第76回 医師の働き方改革

現在、さまざまな業態の企業において、働き方が問われています。医療界でも厚生労働省内で「医師の働き方改革に関する検討会」が立ち上がり、先日、中間報告が発表されました。

医師の働き方改革

現在、さまざまな業態の企業において、働き方が問われています。医療界でも厚生労働省内で「医師の働き方改革に関する検討会」が立ち上がり、先日、中間報告が発表されました。

医師の働き方改革が必要な理由(中間報告から抜粋)

  • 医師は、昼夜問わず、患者の対応を求められうる仕事であり、他職種と比較しても抜きん出た長時間労働の実態がある
  • 質の高い医療に対するニーズの高まり、患者へのきめ細かな対応が求められる傾向等により、こうした長時間労働に拍車がかかっている
  • 当直医による対応だけでなく、オンコールの医師が対応することも一般的に行われている
  • 診療時間外や休日であっても病状や診療方針等の説明を行うこともある

制度上の問題点

  • 「フリーアクセス」は、ともすれば「いつでも、好きなところで」という極めて広い解釈の下での受療行動につながり、医療現場の業務量の増加につながってきた面がある
  • 大病院に患者が集中しているといった地域性や、診療以外に教育や研究を行う大学病院であるといった医療機関の特性などがある 等

*出典:厚生労働省
「医師の働き方改革に関する検討会」が「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を取りまとめました
医師の働き方改革に関する検討会 中間的な論点整理 P.1(PDF:50KB)

そもそも、医師には患者から診療を求められたら、その求めに応じなければならない応召義務があります。確かに時間外労働時間が何百時間で、過労死などの事例はありますが、患者も医師の勤務時間にあわせて病気を発症するわけではありません。

中間報告では、解決案として、タスク・シフティング(医師の業務を他職種へ移管すること)とタスク・シェアリング(医師の業務を共同作業すること)が提案されています。診療報酬改定でも、タスク・シフティング推進策として、数年前に「医師事務作業補助者」という主に医師の事務作業を補完する職種に診療点数が付き、実際に各医療機関では医師事務作業補助者を採用し業務を行っています。主な作業内容は診断書作成代行などですが、内容の最終的なチェック、サインは医師が行います。その他さまざまな書類作成も医師事務作業補助者が行いますが、全ての書類の最終チェックは医師が行います。

タスク・シフティングといっても、医師に代われるものは存在しないのであり、医師の名前で書かれる書類の責任は医師にありますので、安易に他職種に移管することは、非常に困難だと思います。

中間報告でも、タスク・シフティングには、「医療機関や診療科によって状況や特性が異なる。タスク・シフティングを導入したとしてもその効果の発現までに時間を要す。」(注)などの指摘が見受けられます。

(注)出典:厚生労働省
「医師の働き方改革に関する検討会」が「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を取りまとめました
医師の働き方改革に関する検討会 中間的な論点整理 P.7(PDF:50KB)

タスク・シェアリングについては、複数主治医制やシフト性の導入、グループ診療や短期間での医師交代派遣などが具体的な対策として提案されていますが、医師と患者の信頼関係は、このような状態で築けるのでしょうか。患者は医師を信頼できるのでしょうか。疑問に思います。

医師数自体が少ないため(確かにOECD諸国に比べ日本の医師数は少ない)に、(勤務医)医師の労働時間が長くなるという意見もあります。それは確かにあると思います。さらに今問題になっている医師の働き方の対象となる医師は、病院に勤務している勤務医のことです。日本は自由開業制ですので、開業医と勤務医の数のバランスにも注意が必要だと思います。また労働時間が短くなったら、その短縮された時間が原因で、特に外科系の医師の技量が下がることにはならないでしょうか。このような現象や関係性は以前、アメリカで同様の事象が起きたことがあります。そして、なにより特に若手医師のモチベーションが下がらないか心配です。意欲に燃えて、高い使命感を持って多くの技量や経験を積もうとしている医師に、「時間です。これ以上働かないでください」と言えるでしょうか。

経営管理に関する論点(中間報告から抜粋)

  • 既に医師の働き方改革に着手している医療機関もあれば、改革の必要性は認識しているがどのように取り組めばいいかわからない医療機関、改革の必要性をまだ認識していない医療機関もあることから、法人形態の特徴にも留意しつつ、これらの違いに応じた異なるアプローチによる医療機関側の意識改革や労務管理等に関する具体的なマネジメント改革の進め方とともに、財政面を含めた医療機関に対する支援等の在り方が課題となるのではないか
  • 意識改革に当たっては、特に医療機関において経営や組織運営全般に責任を持つ立場や、個々の医療現場の責任者・指導者の立場にある医師の意識改革が不可欠であるとの意見や、医学教育や卒後教育の場においても、働く人の健康や労務管理の基礎知識について、しっかりと理解できるような取組等を検討すべきであるとの意見もあった
  • 医療機関側において、経営上のメリットが乏しい、労働時間削減の改善効果が少ないという認識が勤務環境改善の取組が普及しない要因である
  • 医療機関における労務管理の徹底には、現場の理解と対策の浸透にある程度の時間がかかるため、一定の時間軸を意識して検討すべきである

*出典:厚生労働省
「医師の働き方改革に関する検討会」が「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を取りまとめました
医師の働き方改革に関する検討会 中間的な論点整理 P.9(PDF:50KB)

経営の立場で、医師の働き方改革を見ると、医師の勤務環境を整えなければならないことは、十分に認識されています。さらに経営上のメリットが乏しいのはもちろんですが、場合によっては、減収になる可能性もあるということです。これでは、なかなかうまく動かないです。

医師の健康の確保の観点(中間報告から抜粋)

  • 時間外労働規制の目的は労働者の心身の健康確保であることを踏まえ、労働時間だけで整理するのではなく、勤務の満足度等も含めて検討する必要がある
  • 健康確保に当たっては睡眠時間の確保が重要なのではないか。最も適正な必要睡眠時間は欧米で成人が最低7時間程度、日本の指針ではもう少し短い(6時間以上8時間未満)とされている
  • 日中の睡眠と夜間の睡眠における睡眠の質の違いを踏まえると、できるだけ夜間の睡眠を確保できる勤務体制がとれることが望ましい

*出典:厚生労働省
「医師の働き方改革に関する検討会」が「中間的な論点整理」と「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組」を取りまとめました
医師の働き方改革に関する検討会 中間的な論点整理 P.11(PDF:50KB)

医師個人の健康管理は非常に重要な視点です。さらに医師が不健康であれば、患者の安全も脅かすことにもなりかねません。

さまざまな視点や問題点、課題が浮かび上がってきています。非常に難しい、悩ましい問題です。しかし、医師も医療のプロフェッショナルであり、医療の現場では全ての指示の発信元であり、患者さんに対しての全責任を負う立場です。

医療機関によっても大きく勤務環境や地域の状況が異なりますので、基本的には現場に任すのが良いのではないかと考えます。具体的には裁量性の導入など自己管理、自己決定できる働き方を幾つか選択肢として準備して、医師個人が勤務医療機関と話し合いながら、決めていくことが良いと考えますが、今後の議論の行方を見守りたいと思います。

皆さんは、どう思いますか?

次回は4月11日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
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