第105回 医療における「AI」について

投資先の決定にAIが活用され始めるなど、「AI」が我々の生活の中に入り始めているのを最近特に感じます。今回は医療における「AI」の役割や活用される分野について解説します。

医療における「AI」について

投資先の決定にAIが活用され始めるなど、「AI」が我々の生活の中に入り始めているのを最近特に感じます。そもそも「AI(人工知能)」とは、ウィキペディアによると

人工知能(じんこうちのう、英: artificial intelligence、AI〈エーアイ〉)とは、「『計算(computation)』という概念と 『コンピュータ(computer)』という道具を用いて『知能』を研究する計算機科学(computer science)の一分野」を指す語。「言語の理解や推論、問題解決などの知的行動を人間に代わってコンピューターに行わせる技術」、または、「計算機(コンピュータ)による知的な情報処理システムの設計や実現に関する研究分野」ともされる。

つまり、人間では覚えきれないほどの学術論文や今までの事例、その結果を学習(ディープラーニング)させ、同様の事象(必ずしも同様の事象に限るわけではないが)について予測などを短時間で行う技術のことです。SF映画のように人間に変わって何かをするわけではありません。

医療においてのAI活用分野

現在、医療においてのAIで特筆すべき分野は画像診断分野です。この分野は既に人間を上回っているといわれています。画像の中にある変異した部分などの色の濃淡や形状、部位など瞬時に判断できるのがAIです。画像による診断は経験が非常に重要です。経験が浅い医師には「見落とし」の可能性がありますが、AIによる画像診断では見落としはほとんどありません。

また、近年はオーダーメイド医療、個別医療などの分野で「プレシジョン・メディシン」と呼称される「個人レベルの治療法の模索」が急速に発展してきています。人間には個性や人種があるように、一人一人が持つ特性や構成要素は異なっています。従って、抗がん剤などの効果も一律ではないという考えに基づいて、その人間個人の特性に合わせた医療内容を提供するものが、「プレシジョン・メディシン」です。治療法の多くは遺伝子レベルの治療となります。最初に遺伝子検査で個人特性を遺伝子レベルでチェックして、その結果を基に治療法の選択に移行します。

「プレシジョン・メディシン」の代表的な対象疾患は、「がん」です。がんの治療に使用される抗がん剤は、日本国内未承認薬を含めると100種類を超えます。抗がん剤の心配な点に副作用がありますので、その副作用についても考慮に入れます。抗がん剤の一般的な使用方法として、効果が期待できる複数の抗がん剤を併用して投与する方法(多剤併用療法)です。同じがんでも同じ抗がん剤が万人に同じように効果を上げるとは限りません。実際に効果が上がったとしても、どの抗がん剤の効果なのか、副作用が出現したとしても、その原因となる抗がん剤はどの抗がん剤なのかも人によって異なります。しかし、がん遺伝子を検査し、遺伝子レベルで効果を発揮する治療薬(抗がん剤)を選択することができれば、「効果が最も高く、副作用が最も少ない抗がん剤」を選択することが可能になります。当然ですが、費用も最も低くて済む可能性が高いです。現在では「がん遺伝子パネル検査(注)」という検査を実施して、抗がん剤の選択も可能になりました。

  • (注)がん遺伝子パネル検査
    がん遺伝子パネル検査は、がんに関連する遺伝子の変化を複数同時に測定する検査で、主に治療と関連するがん遺伝子の変化を効率的に解析することが可能です。がん遺伝子パネル検査の最も有効な使い方は、標準治療がない、または終了した患者さんを対象に何らか次の薬物療法を探索するために調べる検査(がんゲノムプロファイリング検査)ですが、既に保険適用となっている薬物療法(抗がん剤)の投与を検討する検査(コンパニオン検査)としても実施可能ながん遺伝子パネル検査が存在します。
    出典:国立がん研究中央病院

日本における医療分野でのAI活用(保健医療分野におけるAI活用推進懇談会から)

1.ゲノム医療

欧米に比べて日本は取り組みが遅れてはいるものの、実用化まで最も近いのは「がん」になります。そのゲノム医療の実現に向けた推進体制を構築するとしています。遺伝子情報は膨大にあり、その解析は困難です。AIは膨大なデータから、細胞の持つ遺伝子の特徴と疾患の関わりを分析していきます。

2.画像診断支援

診断系医療機器について、日本は高い開発能力を有しています。病理・放射線・内視鏡などについて、国内には質の高いデータが大量に存在していますが、効率的な収集体制の確立が必要であるとしています。AIでは、ディープラーニングを用いて、患部の画像をAIに分析させ、膨大な数の画像データを人間よりも早く正確に診断ができるようになります。

3.診断・治療支援

最初に医師法や医薬品医療機器法などの法整備をし、AIの開発を行いやすくする環境づくりから始めるとしています。検査データや症状のデータから疑わしい疾患名や推奨する治療方法などをAIに提案させ、医師の診断の迅速化や正診率の向上が期待できます。

4.医薬品開発

日本は医薬品創出能力を持つ数少ない国の一つではありますが、健康医療分野をはじめ、他分野でもAI人材は不足しています。従って、製薬企業とIT企業のマッチングを国があっせんすることが効率的ではないかとしています。医薬品の開発は化合物の組成と薬効をAIに学習させ、新薬の開発に取り組みます。新薬の開発には莫大(ばくだい)な開発費用が掛かりますが、AIの活用によって開発費用が抑えられ、その結果、新薬の価格上昇も抑えられます。

5.介護・認知症支援

高齢者の自立支援や介護者の負担軽減を目的にAI導入を検討していますが、現場のニーズに基づくことが最も肝要なため、まずは現場のニーズを明確化することから開始するとしています。要介護者の状況把握や介護計画の立案などにAIを活用します。その結果、介護の負担を軽減することが可能になると考えられます。

6.手術支援

諸外国に比べ、手術データの統合などでは日本が先行しています。しかし、手術時のデジタル化したデータ(心拍数、脳波、術野画像など)は相互に連結されていない状態で、手術行為と各種データがリンクせず、AIによる学習が困難であるという問題も指摘されています。今後は、関連データの相互連結など、インターフェイスの標準化が課題としています。具体的には手術ロボットとの連携のほか、安全で効果的な手術を行うためにAIが支援するということやVR技術の活用など考えられています。

医療分野で期待されるAIの未来

現在、新型コロナ禍で、遠隔医療、オンライン診療の取り組みが徐々に広がり始めています。このような画像情報や問診情報など限られた情報しかない遠隔医療、オンライン診療においての診断は、AIの最も得意とする分野です。医師という人的資源にも限りがありますので、AIの活用によって、診断という部分をAIが担うこと(もちろんAIの下した診断を最終診断とするかどうかは医師の判断によります)によって、医師の「治療という業務」に集中する時間を確保することは大きな導入のメリットと考えます。

皆さんは、どう思いますか?

次回は10月14日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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