第103回 ペルソナの活用(健診センターでの利用を例として)

本来は新しい製品の開発や商品の規格変更等の際に多く使われるペルソナですが、医療の中でもペルソナを作成し、ペルソナを通じて独りよがりでない顧客サービスを考える良い機会にもなります。

ペルソナの活用(健診センターでの利用を例として)

「ペルソナ」とは、マーケティングの手法の一つで、商品や製品、サービスを利用する典型的な顧客イメージのことです。イメージ像といっても、性別や年齢、家族構成、趣味嗜好、ライフスタイル、生い立ち、休日の過ごし方、価値観、など非常に具体的に設定します。このリアルな顧客イメージ像が、ペルソナの特徴の一つでもあります。具体的な顧客像を想定して、一層の顧客サービスの向上を図る手法の一つがペルソナです。

医療もサービス業ですが、顧客志向かといえば、まだまだその考え方は不十分な病院が多く、顧客志向で考えることに不慣れなことも多いようです。そこで、ペルソナによって、リアルな患者像や利用者像などを想定すれば、具体的な顧客志向のアイデアが生まれてきます。また、特に費用などコストがかからない点も良い点です。今回は、顧客志向を目指すためにペルソナを医療業界に利用したら、どうなるかを取り上げます。具体的には健診センターでの活用を想定して適時事例を紹介します。

ペルソナ・ライフサイクル

準備と計画
  • プロジェクトチーム結成
  • 顧客の調査、データ確認等
受胎と妊娠
  • ペルソナの数を決定
  • ペルソナの特性と要素の決定等
誕生と成長
  • ペルソナの紹介
  • ペルソナの活用等
成人
  • ペルソナの活用フォロー
  • ペルソナのコントロール
功績、再使用、引退
  • ペルソナの効果査定
  • ペルソナの再使用や再構築等の検討
  • * 出典:ペルソナ戦略(ジョンS.プルーイット/タマラ・アドリン)ダイアモンド社 p.13~19

健診センターでのペルソナ活用例~ペルソナの完成まで~

準備と計画編

ペルソナの最初のアプローチになりますが、最も重要な作業は「調査」「データ収集」です。ペルソナを構成するいわば骨格から性格、人格までが、この段階で作り上げられるわけです。しかし、まったく想像の姿を作り上げるわけではありません。あくまでも実際のデータに基づいて構築していきます。事前に調査項目を決めておくとスムーズに作業が進みます。

健診センターではさまざまな利用者のデータがありますので、そのデータを収集、活用することから始めます。

受胎と妊娠編

このフェーズは、収集、分析したデータを基にペルソナをいよいよ作成します。何体のペルソナを作成するのかといった問題にも突き当たる可能性もあります。このような問題をクリアにするためにもこのフェーズ内のステップを紹介します。

STEP1

顧客のカテゴリーを決める(複数のカテゴリーになる場合もある)

【例】カテゴリー:健診センター利用者

STEP2
データの処理(新たなデータの収集も必要に応じて実施し、既存のデータとの統合も行う)
STEP3

STEP1で決めたカテゴリーの検証(場合によっては、もう少し具体的な姿に落とし込む)

【例】健診センターにおいて考えられる詳細なカテゴリー

毎年受診してくれる利用者/初めての利用者/他施設利用者 などが考えられる
このケースだと3体のペルソナが必要と考えられる

STEP4

STEP3で作成した詳細な複数のカテゴリーに強弱、優先順位をつける

【例】ペルソナを活用する目的が、「健診センターの利用者数を増やしたい」とする

優先順位1位:初めての利用者

実際に施設を利用していただき、リピート顧客(固定客)になる可能性が高い。リピート客を増やすことが健診センターの利用者数を増やすためには最も重要な戦略です。

優先順位2位:他施設利用者

利用施設を切り替えていただくには、相当強力なきっかけや理由が必要になります。ペルソナを駆使したとしても、「労多くして益少なし」にもなりかねません。しかし、この部分にチャレンジしなければ健診利用者は増えませんので、挑戦し続けなければなりません。

優先順位3位:毎年受診者

優先順位3位だからといって後回しにしていいわけではありません。別の視点から考えれば、最も大事にしなければいけない顧客ともいえます。今回の目的が、健診利用者数を増やすということでしたので、優先順位3位としました。

STEP5
STEP4までの作業で得られた情報を基にペルソナを作成してみる
STEP6
作成したペルソナが正当性を持っているのかを検証

誕生と成長編

実際に完成したペルソナの多くは、物語的に語られます。

【例】当健診センターを初めて利用した田中一郎さん

「田中一郎さんは、現在46歳。子供のころはガキ大将で親分肌。高校を卒業後、地元の建築関係の会社に就職した。この会社は叔父が経営者で、コネ入社となる。最初のうちは社長の親戚ということで、仕事場でもつらく当たられることもあったが、性格が明るいことと、素直な性格だったので、次第にみんなから良くされるようになっていった。後輩も何人かでき、元来面倒見は良かったので、後輩からも慕われる。昔から趣味といえるものはあまりなかったが、最近はサイクリングにハマっていて、昨年ロードタイプの自転車を購入。休日のたびに楽しんでいる。家族は奥さん(44歳)と子供は3人。長男(小学校3年生)、次男(小学校1年生)と続いて3人目は待望の女の子(4歳)。奥さんは高校の時の後輩。」

ペルソナ:田中一郎「体が資本の職業。働き盛り。普段から運動(サイクリング)している。体力には多少自信がある。責任感が強くポジティブな性格」

この田中一郎というペルソナを使って、他施設から自施設へ健診先を変更してもらうにはどうしたら良いのか? とか、田中一郎が初めて自施設で健診を受診したが、来年も受診してもらうためには何をすれば良いのか? などの具体的な対応策を関係者で話し合っていきます。田中さんは、会社の周りからも信頼されていて、経営者とのつながりもあるようなので、田中さんの紹介でさらに利用者が増える可能性もあると思われます。注意点としては、田中さんが当健診施設を紹介してくださり、その紹介者様の利用後の感想が悪かったら、紹介者の田中さんの面目をつぶしてしまうかもしれません。田中さんが最も嫌がることであり、田中さん自身も離れていきかねません。

具体的にペルソナを想定する意味

このようにペルソナという具体的な人物像を想定すると、何をすれば良いのか(悪いのか)、また好まれる(嫌われる)サービスの内容はどのようなものなのかなど、具体的な対応策のアイデアが出てきやすいのです。ペルソナがなければ、この顧客には良いが、別の顧客にとっては悪いのではないかなどの思考に陥り、中途半端なサービス内容でまったく顧客サービスになっていないことがあります。ペルソナはこのような思考に陥ることを防いでくれる手法です。

本来は新しい製品の開発や商品の規格変更等の際に多く使われるペルソナですが、医療の中でもペルソナを作成し、ペルソナを通じて独りよがりでない顧客サービスを考える良い機会にもなります。

ペルソナは何回も何回も作成していくうちに、立派な? ペルソナが作れるようになりますので、最初は遊び感覚で取り組むことも良いのではないでしょうか。

皆さんは、どう思いますか?

次回は8月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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