第71回 どうなる「地域医療連携推進法人」

2017年4月に新しい法人形態である「地域医療連携推進法人」がスタートしました。注目されていた新しい法人でしたが、4月時点では4法人だけの設立で、少々肩すかしの感は否めません。しかし、今後医療機関が選択できる経営手法の一つであることには間違いありませんので、今回は基本的な内容をおさらいしておきたいと考えています。

どうなる「地域医療連携推進法人」

2017年4月に新しい法人形態である「地域医療連携推進法人」がスタートしました。4月時点では、全国で4法人が設立しました。愛知県の地域医療連携推進法人尾三会、兵庫県の地域医療連携推進法人はりま姫路総合医療センター整備推進機構、広島県の地域医療連携推進法人備北メディカルネットワーク、鹿児島県の地域医療連携推進法人アンマの4法人です。
注目されていた新しい法人でしたが、ふたを開けてみると4法人だけで少々肩すかしの感は否めません。しかし、今後医療機関が選択できる経営手法の一つであることには、間違いありませんので、今回は基本的な内容をおさらいしておきたいと考えています。

地域医療連携推進法人を創設した趣旨

そもそも地域医療連携推進法人を新たに創設した趣旨は何でしょうか。厚生労働省の説明資料によりますと、創設の趣旨は「医療機関相互間の機能の分担及び業務の連携を推進し、地域医療構想を達成するための一つの選択肢として、地域医療連携推進法人の認定制度を創設する。これにより、競争よりも協調を進め、地域において質が高く効率的な医療提供体制を確保する。」とあります。
これまで、厚生労働省が推進してきた地域医療連携を一歩前へ進めた形です。今までの地域医療連携は、それぞれの医療機関がそれぞれの得意分野に特化して強みを活かしながら、弱みは他医療機関にお願いするというような住み分けを促すような政策内容でした。そのような住み分け(機能分化)政策を、1法人内で実現することも可能な法人が、「地域医療連携推進法人」です。

出典:厚生労働省ホームページ 地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設及び医療法人制度の見直しに関する取りまとめについて
参考資料1:地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設について(概要)等 3ページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000073695.html

仕組みは下図のとおりです。

出典:厚生労働省ホームページ 地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設及び医療法人制度の見直しに関する取りまとめについて
参考資料1:地域医療連携推進法人制度(仮称)の創設について(概要)等 2ページ
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000073695.html

法人の承認は都道府県が主管します。参加できる法人は、病院などを開設する法人(医療法人、社会福祉法人、公益法人、NPO法人、学校法人、国立大学法人、独立行政法人、地方独立行政法人、地方自治体、株式会社など)、介護事業者(薬局や生活支援事業なども含む)さらに地域で良質・適切な医療を効率的に提供するために必要な者(開業医や医師会、歯科医師会など)となります。参加する各法人から、地域医療連携推進法人の理事会に役員を選出するのですが、唯一、株式会社からは選出できないことになっています。これは、地域医療連携推進法人が営利目的ではなく、地域医療構想の実現・地域包括ケアシステムの構築などを進めることが目的であるからです。

地域医療連携推進法人で実施可能なこと

この新しい地域医療連携推進法人で何ができるのでしょうか。医療従事者の資質向上のための研修や医薬品・医療機器などの供給、参加法人への資金貸し付け・債務保証・基金の引き受け、医療機関の開設(都道府県知事の確認が必要)が可能になります。医療従事者への研修や医療機関の開設は、他法人でも可能なことですが、「医薬品や医療器などの供給」は、ポイントになるかと思います。言い方を変えると、これは「共同購入」するということになります。複数の法人が一つの地域医療連携推進法人の元に集まるわけですから、さまざまな購入物品の購入量は飛躍的に増えるはずです。購入にあたって、購入量が増えるスケールメリット(共同購入)を使い、単価を下げる。価格交渉も有利になるというわけです。
また、参加した法人間ではどのようなことが可能になるのでしょうか。法人間の人事交流や法人間で病床の融通を行うことが可能になります。医療機関では、さまざまな職種の方たちが働いていますが、人員配置基準によって、職種によっては、決められた人数がいなければならず、例えば看護師の人数によって、医療機関の収入も変わるようなルールもあります。急な大量退職なども可能性としては、「0」ではありませんので、万が一このような事態が発生したとしても、法人間で「人」(職員)の融通を利かせることが可能であるということです。同様に病床についてですが、病床稼働率が低い法人から病床稼働率が高い法人に病床を融通し、より効率よい経営を実施することができます。人や病床の適正配置が地域医療連携推進法人内で実施可能ということです。
地域医療連携推進法人自身や、参加法人間で実施可能なことを見てみるとポイントは、どのようなニーズのある地域で、どのような法人同士で組むのかが重要です。同じような機能を持った法人同士が一緒になっても、あまりメリットはありません。また、同じような疾病分野の患者を囲い込むことも可能です。疾病にはさまざまな状況がありますので、どのような状況に患者が変化しても、地域医療連携推進法人内の参加法人で対応可能な体制を整えれば、患者の囲い込みは可能ということです。やはり、このような視点からも、どのような法人と纏まるかが、ポイントです。

複数の法人を一つに纏める手法としては、M&Aがあります。しかしM&Aは資金が潤沢な法人しか実施できない手法です。M&Aでは比較的、指示系統が一方向であり、スピードも速く伝わります。これに比べ地域医療連携推進法人が何か決定するには、理事会や社員総会、場合によっては、地域医療連携推進協議会の場で議論して決定しなくてはいけません。圧倒的にスピードが遅く、複雑な仕組みです。本年4月に注目された法人だったにも関わらず、4法人だけだったということは、このあたりのことも考慮され、敬遠された結果です。しかし、今回の地域医療連携推進法人は、資金をそれほど多く必要としないで、一つの法人になれる手法でもあります。経営の選択肢が一つ増えたということになります。厚生労働省も現在の複雑な経営決定プロセスを簡略化、変更することも考えられますので、今後、地域医療連携推進法人は増加することも十分考えらえます。しかし実施には、安易に「一緒になって大きくなれば良い」ではなく、将来の事業計画やビジョンなどを戦略的に考え、検討してもらいたいと思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は11月8日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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