第162回 企業風土改革の視点から考える「従業員の問題意識」

定年退職することになり、この投稿も大塚商会の社員としては最後になります。ということで、大塚商会の社員として最後の今回は、組織で働くビジネスパーソンとしての私自身の問題意識と、その問題への向き合い方を通じた働くことに向けた考え方をご紹介させていただきます。

企業風土改革の視点から考える「従業員の問題意識」

皆さん、こんにちは。

7月に入ったとはいえ、先月6月半ば以降の猛暑……というか酷暑の兆しには、これからの2カ月余りの夏本番を迎えることを考えると先が思いやられる感じがします。

私事ですが、この7月末に大塚商会を定年退職することになっており、この投稿も大塚商会の社員としては最後になります。今まで160回を超える連載をご愛読いただき、ありがとうございました。心から感謝申し上げます。引き続き仕事は続けていきますので、いったんこの投稿も休憩をいただきますが、程なく別の立場で投稿を続けますので、あらためて、その際にはよろしくお願いいたします。

ということで、大塚商会の社員として最後の今回は、組織で働くビジネスパーソンとしての私自身の問題意識と、その問題への向き合い方を通じた働くことに向けた考え方をご紹介させていただきます。このコラムのテーマのバックグラウンドに触れながら、皆さんそれぞれの会社における従業員の方々との関係性・向き合い方を振り返る機会にしていただければと思います。

組織で働いてきた私が向き合った問題意識

新卒で大塚商会に営業職として入社した私が、管理職を含めて15年程過ごした時期のことです。営業としても、管理職としての実績もそこそこ人並み以上の評価を得て、結婚もし、2人の子供にも恵まれ、周囲からは順調なサラリーマン生活に見えていたのではないかと思います。

ただ、本人の中では、多くの人が感じるであろういろいろな葛藤と向き合っていました。人並みの生活をするための収入を得なければならない。だから、それに見合う成果を上げ続けなければならない。成果を上げ、社内からの評価を得るためには、イヤなことも飲み込んで仕事をしなければならない……。という「しなければならない」ループに陥り、そこから抜け出せないうちに「何のために仕事をしているのか?」「そもそも営業として貢献すべきことは何なのか?」「本当に嫁さんや子供に胸を張れる、誇れる仕事ができているのか?」といった「そもそも論」の答えを見失ってしまいました。

いえ、もう少し正しく表現するのであれば、日々忙しくしていて、業務に追われていたことで「そもそも論」を考える機会さえもなくしてしまっており、その答えなど自覚的になれるはずもありませんでした。

そんな私ですら、確かに時間も掛かりましたし、紆余(うよ)曲折、七転八倒もしましたが、自分なりに自分の人生におけるミッション、自分の人生にとって本当に大切にしたいことが何か? という「そもそも論」を自覚的になることができました(ここのプロセスは、この紙面では書ききれませんのでショートカットしてしまっていますが、詳細に知りたい方はぜひお問い合わせください〈笑〉)。

そこからは「サラリーマン」ではなく「ビジネスパーソン」として働いてきた自負があります。お客さんに対して「価値」を提供し、その仕事に対して前向きに、楽しく取り組めるように進化できたと感じています。

そして、その私自身にとってのターニングポイントの時期に、米ギャラップ社が世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査結果として、「日本は『熱意あふれる社員』の割合が世界的にも最も低いレベルである」という事実を知りました。「自己成長に向けた内的変革」を経験した私の使命と認識し、この事実を「自分が取り組む“社会的課題”」と捉え、問題意識として認識してきました。
そして、その解決に向け「微力だが無力ではない」「一隅を照らす」を取り組むモットーとして明確に自覚しながら、私自身の精神的な支えとして取り組んできたように思います。

「捉え方」次第で、「当事者意識」が変わり、見える景色が変わる

前回(第161回)の中で「主観的ウェルビーイング」という概念のご紹介をさせていただきましたが、まさに「主観」ですので、どのように捉えても良いわけです。

第161回 現代社会における「精神的幸福度」を考える

私が経験した「捉え方の転換」の例をご紹介させていただきます。
上述したとおり、ある時期まで、私は成果・評価は人並み以上だったものの、業務に追われ、精神的に疲弊していた状態にありました。

その当時、ある外部の方に相談をした時の話です。
「三宅さんから仕事に対する文句や愚痴をたくさん聞いてきた。組織やチームに対しても似たような話をいつもしている。その全てが、仮に事実だったとしても、それだけでは何も解決しないし、改善されないよね……。ヒョットすると三宅さんは、元々“仕事を好きでいたいし、自分がいる組織やチームを好きでいたい”と思っているのではないですか?」との問いでした。

この最後のフレーズが、私自身の心の奥底に向けた「問い」として迫ってきました。
私は、元々は“仕事を好きでいたいし、自分がいる組織やチームを好きでいたい”と思っているのか……?
そうかもしれない……。と感じると同時に、自分の中で次の「問い」が湧き出してきました。
だとすると、私は仕事を好きになれるように組織やチームを好きでいられるようなことはしてきたのか……?

答えは「ノー」でした……。アカン……と思いました。それはひきょう者がすることだと思いました。だったら、何をしたら自分が「仕事を好きになるように、組織やチームが好きでいられる」ようになるのか……?

「捉え方」が変わった瞬間です。
私の中で、自分の仕事に対して、あるいは自分が属する会社に対して、本当の意味で「当事者意識」が芽生えた瞬間でした。そして、「サラリーマン」が「ビジネスパーソン」に変わった瞬間かもしれません。

「できること」は全てやってみる!

定年での退職を迎えるタイミングとなり、振り返ってみると40数年の会社人生は本当にアッという間でした。
あらゆる業界の、多くの社会の先輩方がおっしゃっているのと同じで、余りにも陳腐な表現になってしまいますが、実感として最初に出てくるのは、この感覚でした。

今、このコラムを読んでくださっている若い方々には、今のタイミングでは、どう考えても実感を伴った認識は難しいのではないかと思っていますが、その時になれば似たような感覚になるのではないかと思います。

先日、とある尊敬している経営者の方が、私たちの仲間の取り組みや対話を経て下記のようにフィードバックを下さいました。

ご自身のありたい姿をしっかり持たれ、また現在とのギャップを認識されつつ、そのギャップを埋めるためにもがいておられるご様子と拝見しました。もがき苦しむのも、適切な時期や時間があり皆さんベストなタイミングのようにお見受けしました。タイミングを後回しになどにしてしまうと“もがく”が“後悔”になってしまって苦しみしか残らないですからね。

そう、結局、誰かが教えてくれた答えや、指示の下の行動ではなく、やっぱり自分で苦しみ、自分で答えをつかみ取るしかないのではないでしょうか……

自分の「ありたい姿/理想」を自覚的になったうえで、その「ありたい姿/理想」になどたどりつけないかもしれないけれど、それでも、そこに向かって、できることは全てやっていく……こんな姿勢こそが、自分が自分らしく、ビジネスパーソンとして生きていくことなのではないかと考えています。

皆さんの従業員の方々は、それぞれの「ありたい姿/理想」を自覚的になっているでしょうか……

サッカー・元日本代表監督の岡田武史氏が下記のように言っておられます。

強い、優れたリーダーのいない国・組織がダメなのではなく、強い、優れたリーダーを求める国民・メンバーばかりの国・組織がダメなのだ。結局、誰かに頼っている人ばかりで主体性・当事者性のない人ばかりってことだろ……

このコラム全体のテーマ、タイトルは「社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える」ということで書かせていただいてきましたが、最初の一歩は、ここからかもしれません。

いったん、大塚商会の社員としては、区切りの回とさせていただきます。
長きにわたり、ありがとうございました。心から感謝申し上げます。1社でも多くの企業が「従業員が働く意欲にあふれた組織」になるように取り組みを継続していただけることを願っています。

また、近いうちに再会させていただければと思います。その際にはよろしくお願いいたします。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピューター営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績につながる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

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