第147回 財務諸表から見た収支改善 その2

前回のコラムでは主に患者数をアップさせる施策について記述しました。日本全体の高齢者人口の動態は、しばらく増加しますが、地方部においては高齢者人口が減少しています。患者となりうる可能性が高い高齢者人口が減少したら、次の施策は患者一人当たりの単価をアップさせることが考えられます。

財務諸表から見た収支改善 その2

前回のコラムでは主に患者数をアップさせる施策について記述しました。高齢者人口が増加する2030年前後までは、高齢者という患者(予備軍を含めて)という大きな市場がありますので、患者数も右肩上がりの医療機関もあるでしょう。しかし、そのような現象も都市部と地方部とでは異なります。

日本全体の高齢者人口の動態は、前述のようにしばらく増加しますが、地方部においては高齢者人口が減少しています。患者となりうる可能性が高い高齢者人口が減少したら、次の施策は患者一人当たりの単価をアップさせることが考えられます(実際は患者数アップと患者単価アップと同時に実施します)。

2024年度診療報酬改定はプラス改定に

2024年度は診療報酬改定の年です。先日その改定内容が明らかになりました。初再診料のアップやベースアップ評価料などの新設点数などがあり、+0.88%のプラス改定となりました。

改定の内容を少し振り返ってみると、糖尿病、脂質異常症、高血圧症という代表的な生活習慣病が特定疾患管理料から除外されました。この三疾患は、今後生活習慣病管理料で算定されることになります。この生活習慣病管理料自体の点数も改定により点数がアップしています(算定可能な医療機関は、200床以下の医療機関と診療所)。

しかし、点数がアップして医療機関の収入が増えるかといったら、そうでもありません。生活習慣病管理料の算定のための条件が厳しくなったからです。歯科医師、薬剤師、看護師、管理栄養士などの多職種と連携して総合的な治療計画書を作成しなければなりません。従来の特定疾患管理料では、体重や検査値などを電子カルテなどに入力しておけば算定できていましたが、今度はきちんと治療計画書を作成して患者に説明し、サインなどをもらわなければならないのです。患者単価を上げるということは、このような事例に限らず簡単に行えることではありません。

自院のレセプト作成能力を確認し適正化を図る

単価アップのために最初に確認することは、自院のレセプト(診療報酬明細書)算定能力です。決して不正な請求をすることではありません。レセプトを作成する部署として医事課がありますが、その医事課の評価として、査定率などで評価することがあります。しかし、査定を気にするあまり、従来レセプト請求できる内容をワンランクダウンするなどして無難な、査定されにくい低い点数でレセプトを作成してしまうことがあります。これは本来の診療報酬請求の適正化ではありません。

一度外部のレセプトをチェックしてくれる機関に自院のレセプトチェックをしてもらい、自院のレセプト作成能力を確認しておきましょう。診療所などは、レセプト作成を専門的に学習してきていない方々も多くいますので、日ごろからレセプトについての資格挑戦などを推奨するなどしておくこともよいと思います。

「施設基準」と「手術室の稼働率」に注目

レセプト関連でいうと、最近注目されているのが「施設基準」です。この施設基準は広く外来患者や入院患者など算定対象の対象患者が多いため、数点アップしただけでもその増額効果は高くなります。単価アップのために個々の点数を上げる工夫や努力は必要ですが、最小限の努力で最大限の効果が期待できる「施設基準」の見直しが単価アップの取り組みの優先順位としては上位です。同じ理由で各種加算点の見直しがあります。

手術を実施している医療機関であれば、「手術室の稼働率」に注目してください。手術の対象患者は、医療機関の中でも患者単価が高い患者群です。従って、このような手術対象患者を増やすということは収入を増やすことに直接つながります。手術症例の患者をどのように増やすかということは、今回省略して、手術症例患者を効率よく対応する内容を記述します。

手術というものは、さまざまな診療科が行います。その診療科ごと、また術式ごとに事前に準備する内容が異なります。この手間を省くためには、同じ術式の患者を集中させるということも考えてみてはどうでしょう。都内の甲状腺で有名な病院では、まるで流れ作業のような(決して流れ作業ではありません)手術室の光景です。また事前の手術器具などもパック形式のものもあり手術室の看護師の手間も少しは省けます。

さらに手術室の稼働率を上げるためには、手術が終了した手術室で次の手術を行うために清掃などを含めた準備を短時間で行うことも必要です。これらの取り組みの成果で1日の手術件数は多くなったとします。でも手術が終わる時間が遅くなり残業時間手当も多くなってしまうのでは、本来の利益向上の目的から逸脱してしまいますので、注意が必要です。

患者単価を上げるために重要なこと

患者単価を上げることは、すなわち患者の自己負担額が上がることになります。患者の自己負担額が上がっても患者が納得する内容にしなければなりません。納得しない患者は自院から離れていってしまうこともあります。従って、現在の患者層の単価アップを考えることと同時に、もともと患者単価が高い疾患群の患者の数を増やすことも同時に考えることが重要です。

皆さんはどう思いますか?

次回は4月10日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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