第75回 2018年度診療報酬改定 外来編

2018年度の診療報酬改定の内容について解説します。前回の入院編に続いて、今回は外来編です。

2018年度診療報酬改定 外来編

前回の入院編に続いて、今回は外来編です。まず初めに、紹介状(診療情報提供書)無しで大病院を受診した患者から定額負担を徴収する医療機関を、特定機能病院および許可病床500床から400床以上の地域医療支援病院へ拡大します。経過措置の期間はありますが、紹介状(診療情報提供書)1枚無いだけで、初診時に5,000円、その後再診の度に2,500円を徴収されます。さらに以前から特定療養費として、病院独自の金額設定をしてお金を徴収している場合もありますので、5,000円、2,500円だけでは済まないケースも多いと予想されます。それだけのお金を出してまで直接、大病院に受診したい方もいるとは思いますが、躊躇してしまう患者も相当数いるのではないでしょうか。躊躇してしまう患者は、どこに行くのでしょうか。開業医や今回の規定に掛からない病院にいったん受診して、紹介状(診療情報提供書)を入手して、ようやく目的の病院に受診するという流れが予想されます。本来の患者の受療行動に変化が現れるということです。

そこで、医療機関はその立ち位置によって、対策が異なります。まず、今回の改定でお金を徴収しなくてはならない病院は、確実に紹介状(診療情報提供書)を持った紹介患者を取り込むために、地域医療連携業務を強化する必要があります。また、近くに今回の改定内容に該当する医療機関があり、自院は該当しない医療機関であれば、紹介状(診療情報提供書)を入手するために受診する患者が多く来院する可能性があります。そのような患者に単なる紹介状(診療情報提供書)を書くだけの病院とならず、「大病院に診てもらおうと思ったが、この病院がいいわ」と思ってもらえるような医療サービスを準備する必要があります。このような病院は病床規模が大きくありませんから、あれもこれもと手を広げず、特定の幾つかの自院の得意分野、得意診療科、得意疾患を絞り込んでおくことも良いでしょう。そして、開業医などは、どの医療機関と連携を強化するのかを見定めて、「A病院と自院は密接な連携をしています」というアピールを住民や患者に行うことで、受診者を増やすことができます。

かかりつけ医機能を有する医療機関において初診時における診療機能を評価

  • 初診料 機能強化加算 ○点
  • 診療所または 200 床未満の保険医療機関
  • 以下の届け出をしている医療機関:地域包括診療加算、地域包括診療料、認知症地域包括診療加算、認知症地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅時医学総合管理料(在宅療養支援診療所<在支診>、在宅療養支援病院<在支病>に限る)、施設入居時等医学総合管理料(在支診・在支病に限る)
  • * ○は2018年2月14日時点で未定。以下文中も同様です。

今回の改定で、開業医に対するメッセージの一つは、「開業医の役割は、かかりつけ医機能である」ということです。UKでのゲートキーパー的な存在を開業医に求めてきています。前述した大病院へ紹介状(診療情報提供書)が無い患者への自己負担の範囲を広げるなどの政策は、いきなり大病院に受診するのではなく、まずかかりつけ医に受診して、必要があれば(紹介状を書いてもらい)大病院へ受診してくださいという、国のメッセージです。と考えるのであれば、開業医の先生方は総合医としての準備が必要になります。風邪や生活習慣病だけを診ているのではなく、ある程度専門外の疾患も診察できるようにしておくことが必要ではないでしょうか。

そして、開業医へのもう一つのメッセージが「看取りへの取組み」です。
患者の希望に応じた看取りを推進するために、次のような改定内容が出てきました。

  • 在宅ターミナルケア加算(在宅患者訪問診療料)有料老人ホーム等に居住する患者とそれ以外に分けて評価
  • 「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」等を踏まえた対応を要件として追加
  • 訪問看護ターミナルケア療養費20,000円 ⇒◯円
  • 機能強化型在宅療養支援診療所・病院、機能強化型訪問看護管理療養費の要件の看取り実績について、〇月以上の訪問診療を実施した患者であって、あらかじめ聴取した患者・家族の意向に基づき、当該診療所又はオ(注)における受入医療機関で〇日以内の入院を経て、死亡した場合も、在宅における看取りの実績に含めることができる
  • (注)オ:有床診療所にあっては当該診療所において、無床診療所にあっては別の保険医療機関(許可病床数が200床以上の病院を含む。)との連携により、緊急時に居宅において療養を行っている患者が入院できる病床を常に確保していること。

在宅時医学総合管理料等の要件に、当該患者のケアマネジメントを担当する居宅介護支援事業者に対し病状や予後等について情報提供することを追加。

在宅療養中のがん末期の患者に行う酸素療法の評価として、在宅ターミナルケア加算 酸素療法加算 ○点(がん患者であって、在宅ターミナルケアを行っている者に対し、酸素療法を行った場合)
特別養護老人ホーム等におけるターミナルケアの評価の見直しとして、在宅ターミナルケア加算、看取り加算(在宅患者訪問診療料)

  • 特別養護老人ホームにおいて看取り介護加算(II)を算定している場合には、看取り加算は算定できず、在宅ターミナルケア加算のみを算定すること
  • 訪問看護ターミナルケア療養費 20,000円 ⇒ 在宅○円、特養等○円

在宅時医学総合管理料 オンライン在宅管理料 ○点(1月につき)

  • 定期的な訪問診療を1回のみ行い、かつ、当該月において訪問診療を行った日以外に情報通信機器を用いた医学管理を行った場合に、在宅時医学総合管理料の所定点数に加えて算定する。ただし、連続する○月は算定できない。

電話等再診の見直し

  • 定期的な医学管理を前提として行われる場合は算定できない

在宅患者持続陽圧人工呼吸療法遠隔モニタリング加算の新設
在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 遠隔モニタリング加算○点(1月につき)

  • 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料2を算定し、CPAP療法を実施している患者について、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、遠隔モニタリングを用いて療養上必要な指導を行った場合、○月を限度として所定点数に加算

在宅持続陽圧呼吸療法用治療器加算 CPAPを使用した場合 1,100点 ⇒ ○点

在宅患者酸素療法指導料遠隔モニタリング加算の新設
在宅酸素療法指導管理料 遠隔モニタリング加算○点(1月につき)

  • 在宅酸素療法指導管理料「2 その他の場合」を算定しているCOPDの病期がIII期又はIV期の患者に対して、前回受診月の翌月から今回受診月の前月までの期間、遠隔モニタリングを用いて療養上必要な指導を行った場合。○月を限度として所定点数に加算
  • 呼吸器について○年以上の経験を有する常勤の医師を配置していること
  • 呼吸器について○年以上の経験を有する看護師を配置していること

在宅医療について、増収になるような改定内容が盛りだくさんなことが分かります。これは多くの開業医の先生方に、在宅医療、特に在宅での看取りに取り組んで欲しいという強烈なメッセージです。厚生労働省がこのように、インセンティブで誘導する期間は限られています。期間限定のインセンティブと考えて間違いありません。躊躇して取り組むチャンスを逃してしまうと、得られるはずの収益を逃してしまう可能性もあります。また、お金だけの問題ではなく、2025年問題を背景として地域の住民の健康管理を担い、住み慣れた自宅で家族に見守られながら逝くことを手伝ってあげることができる唯一の職種が医師であり、かかりつけ医です。ぜひ在宅の看取りに多くの開業医の先生方が取組むことを願ってやみません。

皆さんは、どう思いますか?

参考
厚生労働省 中央社会保険医療協議会 (中央社会保険医療協議会総会)

次回は3月14日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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