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第146回 財務諸表から見た収支改善 その1
財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)は、多くの方がご存じのことと思います。経営に最も重要な「利益」を増やすためには、売上を伸ばし、費用を圧縮することが必要です。医療機関の利益を増やすために、具体的にどのようなことに注意するべきなのかについて今回は記述します。
財務諸表から見た収支改善 その1
財務諸表(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)は、多くの方がご存じのことと思います。その財務諸表をイメージ図にすると下記のような図になります。
経営に最も重要な「利益」を増やすためには、売上を伸ばし、費用を圧縮することが必要です。医療機関の利益を増やすために、具体的にどのようなことに注意するべきなのかについて今回は記述します。
売上アップは患者数と患者単価をアップさせること
基本は患者数アップと患者単価アップです。それぞれ外来と入院とに分けて考えていきます。まず外来患者数アップについてです。外来患者、救急患者は、入院患者の供給ルートとしての認識が重要です。これは入院患者の方が単価が高いためです。外来患者を増やすためには、間口を広くすることと内容(質)を高めることが求められます。
間口を広くするためには、多くの診療科を標ぼうしていることが大事です。内容(質)を高めるためには、専門性を高めることが必須です。そのためには専門医のリクルート、専門外来の実施などを行います。また、自院のことを広く認知してもらうことも重要ですので、ホームページの見直し、地域住民対象の健康講座などのセミナー開催(病院への敷居を低くするために、「病院祭り」などの病気でない地域住民向けの企画)なども行います。
救急患者を増やすためには、積極的に救急車の受け入れを行う必要があります。救急車からの緊急入院は全国平均で約3割ですので、救急車を受け入れることは外来だけではなく、入院患者を増やすことにもつながります。また、紹介患者を増やすことも同時に行います。そのためには、新しい連携先医療機関の開拓や拡大など、連携室の営業力が試されます。この営業活動は連携室だけに任せるのではなく、院長などが積極的にあいさつ回りなど行うと、その効果がすぐに表れることもあります。
次に入院患者数アップについてです。需要があっても供給体制が整っていなかったら利益の損失になってしまいます。そのようなことにならないように病床再編を検討します。病床稼働率などの数値を可視化して、入院患者が減少しないように注意します。しかし、同時に平均在院日数が長くならないようにしなければなりませんので、常に迅速に退院していただき、速やかに入院患者を受け入れる体制、仕組みを構築しなければなりません。
退院が長引きそうな患者の早期抽出と早期対応は相談員の役割です。早期抽出には病棟看護師からの情報が重要です。速やかに次の入院患者を受け入れるためには、退院する(した)という情報を共有することがポイントです。退院会計の計算待ちやベッドメイク待ちなどが起きないように関係部署が退院の情報を共有します。さらに入院を待っている状態の患者をある程度作っておくことも必要です(入院を待てる医療的な余裕のある患者です)。
入院する患者のルートは大きく三つ
入院する患者のルートは大きく三つあります。一つ目が他院から紹介される入院患者。二つ目が自院の外来から入院する患者。三つ目 が前述しましたが、救急車で搬送される緊急入院患者です。この三つのルートごとに患者増の対応策を考えます。はじめに他院からの入院患者を増やすということですが、これも連携室の役割です。紹介元の医療機関の大事な患者様 を紹介するのですから、相当信頼していないと紹介を躊躇(ちゅうちょ)してしまいます 。そのようなことにならないように、連携室は自院の機能を紹介元の医師に紹介し理解してもらったり、日ごろから紹介元の医師と自院の医師がコミュニケーションを取りやすくすることを(CPCなどを通じて)企画したりします。
患者を紹介してもらうことをアピールしていても、紹介患者が増えないこともあります。そのような時は、はじめにこちらから患者を逆紹介します。「Give&Take」作戦です。患者を全く紹介してくれない医療機関は何らかの理由があることが多いため、その理由を調査します。理由が判明すれば解決策につながることもあります。
自院の外来患者からの入院患者数を増やすためには、自院の外来患者の重症度を意識します。(手術など)入院の可能性がある患者をできるだけ多く見つけることが重要です。そのためには(自院の)健診センターと連携し、健診で異常と診断された患者のフォローアップをしていきます。また前述した「病院祭り」などで簡単な検査を行い、そこで異常値が出れば、その方のフォローもします。患者を見つけるという活動です。
最後に緊急入院患者を増やすためには、まずは救急車の搬入台数という母数を増やすことが一番です。二次救急の場合、患者の搬送先の決定は救急車にあります。救急車の救急隊員から選ばれる医療機関になることが重要です。では救急隊員から選ばれる医療機関とは、どのような医療機関なのでしょうか。それは救急隊が困ったことを解決できる医療機関です。一番困っていることは、「搬入を断られる」ことです。医療機関側にもさまざまな事情、状況がありますので、全ての救急患者を受け入れることは困難だと思いますが、できるだけ受け入れる体制作りをすることが必要です。
例えば、救急救命士の配置、常勤専門医の配置などです。救急隊と定期的に意見交換すると相手側の具体的な希望などを知り得ることがあります。筆者の経験した救急隊との意見交換会では、「外傷の患者を搬送したため、車内が(血液などで)汚れることがある。本部に戻って清掃はするが、病院でも水道を使わせてほしい」「搬送したその後が気になる患者がいる」などです。この時はもちろんすぐに医療機関側で対応を行って、救急隊員の方々に喜んでいただきました。
今回は患者数アップ編となりました。今後収益アップ、経費削減と執筆する予定です。
皆さんはどう思いますか?
次回は3月11日(月)更新予定です。
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