第126回 指導と監査

新型コロナウイルス感染症により、見送りとなっていた医療機関への立入検査などがそろそろ復活しそうです。そこで今回はあらためて「医療機関の立入検査」についての基礎的なおさらいと対処法とを解説します。

指導と監査

「今年度(2022年度)における『医療機関の立入検査』については、感染対策を十分に行ったうえで、日程なども十分に勘案して行うことが求められる。2021年度に認められていた『翌年度の立入検査を持って、今年度の立入検査を行ったものと見做(みな)す』との措置は、今年度(2022年度)にはとらない」と厚生労働省は「令和4年度医療法第25条第1項の規定に基づく立入検査の実施について」(都道府県等宛ての事務連絡)を示しました。

新型コロナウイルス感染症により、医療機関への立入検査などは、基本的に行われてきませんでしたが、そろそろ立入検査も復活しそうです。そこで基礎的なおさらいと対処法とを記していきます。

立入検査と指導

  • 立入検査:医療法第25条に基づき保健所などが行う医療機関への調査のこと
  • 指導:健康保険法第73条などに基づき実施される。集団指導、集団的個別指導、個別指導がある

集団指導と集団的個別指導

  • 集団指導:講演、講習形式によって実施されます。欠席してもペナルティーはありませんが、積極的に参加されることを強くお勧めします
  • 集団的個別指導:レセプト(診療報酬明細書)単価が高いことを意識させることを目的に実施されます。集団指導と同様に講演、講習形式が実施されたのちに、個別に面談による個別部分講義が行われます。多くの場合、個別といっても個室が用意されているわけではなく、簡単なパーティションによる区切りがある程度の会場で行われます

個別指導

原則として指導月以前の連続した2カ月分のレセプトについて関係書類を閲覧したり、確認されたりします。指導対象となるレセプトは30人分です。指導時間はクリニック、薬局で約2時間。病院は3時間程度です。
病院の個別指導はまず、電子カルテのログ確認から始まることがほとんどのようです。ログを確認しますので、電子カルテの入力を後日行っていたら、「改ざん」とみなされることもありますので、電子カルテの入力を後回しにせず、日ごろから適切に入力するようにしておきましょう。
また訂正、追記も後日しないようにする必要があります。

最強の個別指導対策

個別指導を避けるためにはどうしたらよいかというと、まずは個別指導の一段階前の集団的個別指導の対象にならないことです。集団的個別指導の対象になると、かなり高い確率で個別指導の対象になってしまいます。では集団的個別指導の対象にならないためにはどうすればよいのでしょうか。まずは適切なレセプトを作成すること。さらに療養担当規則などの守らなくてはならないルールを理解し、ルールを守ることです。当たり前のようですが、(特に院長などの経営者は)独自の解釈をするケースもが見られるために注意が必要です。
また集団的個別指導の対象になる基準がありますので、この基準を意識することも重要です。

以下に集団的個別指導の対象となる基準を記しておきますので、参考にしてください。

レセプトの平均点数が都道府県の平均点数より、1.2倍以上である。かつ類型区分ごとのおおむね上位8%以内に入っている

平均点数について

  • 都道府県の平均点数は、地方厚生局のWebサイト、各都道府県の保険医協会のWebサイトで調べられます
  • 自賠責や労災などは保険診療ではありませんので、この平均点数には反映されません
  • 平均点数の計算に用いられるのは、被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度のレセプトです。透析や生活保護などの公費医療や自由診療は関係ありません
  • 平均点数を抑えるために、請求できる保険点数をあえて、請求しないのは本末転倒です(念のため)

監査

「監査」とは、保険診療や診療報酬の請求内容に不正や著しい不正などが疑われる場合に、保険医療機関の指定取り消しなどの非常の重い行政指導まで念頭において実施されます。
監査が実際に行われる前に監査担当者は、事前にレセプトの書面調査を行い、必要があると判断されれば、当該患者になどに直接聞き取り調査も行われます。さらにこの事前調査は病院の立ち合いなく行われます。つまり事前に(病院の知らないところで)調査が行われ、そのうえで監査に来るのですから、相当疑っている状態で病院に監査に来ていることになります。
監査は午前中から午後5時ごろまで実施され、かなりの長時間実施されることになりますので、病院関係者は精神的にも肉体的にも相当ハードな1日になります。

具体的な監査内容は、事前に患者調査してきた患者に関する診療内容やレセプト内容の確認になります。不正、不当と思われる点を指摘されますので、その指摘事項について返答、説明を行います。したがって、きちんと説明ができる(医事課などの)職員を配置しておきましょう。

監査のきっかけ

医療機関に監査に来るには、きっかけがあります。そのきっかけの多くは、内部告発や患者の申告です。元職員を含む職員にも患者にも(療養担当規則の遵守など)不審に思われないようにすることが重要です。患者に対しては、真摯(しんし)に説明することも大事です。

皆さんはどう思いますか?

次回は7月13日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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