第102回 資金の管理手法

前回のコラムで資金についての概要を説明しました。新型コロナウイルス感染症の影響で、医療機関はコロナ患者を受け入れれば受け入れるほど減収となっています。コロナ患者とは関係のない医療機関でも特に外来患者の減少によって収入は落ち込む一方です。国は、医療機関への増収特別対応(特例)を打ち出していますが、多くの医療機関では、少なくとも年内いっぱいは、経営が厳しい状況が続くと思われます。このような状況は医療機関だけに限りませんが、特にこのような厳しい状況下では、「資金」の重要性を強く感じるところがあるのではないでしょうか。

資金の管理手法

資金繰り表

資金流入と資金流出のことは、前回のコラムでも触れました。これらの資金の流出入について最も重要なことは、「可視化」です。お金の流れを目で見える形にしておくことで、新たな気づきや計画性が生まれたりします。可視化のツールは、「資金繰り表」になります。「なんだ資金繰り表か」といった声が聞こえてきそうですが、小難しいツールを作成するよりも、この昔から活用されている資金繰り表のほうが、利活用の価値は高いです。

資金繰り表には、決まった形式はありませんが、資金繰り表は(見本のように)縦軸に(種類別の)お金の出入り、横軸が時系列になっていることが多いようです。

図 資金繰り表例
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資金繰り表に基づく資金管理のPOINT

[POINT 1]計画と実績の乖離(かいり)分析

年間計画に対し実績数値が乖離している場合、その原因を追究しなければなりません。考えられる理由はいくつかあり、計画値作成時と状況が変わってしまった場合や想定外の事情が発生した場合などは、その原因にもよりますが、仕方がない部分があったかもしれません。しかし、「想定外」とはいっても、前提条件や想定している内容が甘かった場合は、注意しなければなりません。計画値と実績値の乖離があった場合、自分を甘く見立てるのではなく、厳しい目で俯瞰(ふかん)して乖離を分析することが必要です。原因が特定できたら、迅速に対応策を実行することも重要です。さらに次回資金繰り表を作成する際の基本資料にもなります。このような経験を積み重ねていくと、計画値と実績値の乖離が徐々に縮小し、非常に実効性の高い、現実的な資金繰り表の作成が可能になります。

[POINT 2]科目を区分しておく

資金繰り表の縦軸の項目(科目)については、経常的な収入や支出なのか、非経常的な収入や支出なのか、勘定科目、収支科目などの種類を事前に区別しておく必要があります。POINT 1で計画値と実績値の乖離分析を行いますが、その際も科目などが予(あらかじ)め区分されていれば、原因を見つけやすいです。原因解明までの時間短縮にも役立ちます。

[POINT 3]資金繰り予定表の作成

資金繰り表の作成の事前準備として、資金繰り予定表を作成します。資金繰り予定表は、発生主義によって計上された資金の状況を盛り込んだ短期的な予定表のことです。この資金繰り予定表と実績数値で乖離が起きる場合、その原因となるのは、保険料収入の処理ミスや医薬品購入の支払処理ミスが多いです。処理ミスの早期発見と資金の過不足の早期発見には、この資金繰り予定表が効果的です。

[POINT 4]情報の入手

資金繰り表の作成を推奨していますが、資金繰り予定表を含めて作成のために情報を入手しなければなりません。院内の人材は、資金繰り表などの作成に時間や労力を費やすのではなく、資金繰り表の結果から問題抽出(発見)、分析、対応策立案、実行にその能力を費やすべきです。そのために資金繰り表に必要な情報は、情報システムなどから自動生成などが可能にしておく必要があります。

資金運用表

資金繰り表に加えて、「資金運用表」も重要なツールです。資金運用表とは、実質の資本の管理を主目的にしたツールです。実質の資本、すなわち正味資本とは、流動資産と流動負債との差額として一般的には認識されています。その差額がプラスだった場合、余力があると解釈されます。逆にマイナスだった場合は、その不足分の金額を調達する必要があるということになります。

作成目的とは

資金運用表の作成目的は、正味運転資本を中心に資金の動向を分析することが主な目的ですが、多くの場合は、2期間の貸借対照表(B/S)の勘定科目ごとに増減をチェックします。その際に資金の調達と運用に分けて表示すると分かりやすいです。資金調達は、流動資産の減少、固定資産の減少、流動負債の増加、固定負債の増加、資本の増加が構成要素です。資金の運用は、流動資産の増加、固定資産の増加、流動負債の減少、固定負債の減少と逆の動向を指します。また、貸借対照表の動向に加え、当期利益、減価償却費、引当金繰り入れ、利益処分、資産評価損、固定資産の購入、除売却、長期債務の追加、返済などの非資金的取引を追加して資金表は完成します。

資金運用表の分析POINT

資金運用表は正味運転資金の管理が目的なので、各医療機関の事情、状況によってその理想形が異なります。すなわち、管理POINTが医療機関ごとに違うということです。自院の資金流出入のロジックをまずは理解して、そのうえで、必要な対策を構築することが重要です。

資金運用表は短期的な収支改善のための活用に利用できますが、さらに構造改善を実施することで、長期的な資金計画改善の作成にも活用されます。

現金管理

小口現金

医療機関にとって、ある程度の現金を手元に置いておく必要があります。ここで押さえておかなければならいことは、支払い側に管理コストが発生しているという事実です。直接的な事務処理のほかに日々の現金の出し入れ、出納上の管理も必要です。規模によっては現金の授受が複数の場所で実施していることも想定できますので、そのコストはさらに増大します。

このようなコストを抑えるためには、現金の授受を極力少なくし、金融機関への振り込みを行うべきです。現金の授受を減らすことは、不正を未然に防止することにもつながります。

経費精算

支払いを金融機関経由で実施し、院内のキャッシュレス化を促進する場合、旅費交通費などスタッフへの支払い処理が問題になることがあります。場合によってはスタッフが経費を立て替えているケースもあります。そのような場合は(法人などの)クレジットカードでの決済や事前にスタッフへ定額仮払金を振り込んでおくなどの方法があります。支払いを決められたクレジットカードで決済するメリットとしては、(マイルなどの)ポイントの集中管理なども考えられます。いずれにしても、不要な現金を手元に置いておいてメリットはないことを認識しましょう。

皆さんは、どう思いますか?

次回は7月8日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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