第39回 「プロフェッショナルな経営者」としての視点

皆さん、こんにちは!
気温の寒暖差が大きな日が続いていますが、お変わりありませんでしょうか。

今月は、今ご一緒させていただいているお客さんの例を挙げながら「経営者の振る舞いと権限移譲」に関して考えてみたいと思います。

■ある経営者からのご相談
今、ある経営者の方と定期的にお会いして、その方の「経営者としてのリーダーシップ変革」のご支援をさせていただいています。

その方は、創業経営者として既に35年を過ごしてこられ60歳を超えておられます。業種は建設関係で、いわゆる叩き上げの職人上がりの方です。典型的なボスマネジメントで「俺の言った通りにしろ」のスタイルで経営してこられたようです。

今までの業績としては、紆余曲折はあったものの比較的順調に推移してきておられます。
ご自身としては、自分の技術や今までの取組にも自信を持たれていました。ただ、ここ最近は、社員のモラルが低い、決めたことが守られない、お客様からのクレームも増えている、挙句の果てに利益も出づらくなっている・・・となり、困り果ててご相談をいただいた次第です。

その経営者の方と初めてゆっくりお話を伺った際に、出てきたキーワードは「私の言った通りにやってくれれば、それなりに利益は出るはずでなんです。それなのに、指示を聞かないので、しっかりとした就業規則や評価制度を作ることで、解決したいと思っています」というものでした。

私としては「???」という状態でしたが、色々お話を伺うと、どうやら従業員の人数が増えてきていることもあり「個人経営→組織経営への転換」を目指しているということが分かり、「組織経営にしていきたいが、個人事業主の延長線上で経営してきた自分は何をどうしたら良いのか、どう変えたら良いのか?が分からない」ということでした。

■経営者の価値観・人間観
私は、この方の生い立ちから振返っていただき、ご自身の「価値観・人間観」がどのようなものであるかをご自身で認識いただくことから始めました。

詳しくは割愛させていただきますが、この方の根っこには「人は平等で、お互いに大切にしあうべきだ」という考え方がありましたが、ここまでの経営を司ってくる中で「理想はそうだが、実態は“人って信用しちゃいけないんだな・・・”」と思わざるを得ない経験をお持ちでした。

これが、この方のご本人も気づいていないような心理的な阻害要因となっており、今までは「自分の物差しで他人を測る」という行動として表れ、社員からすると「社長の言う通りやらないと怒られる」から「自分では考えない」という結果を導いてしまっているようでした。

また、職人さんには「成長してもらわないと会社が成長しない」との想いもあり「ああしろ、こうしろ」「ああすれば、こうなるだろ。だからああしろ」的な手取り足取りの指示・指導をしてこられ、結局「言われたことをやるだけ」の結果も導くことになっていました。

■従業員に対する不満は、自らが導いている
そして、この社長は「ウチの社員は、自分で考えない・判断しない、一向に成長しない」と仰っていたわけです。

お分かりの通り、実は、この経営者の方の従業員に対する不満や愚痴は、結局自分が「そうなるように接してきた」結果に過ぎないと言う事です。

個人事業主・個人経営のままで良いのならば「従来通り、自分の言う通りにしろ」でも良いのかも知れません。でも、従業員が増え「組織経営」に転換するのであれば、この厳しい現実に向き合い、受入れ、ご自身の行動を変えていくしかありません。

そのことを、この経営者の方は「性格は変えられないと思う」という表現をしておられました。勿論、性格は簡単には変えられません。ですので、部下の言動を見て、反射的に何らかの感情や思いが湧き出てくることは止められません。

ただ、ここからはトレーニングです。反射的に感じることにそのまま反応するのではなく、一呼吸おいて「なぜそう考えるのか?なぜこんな行動をとるのか?」とご自身のコントロール可能な「思考」にスイッチを切り替えることが出来るかどうかです。

これは「セルフマネジメント・セルフコントロール」とも言えるかも知れません。

■組織経営を可能にするのは「プロフェッショナル」としての経営者意識
つまり、「“組織経営”の出来る方」というのは「組織を構成している人たちの気持ちや意識に想いの馳せられる人」であり、それがご本人の信条とは異なっていたとしても、組織の目指す姿の追求のために「プロフェッショナル経営者」として、ご自身を「セルフマネジメント・セルフコントロール」出来なければならないことになります。

同時に、その切り替えにおける視点としては「彼を成長させるのなら、どうすれば良いか?」というキーワードのように思います。

「業績を上げるには? この案件の利益を上げるには?」の視点であれば、ひょっとすると経験豊富な方の指示・指導通りした方が短期的な効果を上げるかも知れません。

「従業員がイキイキ働く企業風土」を作っていきたいのであれば、その短期的な視点から一度離れて、「彼が成長するのなら・・・」の視点で考えた際に、その経営者の方の言動は変わっていくのではないでしょうか・・・。経営者ご自身の思考変革・行動変革が、組織変革のスタートになるケースは多いように思います。

もちろん、経営者としては全て「良かれ」と思ってやっていることだとは思いますが、結果的に「間違った方向」に社員を導いてしまうケースは少なくありません。

一度、「なぜウチの社員は、こういうことを言うのだろうか?」ということをご自身との関係性の中で振返ってみてはいかがでしょうか?

今後も、よろしくお願いいたします。

次回は3月18日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社大塚商会 トータルソリューショングループ TSM支援課

三宅 恒基

1984年大塚商会入社。コンピュータ営業・マーケティング部門を経て、ナレッジマネジメント・B2Bなどビジネス開発を担当、2003年から経営品質向上活動に関わる。現在は、業績に繋がる顧客満足(CS)を志向した「価値提供経営」と共に、組織風土・人材開発・自律性育成テーマでの企業支援、セミナー・研修講師などに携わる。

社員がイキイキ働く企業風土・自律的従業員育成のあり方を考える バックナンバー

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