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第125回 病院職員に必要な能力~プレゼン力~
病院勤務のなかで自分の考えを外にアピール、主張することが必要な場面はありませんか? 今回はプレゼンに代表される「表現力」について考えてみます。
病院職員に必要な能力~プレゼン力~
病院に勤務している事務職員は、能力は高いのに引っ込み思案というか消極的な人が多いような気がします。
企業でいう社長である「院長」のワンマン経営や院長個人のマンパワーが強かったりする背景もあると思いますが、非常にもったいない状況だと感じることが多々あります。もう少し自分の考えを外にアピール、主張することが今後の病院経営を考えたうえでも必要ではないでしょうか。
そこで、プレゼン(プレゼンテーション)に代表される「表現力」について考察していきます。
短い時間で聞いてもらい、理解してもらう
自分の意見や考えを述べるということは、決して自分の考え方を押し付けることではありませんし、勝ち負けでもありません。話をする相手を尊重し、相手の話も真摯(しんし)に聞く姿勢が大事です。そのうえで、忙しい院長などの管理者になるべく短い時間で、自分の話を聞いてもらい、理解してもらう(場合によっては承認を得るなど)ことが重要です。
その準備段階としては、いつ、どのようなツールを使って(ここではプレゼンを前提にします)プレゼンをするかを考えます。
例えば、院長先生といえども診療をしている先生もいます。診療が終わり疲れているタイミングで話をしにいってもなかなかうまくいかないことが多いです。また、相手に理解してもらおうとたくさんの資料を抱えて話をしに行くこともお勧めしません。
ビジネス本などには「話は3分間で話題は三つに絞る」などと書かれているようですが、3分間という時間にもあまり縛られないほうがよいです。最も重要なことは相手に話の内容を正確に理解してもらい、納得してもらう(場合によっては指示や承認をもらう)ことが重要なのですから。
それでは効率的にかつ効果的にプレゼンをするためにはどうしたらよいでしょうか。
予行演習(ロールプレーイング)、シミュレーション
大事な準備は予行演習(ロールプレーイング)、シミュレーションです。
プレゼンに活用する資料を実際に使って、声に出して話をしてみます。次にその資料で最も強調したい箇所やページを意識して再度話をします。
強調したい箇所の前後の声の大きさを若干小さくし、強調したい部分はやや大きめの声ではっきりと、ゆっくり話をすることと、特に語尾に力を入れて話をすることがポイントです。さらに語尾ははっきりとした言い切り文書になっていることが望ましいです。
「一応」「〇〇だと思います」「検討します」などの言葉は相手を不安にさせてしまいます。高等テクニックとしては、相手を感動させる言葉などが入っているとより良いプレゼンになりますが、それは少し経験を積んでからでも構いません。
そして同時に自分の表情にも気を付けて意識的に表情に変化をつけるとより効果的です。次の準備は想定される質問に対しての答えを考えておくことです。相手の立場にたって質問や疑問を考えてみましょう。時にはその質問に対する回答資料を準備しておくことも必要になります。
重要なのは話の最初と最後
話が伝わらない悪い例としては、目的が不明確、プレゼン側の理解不足、余計な話が多い、話す順番がおかしいということがほとんどの理由です。
「目的」については、「誰に何のために」プレゼンを行うかを考えます。プレゼンをする内容について理解していないなどということはプレゼンをする以前の話です。内容については完璧に理解することが必要です。
次に相手により理解してもらうために、さまざまな内容を盛り込みたいという気持ちは分かりますが、あまり多くの内容を盛り込むと本来の重要な内容がかえって理解度が低くなってしまうこともあります。盛り込む情報と捨てる情報をよく考えましょう。
話をする順番については、結論を最初に述べてからその理由付けをしていく形や物語のようにストーリー性に富んだ話の順序にするなどがありますが、やはり病院では、結論を最初に持ってくる順序がよいと思います。
そして一番大事なのは話の最初と最後です。話の最初については漫才などで、話初めに観覧者を「つかむ」という表現をします。
最初に何かこちらに引き付ける印象的な所作などのことです。実はプレゼンでもこの「つかみ」は意識したほうがよいです。
相手に興味を持たせてから、こちらの話を聞いてもらうほうがより効果的だからです。
例えば、電子カルテなどの情報セキュリティ対策について提案したいとします。
いきなり、
「情報セキュリティ対策が必要です。そのためにはこんなシステムが必要です。費用はいくらです。」
など、乱暴なプレゼンをする人はいないと思いますが、このようなケースでしたら、
「昨年、四国の病院でランサムウェアの感染で電子カルテが動かなくなり、数日間診療がストップした事例がありました。被害額は数千万円だったようです。」
というような話からスタートすると、このあとの情報セキュリティ対策の話も熱心に聞いてくれるのではないでしょうか。
最後については、自分自身の結論、提案内容が入っていること。判断の丸投げになっていてはいけません。
「自分自身のプレゼン」でもある
プレゼン力にはさまざまなテクニックもありますが、そのテクニックに頼りすぎることにも注意が必要です。プレゼンというのは、何か提案したいものをプレゼンをするのと同時に「自分自身をプレゼン」していることでもあります。
自分自身のプレゼンが成功すれば「信頼」という評価につながります。ぜひ病院の職員の皆さんもさまざまなプレゼンをしてみてください。
皆さんは、どう思いますか?
次回は6月8日(水)更新予定です。
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