第84回 委託費の削減プラス……

利益を確保するには、費用を削減するしか方法がないわけですが、今回は費用の中でも委託費について記述したいと思います。「経費削減」と聞くと「委託費削減」と安易に考えがちですが、コストだけを追求していくことだけが、成功への道でしょうか。今回は、過去に実際にあった、委託先との関係を例に「委託費削減」について記述したいと思います。

委託費の削減プラス……

2018年度は、診療報酬と介護報酬のW改定でした。特に診療報酬改定は、マイナス改定でしたが、皆さんのところでは、収益や利益に影響は出ていますか。 
医療機関の経営を考えたときに、収益の高低を左右するのは、患者単価と患者数です。特に患者単価は公定価格である診療報酬点数が決められていますので、他業界のように、自分たちのサービスや製品の定価を自分たちで決めることができません。従って、収益を上げるために値上げをするなどということはできません。さらに診療報酬改定は、さまざまな理由からプラス改定になることは難しく、今年度のようにマイナス改定になることがほとんどです。そしてこのように収益をアップさせることが非常に困難な時代でも、医療機関を存続させるためには、一定の利益が必要だということはご理解いただけると思います。収益をあげることが困難な状況の中で、利益を確保するには、費用を削減するしか方法がないわけです。
費用の削減において、(削減額が)1円÷収益対利益率の計算から、収益増減額が算出できます。ある病院では、この計算の値が、約30円でした。すなわち、1円の経費削減は30円の収益アップに相当するということになるのです。
そこで、今回は費用の中でも委託費について記述したいと思います。

皆さんの施設では、委託先の契約交渉は、どちらの部署が担当していますか。例えば、検査の委託であれば、検査科が検査委託会社(委託先)の決定から価格交渉まで担当している施設もまだ多いのではないでしょうか。たしかに、「検査」という特殊な事情がありますので、単純に価格のみで、委託先を決定してしまうと問題があります。しかし、検査科は検査のプロであり、価格交渉や経営のプロではありません。そこで、委託先を決定する過程や契約内容については、検査科などの現場の協力を仰ぎ、ある程度委託先が絞れてきたら、契約条件や価格交渉については、事務系の部署が担当する分業制をお勧めします。 
委託先から見ると、委託先を決定する権限がある部署や人物には徹底して対応します。しかし、権限を持っていない部署や人物に対しては、それなりの対応になってしまうことが多いのではないでしょうか。交渉窓口が分散、複数化することで、委託先としては気が抜けない交渉となります。 
委託先が見積金額を考えるときに、何か計算ソフトのようなものに計算させて見積額を決めるという単純なものではありません。新規顧客であれば、どのくらいの見積額であれば、契約に繋がるのか。既存顧客であれば、契約継続するにはどのくらいの見積額であれば契約継続できるのか等といった心理が働き、そのうえでの決定となります。医療機関側の真剣さや場合によっては経営状況等を委託先に理解してもらったうえで、見積金額を作成してもらうことが重要です。

委託の業種は、製品の購入とは違いますので、見積金額を作成するにあたり、単純に物品に対しての単価を見積もるのではなく、委託サービス自体を見積もることになります。つまり、契約内容や条件などを綿密にあらかじめ作成したうえで、見積りをお願いすることになります。例えば、清掃の委託について、日に何回ごみの回収に来るのか。突発的なごみの回収依頼に応じてくれるのか。清掃場所はどこで、清掃方法はどのような方法なのか等ということも、きちんと整理しておくことが大事です。この契約内容は定期的に見直すことも忘れないでください。
医療機関内の清掃は、特殊な環境を清掃しますので、特殊薬剤の使用や感染管理の社員教育体制なども見積書と共に提出してもらうようにすると良いでしょう。既存委託先への契約更改時には、職員に清掃に関するアンケートを実施し、評価している点や改善してほしい内容など委託先に伝えることも重要です。委託会社は、決められた契約内容に沿って業務を実施しますので、無駄のないようにしましょう。以前ある施設では、全てのトイレの清掃を1日3回実施するという契約内容でした。委託会社は契約内容に沿って清掃していましたが、ある場所のトイレは、月・水・金は、ほとんど誰も使用していませんでした。清掃の必要のないトイレを1日3回清掃していたことになります。実際に清掃していた人は、「無駄なことだな」と感じていましたが、契約だから清掃していたということです。
委託会社は、自分たちで、何か判断することよりも、決められた契約内容をきちんと履行することを優先します。このようなことを防ぐためには、委託会社を単なる委託先の一つとして見るのではなく、自分たちの「パートナー」、「仲間」と考え、何か良い提案などあったら、いつでも言ってほしいという姿勢を見せて理解してもらうことです。委託先の社員も人間です。自分たちのことを、単なる一業者と見ている施設と、自分たちのパートナーと見ている施設では、何かと力の入れ具合は違ってきます。ある医療機関では、年末に委託業者を含め、取引会社の中から、1社「ベストパートナー賞」として、賞状を贈呈しています。この賞状を贈呈された会社は、その後の対応が違うそうです。とても良い対応だと思います。ちなみにコストは賞状一枚だけです。
次に委託業務、委託サービスの評価基準を決めておくということも重要です。これは委託業務の質と効率化を常に進めるためにも必要です。長年ずっと同じ委託会社にお願いをしているといったケースも多々見られると思いますが、これは委託先に特に不満がないので、継続していると考えられます。また、契約更新を長年実施していないという事例も、少数ですが、散見されますのでお気を付けください。契約更新は原則毎年実施しましょう。
さて、委託先からは特に不満は持たれていない会社側からこのような状況を見ると、その顧客は安定した安心できる契約先、優良顧客ということになります。しかし、優良顧客には、新規の取引を営業している施設などへは改善提案など積極的に実施しても、取引が安定していると思われている取引先には積極的に改善提案などは持ってきません。
そこで、1年に1回でも委託業務を評価する仕組みを構築します。前述した職員へ清掃に関してのアンケート調査もその一つです。優良顧客と思われていても、手を抜くことはしないでしょうが、常に一定の緊張を持って業務を行ってもらうことは、質の向上、発展に繋がるきっかけに気づくことになります。さらに既存委託先にとっては、きちんと誠実に対応していることが、1年に1回評価されることになるのですから、励みにもなりますし、他社の参入を防ぐことにもなります。

「経費削減」と聞くと「委託費削減」と安易に考えがちですが、コストだけを追求して、お金だけの関係、上下関係になるのではなく、コストを下げつつ、さらにプラスアルファの協力ももらえるような公平な関係づくりを目指した方が、最終的には得るものが多いです。
皆さんは、どう思いますか?

次回は12月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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