第36回 病棟の再編

■ 病床の機能分化

日本は超高齢化に突入し、今後さらにその高齢化は進んでいきます。医療資源は限られているので、効率的に活用することを求められています。そのひとつが、一般病床の機能分化です。急性期医療への医療資源の集中を図り、病床の機能分化、機能強化を推進していくことが必要とされています。
一般病床の機能分化については、それぞれの医療機関が担っている医療機能を都道府県に報告する仕組み(病床機能報告)が開始されました。
各医療機関(有床診療所を含む。)は病棟単位*で、以下の医療機能について、「現状」と「今後の方向」を、都道府県に報告します。

*医療資源の効果的かつ効率的な活用を図る観点から医療機関内でも機能分化を推進するため、「報告は病棟単位を基本とする」とされています。(「一般病床の機能分化の推進についての整理」(平成24年6月急性期医療に関する作業グループ)
医療機能の名称及び内容は以下のとおり。
(出典:厚生労働省)

病棟が担う機能を上記の中からいずれか一つ選択して、報告することとするが、実際の病棟には、さまざまな病期の患者が入院していることから、医療機関は、提供している医療の内容が明らかとなるように具体的な報告項目を、都道府県に報告することとします。
医療機能を選択する際の判断基準は、病棟単位の医療の情報が不足している現段階では具体的な数値等を示すことは困難であるため、報告制度導入当初は、医療機関が、上記の各医療機能の定性的な基準を参考に医療機能を選択し、都道府県に報告することになります。

また4月の診療報酬改定で、地域包括ケア病棟という新しい病棟もできました。地域ケア包括ケア病棟は、厚生労働省が削減を狙う7対1病床からの移行先という位置づけでもあります。診療点数は比較的高めの点数設定(利益誘導)となっており、主な施設基準は、以下のとおりです。

■ 地域包括ケア病棟施設基準(主なもののみ抜粋)

  • 疾患別リハビリテーションまたはがん患者リハビリテーションを届け出
  • 届け出は許可病床200床未満の医療機関で1病棟に限る
  • 療養病床については、1病棟に限り届け出可能
  • 看護職員13対1以上、専従の常勤理学療法士、常勤作業療法士または常勤言語聴覚士1人以上、専従の在宅復帰支援担当者1人以上
  • 在宅復帰率70%以上
  • 患者1人当たり居室面積が6.4m2以上

そして、在宅医療は、地域包括ケアシステムの実現により、重度の要介護状態になっても、住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることが可能になります。超高齢化の大きな問題の一つである認知症については、地域で認知症の高齢者の生活を支えることも地域包括ケアシステムの役割になります。

■ 病棟再編

このように病棟(病床)別に機能を報告する制度が始まったこと。さらに新しく「地域包括ケア病棟」という新しい種類の病棟の出現など選択肢が増えたこのタイミングで、是非医療機関の経営者や経営企画部署の方々は、自院の病棟の在り方、自院の病棟再編は必要ないのかを考えて頂きたい。

医療は大変公共性の高い産業です。地域の中での連携が強く求められているにも関わらず、絶えず競争の中にも晒されています。競走上の優位に立つためには、何かオンリーワンになるものを持たなければいけません。そしてそれを持ち続けるためには、大変な努力と投資を継続的に実施しなければならないのです。地域から望まれる病院になるためには、どうすれば良いのか常に考え、今後の医療に望まれていることを率先して実行し患者満足度を向上させ、他医療機関との差別化を図っていく必要があります。
病院の収入は一般に入院7割、外来3割と言われています。一度、病棟再編について考慮、議論しても損はないと思いますが如何ですか。

■ 病棟再編成の目的

  • 地域を支える医療機関として、あるべき病棟体制の実現
  • 患者の病態に合致した病棟機能の実現
    (急性期、亜急性期、慢性期に合わせた病棟編成)
  • 病棟編成に合致した看護体制の確立
  • 収益の最適化、最大化

医療機関の最大の課題は人材確保、人材マネジメントです。特に看護師確保は重要ですので、病棟再編を検討する場合も看護職員を中心に適切な人員再配置を行いながら、地域住民の疾病構造や来院患者の特性に合わせて最適な病棟に再編することで、収益向上を実現すること等を目的にします。

人材の確保については、非金銭的報酬をどのように得てもらうかが重要です。組織に対するコミットメントを高め、組織に対する帰属の継続性をもたらすことになります。地域に誇れる病院。快適な労働環境。ともに高め合える仲間。やりがいを見出してもらう仕組み作りなどがポイントになります。

■ 病棟再編検証プロセス

現状分析から始めます。まずは収益面の検証です。検証項目は、入院日当点、病床利用率が中心です。費用面は人件費、材料費、減価償却費、経費は最低限検証が必要です。同時に外部環境のマーケティングも実施します。現状分析が終わったら、その内容を踏まえて病棟再編プランを計画します。プランは一つではなく、複数案作成しプランの違いによっての収支の変化(変更する病床数を増減させ収支がどう変化するかの検証なども実施)得られる効果は?デメリットは何かなど検証します。プランの作成の際には自院の地域の状況、環境などにも十分な配慮が必要です。オンリーワンになるということは何かに特化することです。特化するためには何かを捨てる覚悟が必要です。捨てると言っても医療の世界ですから、他の医療機関にお願い(連携)することになるのですが、お願いする医療機関が無い環境も考えられるので注意してください。

皆さんは、どう思いますか?

病棟再編イメージ

次回は12月10日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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