第33回 外来患者数・外来収入アップのヒント

今年4月に診療報酬改定が実施されましたが、その改定内容が反映された診療報酬が実際に収入金額として目の前にしてどのような感想を皆さんは持たれましたか?
多くの経営者は、危機感を持たれたのではないでしょうか?病床を持たれている医療機関を経営されている方は、今年10月に病床機能報告があります。
この病床機能報告も、このコラムで取り上げようと思いますが、今回はすぐに取り組める外来患者数や外来収入アップのヒントを記述します。

■ 基本編
職員は患者さんからの質問に対して、きちんと標準化した回答ができるようにしておく必要があります。
受付の人間同士あるいは医師と全く違う説明をしているのであれば、患者さんは混乱し、信頼を失います。
医師をはじめに、受付、コメディカルの方まで、患者さんと接点がある人は患者さんから様々な質問をされる可能性があります。どのような質問に対して、誰が答えようと同様の受け答えをしなければいけません。

同じような質問が意外に多い
同じような質問の答えを待合室にあらかじめ掲示しておけば、受付の人の業務負荷も軽くなり、患者サービスにもつながります。是非、掲示物を作成してみてください。ただし、何でも掲示するのは、見栄えも悪くなり逆効果になりますので、注意しましょう。

ヒント1
誰が答えても同じ回答内容にする。掲示物の工夫で職員の負担も軽減。
患者さんへのインフォームド(説明)が、様々な場面で重要になります。
よくある質問などは待合室に掲示するなどして、受付業務の軽減を図りましょう。
患者さんの不安を取り除くことにもつながり、評判がよくなります。口コミで良い評判が広がり、患者さんが増えることも期待できます。

■ 内科編
内科において、最も疑問が多いのは、各種の指導管理料などを算定した場合です。
これらの指導管理料を算定した場合に、「前回と同じ診療内容なのに高い」「診療はしてもらったが、特に医師から指導を受けていない気がする」といった質問が多く寄せられています。
特に患者さんへ十分な説明と同意が必要になる診療点数もあります。
また検査もルーチンの項目を実施する場合は、あまり会計に変化はありませんが、症状によって多項目を実施したり、特殊検査を実施したりする場合は、患者さんにとっては採血される行為は同じであっても、会計が大きく違ってくることがあります。このような場合には特に説明、納得、同意が必要になります。

患者さんの症状に合わせて検査をしたが、「検査料が高い」と患者さんから言われた場合

対応策例
調剤薬局でお薬をもらっても、一つ一つの薬に対して何の薬か説明文章が付いてきます。
検査も同じように今日検査した項目の簡単な意義を患者さんに渡すことができれば、納得されることが多いようです。
あらかじめ、よく依頼される検査(生化学的検査など)の項目名と簡単な臨床的意義を印刷しておき、依頼検査項目名の横にチェック欄を設けて、当日の依頼項目にチェックして患者さんにお渡しします。(あらかじめ準備しておくことで医師の負担も軽減できます)
さらに検査結果も必ず渡して、説明しましょう。患者さんは検査結果について非常に高い興味を示すものです。
検査結果の説明が丁寧だと、この結果を聞きに来る二度目の受診確率が高くなります。

ヒント2
最近の患者さんは検査についての知識もかなり持っています。
テレビ番組で視聴率を取っている番組をみても医療関連の番組は軒並み高視聴率を取っているようです。
医師がいちいち診療の場面で患者さんに説明するには、時間もなく、非効率です。
また、アレルギー検査などサービス報告書(グラフやイラストで表記されている)を患者さんに渡すことで、会計に対する不満も軽減され、事前のトラブル防止にもなります。患者さんに対する具体的なサービスやアピールにもつながります。

■ 小児科編
小児科では前回までの病名が治癒などによって、同月内に初診料算定が2回以上になるケースが多くあります(小児の特徴として多くの疾病に罹患しやすい)
患者さんの多くは、その医療機関に初めて受診した日が初診であり、それ以降はずっと再診という感覚を持っています。指導料関係では小児科独自のものもあります。また他の内科系の指導料と比較しても比較的高めなので、この点についても注意が必要です。
小児科は、一般的に経営が難しいと言われています。その理由は小児科特有の医薬品などが割高であったり、一人当たりの診療時間が長くなったりなることが多く、多くの人の手を要することが多いのに、診療点数に優位な仕組みが少ないことなどが原因と考えられています。
診療体制や物品購入方法、さらにはレイアウトなどにも工夫が必要になります。
また、夜間、休日の診療体制のこともあります。連携先や協力機関を決めくことも必要になります。

ヒント3
複数回の初診料算定対応例
初診料の算定が月に複数回になる場合、特にインフォームドコンセントが重要になります。
さらに待合室への掲示や明細書への記載など会計をする方への配慮や、ちょっとした一言が不要なトラブルの防止や口コミにつながります。
あるクリニックでは、会計窓口に説明文章を作成し配布して対応されているところがあります。

注意
初診料を算定した疾患がまだ治癒しておらず、継続診療をしている場合、新たな疾患で受診しても、新たに初診料は算定できませんので注意が必要です。
あくまでも、Aという疾患の治療が終了した後の、Bという疾患が初診料算定の対象になります。

■ 産婦人科編
正常妊娠の経過は保険給付の対象外になります。(自費診療)しかし、何らかの異常が発生して保険給付の扱いになった場合に保険給付外との関係が患者さんに理解しにくい点があります。
例えば、超音波検査の保険適用と適応外の基準などです。これは診療録(カルテ)にきちんと区別して記載する必要があります。また、出産育児一時金や出産手当金に関する書類は有料になりますが、第二子以降の出産では、前医との金額比較での問い合わせのケースがあります。

ヒント4
産婦人科の患者さんは、保険の対象になったり、ならなかったり、患者さんが混乱するケースが他の診療科に比べて多いので注意が必要です。
第二子以降の出産時、特に最初の出産と今回の出産と違う医院の場合、最初の出産の時の費用が比較対照として患者さんの頭にありますので、費用が違うのではないか?と問い合わせがある場合があります。
出産育児一時金や出産手当金などの書類の価格一覧表を院内に掲示したり、患者さんにお渡ししたりするなどが、問い合わせ件数を減らすことにつながります。
正常分娩でしたら、自費診療となりますが、異常分娩や合併症を併発した場合、保険診療に途中から切り替わることがあります。この場合にも、本人へのインフォームドコンセントはもちろんですが、他の患者さんへの配慮も必要になります。

会計説明チェックポイント
【1】前回と同じ診療内容なのに、会計金額が違う
【2】思っていた金額と比較して、感覚的に高い
【3】制度やシステムの変更によって会計が高くなった
【4】診断書などの料金が高い

外来収入をアップさせるには、患者数を増やすか患者単価を増やすかの二つの方法しかありません。
そのどちらも患者や患者家族からの信頼がなければ実現しないのです。
今すぐできるところから見直しましょう。

皆さんは、どう思いますか?

次回は9月17日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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