第104回 医療機関の設備投資について

医療機関に限らず、設備投資は重要な戦略の一つです。設備投資はタイミングや投資金額などの判断を見誤ると経営の土台を一気に崩しかねません。今回は、設備投資の目的の重要性と留意点を中心に解説します。

医療機関の設備投資について

医療機関に限ることではありませんが、設備投資は重要な戦略の一つです。さらに設備投資はタイミングや投資金額などの判断を見誤ると経営の土台を一気に崩しかねません。実際、近年の医療機関の倒産理由を見ると、患者の減少に続いて、多額の設備投資が理由で倒産している医療機関が多いことが分かります。また、医療福祉機構や金融機関から借り入れを行う一番の理由は建物や医療機器の購入など設備投資に関することです。

そこで今回は、医療機関の設備投資について解説したいと思います。

設備投資は戦略的に計画する必要があります。中には緊急対処的に行わなければならない設備投資もあるでしょうが、特に高額医療機器の導入、建物の増改築は投資額も高額になり、いったん購入したり、出来上がったりしてしまったら、長期にわたって使用しなければなりません。そのため、特に慎重に計画的に実施することが求められます。

では戦略的に計画するとはどういうことでしょうか。それは「投資対効果」を考えるということと、設備投資の目的を明確にしておくということです。多くの場合、設備投資を行う目的の一つとして、「収益を増やす」ことが挙げられます。具体的には、透析室を拡張してより多くの透析患者を収容できるようにすることや、スペックの高いCTやMRIに変更することで、より高い診療報酬点数を算定可能にするといったことなどです。この診療報酬点数という対価が設定されている設備投資については投資額に対し、回収額の計画が立てやすく設備投資の可否の意思決定も比較的行いやすいものになります。

投資費用と診療報酬の関係

 診療報酬の対価あり診療報酬の対価なし
多額の設備投資額CTやMRIなどの高額医療機器など建物の増改築など
少額の設備投資額少額の医療機器など内装の改築や修繕など

設備投資の減価償却について

設備投資額が高額の場合、償却期間は比較的長期になります。この「減価償却」については、経営者の方でもきちんと理解されていない方がいらっしゃいます。減価償却のことを簡単に説明すると、設備投資の対象となる建物や医療機器は使用していくうちに徐々に劣化していきます。時間の経過と共に劣化していく資産を償却資産と定めて、「減価償却」という方法で費用を計上することを会計では認めています。具体的な事例、数字を示して説明すると、例えば収益3,000万円の医療機関が、7,000万円のMRIを購入したとします。このMRIは7年間使用できるとします。

MRI購入1年目は、収益3,000万円に対し、MRIを7,000万円で購入したので、▲4,000万円となり、大幅な赤字となってしまいます。購入したMRIは7年間使用できるのに1年目に購入のしわ寄せが偏るのは少々おかしな話です。そこで、適切な期間損益を計算するという目的で収益と費用に対応するのが「減価償却」という考え方です。前述の例ですと、MRIは7年間使用するので、MRIの購入費用の7,000万円を7年間で均等割り(1,000万円/年)して、配分することになります。すると、MRI購入年は、収益3,000万円に対し減価償却費が1,000万円ですので、利益は2,000万円となります。言い換えれば、減価償却費とは、「お金が出ていかない費用」ということです。

設備投資のその他の目的

設備投資の目的は収益の向上以外にもあります(ただし、最終的には患者が増えて収益が向上することにつながることが多い)。

持続的な安定感がある医療提供のため

多くの医療機関は年中無休の24時間営業です。医療機器や医療システムはいつでも使用できるようになっていなくてはなりません。このような体制を準備していなければ、生命の危険にもつながりかねません。適切なメンテナンスを実施し、必要に応じて古い機器は新しい機器と入れ替えることも重要です。新しい機器への入れ替えの判断は、機器の「不具合発生の頻度と不具合の内容の深刻度」によって判断します。

医療サービスのレベル向上/医療の質の向上

サービスレベルの向上もさまざまです。診療などの質の向上、患者の待ち時間短縮、アメニティーの向上、接遇の向上などがあります。設備、機器を購入する際に、誰に対するサービスの向上なのかを明確にして、投資額に対し、得られるサービスの度合いを予測し、投資の可否の判断を行います。

設備・機器などの投資の可否を判断する方法に、「投資回収期間法」があります。これは、投資額を回収する期間の長さによって投資の可否を判断する方法です。投資回収期間が短いほうが、投資対効果が優れていると判断します。

投資回収期間=投資額÷期間効果(期間あたりに得られるキャッシュ)

診療能力(量)の向上

ここでいう診療能力とは、「質」ではなく「量」の処理能力の向上を指します。患者数がたとえ拡大したとしても、患者への対応能力やスペースに問題があったら対処できません。検査機器や治療機器が該当することが多く、「検査機器の処理能力を向上させる」という事例で解説します。検査機器の耐用年数が7年だとします。前述した投資回収期間法の計算式で投資の回避を判断するのであれば、回収期間は少なくとも7年を下回っていることが必要となります。

検査機器の投資回収期間(注)=投資額÷(向上できる検査収益-保守費用)

  • (注) 回収期間:7年であれば投資可能と判断

注意点は、向上できる検査収益の算出です。仮に10%処理能力が向上する検査機器を購入すれば、単純に10%収益も向上するかというとそうではありません。多くの検査機器の場合、検査機器の操作は技師(人)によって行います。人と検査機器(設備)を組み合わせた時間短縮率によって検査収益の拡大率が決まります。

設備投資の3つの留意点

1.将来を見据えた投資かどうか

医療機器などは、すぐに新しい機能が追加されたり、新しい技術が開発されたりする世界です。しかし、多くの医療機器はいったん購入したら、5~10年間は使い続けなければなりません。これだけの年数がたてば、購入当時に最新モデルの機器でも時代遅れの機器となってしまいます。そこで、少しでも陳腐化しないように将来の環境変化を考慮した医療機器を選定、購入することが重要です。環境の変化に対応し、かつ適切な投資を行うためには、できる限り投資回収期間を短くしておくことが大切です。回収期間が短ければ、短いサイクルで投資を行うことが可能です。投資期間が終わっていないのに、新しい機器を購入するといったことが起きないようにくれぐれもご注意ください。

2.計画的な投資かどうか

前述したように医療機器やシステムは動いて当たり前ということが求められますが、全ての医療機器やシステムにも寿命があります。いつかは新しい機器などに入れ替えなければなりません。全ての医療機器やシステムなどを洗い出し、その優先順位を含めた更新計画を策定し、購入資金(場合によっては積立金など)を計画的に準備しておくことが重要です。

3.客観的な投資判断をしたかどうか

多くの医療機関で、主張の強い人や収益額が高い診療科などからの要求が通りがちではありませんか。このような偏った投資判断を重ねていくと、投資に見当たった効果を得るどころではなく、職員の多くから疑念の目で見られることさえあります。院内の力関係に左右されずに、回収期間法など客観的な判断基準を使用して購入の判断をしてください。場合によっては判断基準をオープンにすることも良いと考えます。

今回は設備投資の目的の重要性と留意点を中心に解説し、設備投資の判断基準として回収期間法をご紹介しました。設備投資の判断は非常に難しいので、今回のレポートが少しでもお役に立てば幸いです。

皆さんは、どう思いますか?

次回は9月9日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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