第148回 財務諸表から見た収支改善 その3

前回までのコラムでは主に患者数、患者単価のアップを中心に記述しました。今回からは経費削減について述べていきます。本コラムでもさまざまな経費削減のことについて、解説してきました。今回は経費を変動費と固定費とに分けてお話ししたいと思います。

財務諸表から見た収支改善 その3

前回までのコラムでは主に患者数、患者単価のアップを中心に記述しました。今回からは経費削減について述べていきます。本コラムでもさまざまな経費削減のことについて、解説してきました。今回は経費を変動費と固定費とに分けてお話ししたいと思います。

診療報酬点数という公定価格によって、自由に自分たちで価格を決められない医療機関では大きな収入アップは望めません。国民医療費削減の流れもあり、非常に経営的に厳しい経営環境にあります。そこで、多くの医療機関では、利益の確保のために「経費削減」を熱心に取り組んでいます。経費削減に成功している医療機関には、幾つか共通しているポイントがあります。

経費削減に成功している医療機関

1. 目指す方向や明確な目標が示されている

「経費削減」と声高に叫ぶだけではなく、その理由、方法、目標削減額などが明確にされている。

2. 既存の仕組みを例外なく見直す

採用される基準、取引価格の折衝などに例外を認めない。

3. 職員一人一人を巻き込む

人ごとではなく、自分のことと認識させること。正職員やパート職員などの区別なく経費削減の意識を持たせる。外部からの委託職員などにも意識付けができたら大成功。

4. 今後の成長や医療の質の向上ために投資は必要だが、同時に採算性も重要

投資については、必ず収支改善、シミュレーションなどを事前に行い投資の可否の判断材料とする。

5. 将来のプラスにつながるかの経営的な判断も必要

項目4に関連するが、収支改善が見られないから絶対投資は行わないということではなく、長期的な視点から自院のプラスになることであれば投資なども行う。

経費削減(変動費)

経費には患者数や収益額の増減によって支出額が変動のある「変動費」と、患者数や収益額に影響を受けず一定額の「固定費」とに分けられます。医療機関での代表的な変動費は「材料費」です。

また固定費の代表的なものは「人件費」となります。経営的な観点から考えると固定費が削減できれば、患者数などに関係なく経費全体が削減できますので、経営的なメリットは大きいですが、人件費を削減しようと考えたときに「難しい」「どうやって」という不安がすぐに頭によぎるでしょう。

さらに医療機関はさまざまな職種の集合体で「患者の治療」を行っていますので、人員削減なども困難です。それでも何も手を付けないわけにはいきませんので、固定費についてもあらためて記述しますが、今回は「変動費」について述べたいと思います。

材料費削減

材料費削減の前の準備作業として、「標準化」しておくことが非常に重要です。標準化とは、同一目的に使用する物品について、購入する種類を極力1~2種類程度に集約することです。全ての物品を一つに絞ること自体は大変ですので、そこは「現在よりも絞り込む」と緩くとらえてスタートしてもよいと思います。

この標準化(絞り込み)の効果は、取り扱い製品数の減少、保管スペースの圧縮、総在庫費用の圧縮、ロス分の最小化、費用の低減につながります。さらにこの準備が終了したら、材料費削減交渉などにも大きな影響を与えます。

具体的な材料費の削減のためには、既存の仕入先の見直し検討を避けては通れません。具体的には、事前に行った標準化効果で一企業当たりの取引金額を拡大し、取引先数を絞り込み単価を下げてもらう交渉を行います。同一法人で複数の医療機関など経営されている場合などは、関連施設内での在庫情報を共有したり、関連施設で共同購入や共同交渉を行ったりすることも削減効果があります。

用度課の機能強化

材料費の購入部署、価格交渉の部署としての用度課は、どちらかというと縁の下の力持ちという日陰のイメージですが、用度課は「利益センター」であることを認識すべきです。収益増加額=1円÷収益対利益率で算出した場合、30円30銭となり、これはすなわち、「1円の節減は、30円の収益に相当する」ことを意味します。

人員の投入、SPDシステムの導入など、用度課自体を戦略的に強い部署にすること自体が経費削減にもつながることがあります。
また用度課には注意する点もあります。それは「用度課担当者は公明正大が絶対条件」であることです。この点が崩れてしまうとその影響は大きく、経営自体に影響を及ぼしかねません。

皆さんはどう思いますか?

次回は5月8日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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