第101回 資金についての概要

この原稿を書いている現在、東京では緊急事態宣言に基づき、外出自粛が続いています。医療機関では院内感染の危険と隣り合わせで、連日厳しい日が続いています。全ての医療関係者に、この場を借りて感謝申し上げます。しかし、このコロナ禍後の医療機関の経営のことを考えると「倒産」という言葉も思い浮かべてしまうほど非常に心配です。今回のコラムでは、主に「資金」について記したいと思います。

資金についての概要

医療機関の倒産の実情

民間の調査機関によると、2018年の医療機関の倒産件数は、40件で、2010年に40件を超えて以来、8年ぶりに倒産件数が40件を超えました。2019年上半期(1月‐6月)の倒産件数は既に23件と公表されているので、2年連続で40件を超える可能性もあります。

  • * 参考:医療機関の倒産件数推移(グラフは筆者作成)

倒産の原因

倒産の原因は、「来院患者の減少」が過半数を超えています。患者の減少から収益の減少となり、最終的には、資金の流入量を流出量が上回り、資金がショートして倒産という結果に至ります。患者による医療機関の選択など患者意識も高まっているので、今後もより患者が集まる、集まらないの格差が明確に広がる可能性があります。

医療機関は医療保険制度という護送船団方式による確実な資金回収が約束されています。このことは、民間企業の資金繰りへの不安が低いということになりますが、それでも毎年倒産が起きるということは、厳しい経営環境になってきたことと、医療機関自身の経営管理能力に問題があるといわざるを得ません。弊社では、医療機関に「原価計算の導入と活用」を進めていますが、医療機関全体の収支は把握されていても、診療科単位や病棟単位、医師別の収支まで把握されている医療機関は多くありません。損益計算書とキャッシュフロー計算書の違いも理解していない経営者もいらっしゃいます。倒産という最悪の事態が現実のものにならないように、特に資金管理の重要性は非常に高くなってきています。

最初にその対応策として実施していただきたいことは、経営層全員のキャッシュフロー構造の理解、現状の自院のキャッシュフロー構造、将来のキャッシュフローの変化予測についてを把握することです。自院の提供している医療内容(診療科単位や疾患単位など)でキャッシュがどのようにどのくらい流入してきて、その医療内容を提供するにあたり、資金がどのくらい必要なのか(資金の流出)資金の流入を増やすために必要なものは何かなどを常に模索し続けることが必要です。経営層のマネジメントの使命として、例え黒字経営であっても、現状を決してベストと考えないでください。将来の経営リスクに備え、更なる資金流入を考え続けなければなりません。

チェック

医療機関の資金の循環のメカニズム

資金流入

資金の流入は、大きく二つあります。一つは、自己資本や金融機関などからの借入金などの他人資本です。この資本は何かの結果ではなく、真水的な資本になります。そしてもう一つは、医業収益や医業外収益などの資金再流入です。こちらは、真水的な資本を基に医業収益を上げ、必要な経費を差し引いた残りの利益のことです。

資金流出

資金の流出は、設備投資、医薬品や診療材料などの材料費、人件費、借入金返済などです。収益や利益を生み出すために必要な資金ということもいえます。

倒産は前述したとおり、流出資金量が流入資金量を上回り、決済が不能に陥ることで起こります。注意しなければならないことは、資金の流出するタイミングと流入するタイミングは一緒ではないので、たとえ黒字であっても資金繰りが追い付かず倒産してしまうケースもあるということです(黒字倒産)。医業収益は、額面通りの金額が必ず流入するわけではなく、あくまでも流入計画数値です。一方で、資金の流出金額は確定数値であり、必ず資金は額面どおりに流出する性格を持っています。

資金の循環をスムーズに行い、資金の流入額を流出額が下回るようにコントロールすることが経営者のマネジメントですが、流入額は2年に一回の診療報酬改定により下がることが多く、職員の賃金問題、新たな設備投資、来院患者数の増減などコントロールを乱す要因は限りなくあります。医療機関の経営者は、このような厳しい経営環境の中で利益を出す方策を実行し続けなければいけないのです。「無策は資金循環を破綻させる」という言葉もあるほどです。

資金流入の大原則

資金流入の大原則を紹介します。資本には自己資本と他人資本があり、優先するのは「自己資本」です。他人資本を決して使うなということではありませんが、他人資本は、必ず返済しなければならない資本です。他人資本を活用する場合は上手に活用することが肝要です。また外部機関より資金を調達する場合、事業計画などを作成、提出する必要もあります。とかく経営が不安定になると、この大原則が最初に無視されるようになります。

資金流出についてですが、その発生原因は医療機関自らが生み出しています。従って、資金流出は予測可能です。支出には、固定費と変動費の2種類があり、マネジメントが難しいのは固定費です。しかし、削減効果が大きいのも固定費です。固定費の代表的な勘定科目は人件費ですが、単純に給料を下げることはできませんし、仮に給料を下げることができたとしても、モチベーションも下がり、場合によっては離職者も多くなりかねません。一般的には人事評価の導入や見直しが行われ、平等に評価することを前提に職員に納得してもらいながら、全体の人件費を削減するといった取り組みをする医療機関が増えてきています。

一方で、固定費に比べて変動費はマネジメントや対応策を立案しやすいです。変動費の代表的な材料費に関しては、単価と購入量の2方向から対策を考えればいいわけです。医療機関内での在庫数の管理、適正使用料のマネジメントなどと同時に卸会社との価格交渉も同時に行います。ただし、近年はマイナス改定が続き、卸値も底値に近い値段になり、交渉に応じきれない企業も多くなってきました。どちらか一方だけが得をするような交渉は、最終的にはどちらも損をする結果になりますので、知恵を持って交渉することが大事です。

皆さんは、どう思いますか?

次回は資金の管理手法について記したいと思います。

次回は6月10日(水)更新予定です。

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書籍

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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