第8回 人の強みを活かすことで、なぜ組織は活性化するのか

「人の強みを活かそう」

よく言われる話です。

しかし、実行に移せている組織は少ないように思います。
企業でディスカッションをすると、「強みよりも、弱みを補強すること、未熟な点を矯正することばかり考えている」というコメントが多く出されます。

部下や後輩だけでなく自分自身の強みについてもほぼ全く目が向けられていません。

「自分の強み?入社以来、考えたことがない」

という方も多いです。

弱みを徹底的に補強するというのは、経済が右肩上がりの時代や、あるいは軍隊のように、目指すべき目標や水準があらかじめ決まっている状況では有効です。

また、業種によっては、危険を避ける為に徹底的に問題をつぶしていくことが第一義というケースもあるでしょう。
目的、目標、期待水準がある程度分かっている場合、弱みや問題点を徹底的につぶせば、ゴールに到達する可能性が高まるからです。

しかし、現代の事業環境のように、変化が激しく、多様性に富んだ時代はどうでしょうか。
むしろ、人の「強み」が、独創的な発想や、商品・サービスにつながります。
どのようなイノベーションも、個々のメンバーが持つ感性や専門知識、経験といった「強み」から始まるものです。

「Build on your strength(強みの上に築け)」

これが、ドラッカーのマネジメント理論の大前提です。
その理論が、管理・統制よりも、「人間の強みを最大限に生かした創造的な活動」を目指したものであるからです。

私は、人の強みを活かすことで、組織が活性化する理由が大きく2つあると考えています。

まず一つ目は、社員やメンバーの「貢献意欲」「仕事で目指す水準」が高まるということ。ドラッカーは以下の言葉で、その点を強調しています。

「強みに焦点を合わせることは、成果を要求することである。『何ができるか』を最初に問わなければ、真に貢献できるものよりも、はるかに低い水準に甘んじざるをえない。」

たしかに、「君は、こことここが弱いから、この一年で必ず修正するように。」と言われるよりも、「君には他の人にはないこういう強みがある。この点を活かして、この一年、成果をあげてほしい。」と言われた方が、明らかに貢献意欲も仕事へのモチベーションも高まるはずです。
自分が目指す仕事の水準が、一段上がり、「こういう方法もあるな、こういうサービスも求められるんじゃないか」と自発的に発想するようになるでしょう。

自分の仕事や事業への関心と責任意識も高まり、自ずと致命的なミスを犯す頻度も低くなるはずです。
遅刻をしやすい人に、厳罰やルールをいくら積み重ねても、根本的には解決しません。
むしろ、「君のこういう点にものすごく期待している」と言われる方が、自己規律が働くものです。

2つ目は、メンバー同士がお互いに尊敬・尊重し合い、仕事が生産的になるということです。
例えば、Aさんは顧客との商談が極めて得意である一方で、資料を用意したり、契約書類を作ったりすることが苦手だとします。
ところが、Bさんにとってはその得手、不得手が真逆。両者ともそれを認識し、組織/チーム内で補完し合って仕事をできているような場合。
Aさんも、Bさんも「自分が仕事をできるのは、彼(彼女)のおかげだ。自分にできないことをあれだけやれるのは本当にすごい。」と考えるようになります。
互いにそう考えることで、非生産的で内向きな揉め事も少なくなり、生産的に仕事が進むようになります。

この点について、言及しているのが、ドラッカーの以下の言葉です。

「組織とは、強みを成果に結びつけつつ、弱みを中和し無害化するための道具である。」

そして、彼はこうも言っています。

「人は強みによって雇われる。弱みによってではない。」

出来る限りメンバーの強みに着目し、それを起点に仕事や目標を設計することで、働きぶりが劇的に変わることは、私の経験からも確信しています。

変化の激しい事業環境。部下や同僚(あるいは上司)の弱みや問題点の解決に汲々としている方も、少し「強み」の方に目を向けることで、業務や人間関係の問題が大きく解決することがあります。

ぜひ試してみてください。

次回は2012年8月2日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

PROJECT INITIATIVE株式会社 代表取締役

藤田 勝利

1972年生まれ。上智大学卒業後、住友商事、アクセンチュアを経て、クレアモント大学院大学 P.F ドラッカー経営大学院にて経営学修士号取得。ベンチャー企業執行役員として事業開発に従事後、2010年独立。次世代経営リーダー育成や新規事業の分野で幅広く活動中。著書:「ドラッカー・スクールで学んだ本当のマネジメント」(日本実業出版社)
PROJECT INITIATIVE株式会社

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