザインを見て、こう言って欲しい」
「この操作性と使い勝手について、こう言って欲しい」
「他システムとの連携性のこの点につき、こう言って欲しい」
などなど。どのメンバーも、具体的にユーザーの視点に立って言葉を考えるので具体性があります。

顧客の価値に社員のベクトルが合う、とはまさにこのような対話をしているときだと感じました。
そして、その中で共有されたベクトルの先に向かって、個々の社員が持ち場持ち場で、その実現に向けて仕事をする。
そうすることで、結果として顧客にとって価値の高い創造物が生まれます。

是非皆さんの職場でも試していただきたいです。そのサービス、その製品を使い終わったお客さんに、お店を後にするお客さんに、笑顔で一言どうつぶやいて欲しいか。
笑顔でどう感想を述べて欲しいか。そういった対話の中から、確実にベクトルが揃ってくる瞬間を感じられると思います。

次回は5月9日(木)の更新予定です。

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