第4回 経営環境分析から経営計画策定へ

医療機関を取り巻く経営環境は、少し変わっています。自分たちの提供するサービスに自分たちで価格を決められません。国が価格を決めます。

しかも2年に一度その価格も上がったり下がったり。さらにそのサービスはストックすることができません。生産と消費が同時に起きます。

さらにさらに、医師や看護師など職員のほとんどがライセンス保持者で、労働集約型産業の代表格です。などなど数え上げたらきりがないくらい特殊な経営環境です。

だからこそ、自院の置かれている環境を分析し、経営計画を作成、遂行することが重要なのです。

まず環境分析や経営計画を作成する前に、理事長や院長など経営層が進めるリーダーシップと、部門長などの管理者が進めるマネジメント(物事を正しく行うサイクル)を明確にする必要があります。

リーダーシップは自院の進むべき方向性や指針や理念に沿って多くの資源を使い、マネジメントでは、リーダーが示した方向に従って、正しくかつ早く、効率的に実行していくことが求められます。リーダーシップとマネジメント、両方重要です。どちらが欠けていても経営改善は困難です。

【経営計画策定までの四つのプロセス】

  1. 目標を立てる
    自院はどうなりたいのか?という夢を現実にする目標を設定する作業です。今後の経営戦略の策定や意思決定の際の判断基準となります。
  2. ミッション(あるべき姿)を明確に描く
    行動の礎(ミッションステートメント)となる価値観や原則を示す必要があります。これは職員の行動評価や誤った方向から修正するときの動機づけにもなります。
  3. 現状の分析
    環境分析は、自分自身で認識、納得することが重要です。今まで見えなかった問題を顕在化させる作業です。注意点としては、「労多くして益少なし」の状況になることもあります。また、環境分析には自院の分析である内部分析と社会経済構造変化に代表されるマクロ環境や競争相手の分析を行う外部分析があります。
  4. 変革のシナリオを練る
    計画策定の最終段階として、どのように(How)、ビジョン、ミッションに向かって進んでいきたいのかというシナリオを描く作業になります。ポイントは環境分析に基づき論理的にシナリオを作成することです。作成されるシナリオは、上位推計や下位推計など予想される変化から、複数のシナリオを準備しておくことも重要です。シナリオを複数準備しておくことで、将来の経営リスクが軽減されます。

さらに戦略決定後、戦略を定期的に点検する作業(マイルストーンやフィードバック)を行い、計画と実際の運営のズレを認識することにより、変化に応じた戦略を立て直すことができます。

経営計画の立案は経営者自らが作成します。その計画をマネジメントリーダーや幹部職員を対象に基準となる指標などを示します。

皆さんはどう思いますか?

<POINT>
 ・ 経営者の経営判断力を高め、質の高い意思決定が重要
 ・ 現状分析を実施し、明確な戦略の策定と展開を実行する
 ・ 経営計画は経営者自らが作成する
 ・ 変革シナリオはロジスティックに

次回は4月中旬の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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