第83回 医療機関の理想的なリーダーとは

日本も以前は、リーダーシップを備えたリーダーがいましたが、現在はどうでしょうか。企業においても政界においても、この医療業界においても「あの人は」という人物が見当たらなくなってはいないでしょうか。リーダーは、自然発生的に勝手に育つものではありません。リーダーを創り上げることが重要です。職員を意識的に、計画的に育てることは組織全体を強固にすることにつながり、医療機関の経営にも良い影響を与えることは必至です。

医療機関の理想的なリーダーとは

企業などの組織を統率、引っ張っていく「力」、「能力」が、リーダーシップです。そのリーダーシップを発揮する人物こそ「(真の)リーダー」だと考えます。 
日本も以前は、リーダーシップを備えたリーダーがいましたが、現在はどうでしょうか。企業においても政界においても、この医療業界においても「あの人は」という人物が見当たらなくなってはいないでしょうか。 
ドラッカーによると、リーダーシップに必要な第一の要素は「仕事」であると定義しています。もちろん、リーダーにはリーダーの仕事、ミッションがあるわけです。生まれながらの資質やカリスマ性などは、問題ではないとしています。 
そして第二の要素は、「責任」である*としています。決して、地位などではありません。優れたリーダーは、仕事がうまくいかなくても人のせいにするのではなく、ましてや失敗を人に押しつ?けることなどはしないものです。リーダーが責任を負うことで、部下は自由に活動できるようになり、組織が良い方向に進んでいくことになります。

※参考図書:P.F ドラッカー 『現代の経営』『プロフェッショナルの条件』

リーダーシップを発揮する人をリーダーと述べましたが、リーダーのみで成立するものではありません。リーダーは、組織の中にあって初めてリーダーになれます。リーダーをフォローするフォローワーが存在し、リーダーは、このフォローワーの行動に影響を与えることが重要です。おのおのの仕事をさせるために人(フォローワー)を動かすことができるのが、リーダーです。従って、必ずしも常に「率先模範」である必要はないのです。大切なことはフォローワーに仕事をしてもらうことであり、リーダー自身がフォローワーの仕事をすることではありません。重要なことはフォローワーがついてきてくれるかどうかです。フォローワーがついてきてくれるためには、信頼されていることも大事です。

医療機関は、医師や看護師に代表されるようにライセンス取得者の集団といえます。有資格者であり、医療の専門家集団である医療機関の組織は、ややもすると、タコツボ化しやすいといわれています。勤務医は勤務先の医療機関に対し、愛社精神などのような感情や忠誠心のような感情は湧きにくく、自分の目指す医師としてのキャリアを積み上げるために、「腰掛け」的な勤務先と考えている医師もおりますし、雇用条件が良い医療機関があれば、いつでも辞めて移ることに躊躇しない医師もいます。さらには、勤務医自身が開業するという独立するケースも多くあります。また看護師も他の職種に比べても離職率が高いので、勤務先を移ることへの抵抗意識は低いと考えられます。 
そんな特徴がある職員全体をフォローワーとして仕事をしてもらう院長は、他業界のリーダーよりも、大変なことが多いと思います。 
弊社でも患者満足度調査や職員満足度調査、看護師満足度調査を実施していますが、最近は、職員満足度を向上させることが、患者満足度につながることであると、認知、理解されはじめ、職員満足度調査がより一層重要視されてきました。確かに職場に不満のある職員が、患者に対して満足度を高めるようなサービスを提供できるとは、考えにくいです。職員が自分の仕事にやりがいや生きがいを持って、嬉々として働ける職場つくりが重要です。満足度の高い職員が提供するサービスによって、患者満足度は向上するのです。そして、そのような満足度の高い職場から良い医療、質の高い医療が提供できるのではないでしょうか。 
小規模な医療機関などでは、院長自身がメスを握り、スタッフを引っ張っていくという姿がよく見られます。プレイング・マネージャー型ともいえます。規模の大小に関わらずこのようなリーダーシップの形も不正解ではありません。リーダーの背中を見てスタッフがついてくるのであれば、立派なリーダーシップの姿です。重要なことは、「スタッフがついてくる」ということです。決して「裸の王様」になってはいけません。自分に対して厳しいことを助言してくれる人を遠ざけ、耳触りの良いことばかりを言ってくる人をいつも自分の周りに配置していては、職員はついてきてくれないばかりか、黙って離れていってしまいます。手遅れにならないようにご注意を。 
リーダーは、自然発生的に勝手に育つものではありません。リーダーを創り上げることが重要です。現場のリーダーであれば、その現場のリーダーとして必要な能力が身につけられるようにキャリアプランを作成して、意図的に育てることが必要です。キャリアプランとは、求められる人物像に近づくためにどのようなステップを踏んで、どのようなキャリア、経験を積んでいってもらいたいか、そのためにどのようなスキルや能力を身に付けなければならないかを示したものです。キャリアプランは各人共通ではなく、部署によっても異なりますし、たとえ同じ部署であっても、経験年数などによっても異なります。入職年数が短ければ、キャリアプランに必要なスキル、能力は、自分の部署の業務を行うためのスキル、能力です。そのスキル、能力が身についたら次のステップとしては、自分よりも若い人たちを指導、教育できるスキル、能力になります。そして、部署全体をマネジメントできるスキル、能力とステップアップしていきます。それぞれのステップアップの際には、客観的に、具体的に判断できる指標も必要です。 
仕事をこなす能力にしても、若手を教える能力にしても、部署をマネジメントする能力にしても、その手法などは教えていかないといけません。必要な能力が身につくようにするために年間の教育計画を立案し、実施していきます。そして、最終的には教育の成果を評価するといった一連のプロセスを繰り返していきます。この一連の流れに人事評価を絡めていくことも効果的です。人事評価では、評価項目の設定、評価基準の設定、評価ウェイトの設定が事前準備として行い、あとは複数回の面談で、納得性ややる気などを担保していきます。 
スキルを持った人を即戦力として、中途採用することも否定はしませんが、新卒であれ既卒であれ、職員を意識的に、計画的に育てることは組織全体を強固にすることにつながり、医療機関の経営にも良い影響を与えることは必至です。ぜひ、真剣に自院の人材教育体制を見直してみてください。

皆さんは、どう思いますか?

次回は11月14日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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