第23回 費用削減改善編 委託費対策

■取り組みやすい委託費削減

病院内で、経費削減を取り組むときに最初に実行されることが、委託費の削減です。
経費削減には、委託費に代表されるような外部の業者などに協力してもらう経費削減と自分たちの努力によって効果を得る経費削減があります。
自分たちの努力とは人件費対策なども含まれますので、できれば後回しにしたいというのが本音でしょう。
しかし本来はこちらの経費削減を最初に実施すべきとは思いますが……話を元に戻すと、多くの場合は委託費の削減を委託企業に相談することから始めるわけです。
さらにこの委託費は病院が支払っている費用の中でも削減しやすい対象であることも一因です。

しかし、委託内容によっては、または委託してからの時間が経過していればいるほど、専門性が高ければ高いほど、委託契約内容がブラックボックス化していて、委託費用のパフォーマンスが適当なのかどうか不明になっていて、手を出せないなんていうこともありますので、注意が必要です。
委託してもすべてをお任せするということはしない方がよいということです。

委託費削減に取り組むには、現在委託している委託業務がどのようなものがあり、どのような業務内容なのか?業務の実態調査(アンケート調査など)し、調査内容を分析し、非効率な業務や仕様を見直すことから着手しましょう。

■具体的な進め方

進め方のプロセスを以下のとおりです。

  1. 委託業務の洗い出し
    ・どのような業務が委託されているのか
    ・院内への取り込みの可能性検討
    * 本当に委託でよいのかどうかということ。場合によっては委託をしないという選択も検証
    ・委託企業
    ・契約内容や契約期間など
  2. 改善の委託業務の優先順位を決める
    ・支払契約内容のタイプ分け
    ・契約更新時期(前回の契約更新から現在までの時間)など
    * その業務をある企業に委託し始めて、「一度も契約の見直しをしたことがない」なども散見されます。
  3. 費用との比較
    ・委託業務の仕様内容調査
    ・委託単価、時間、使用物品経費、その他の仕分け
    ・支払い費用の内訳(請求書などから)と見積書等との比較分析
    * 当初の契約内容と業務実態が一致しているかの確認
  4. 請求内容と実態が一致しているかの確認
    * 現場へのアンケート調査やヒアリング調査を実施
  5. 【3】、【4】の内容が請求金額に見合う妥当な金額なのか検証
    * 同業他社の見積もりなども参考にします
  6. 業者折衝
    ・既存業者に事情説明を行ったうえで、新たな提案を求めたり、契約内容の見直しの折衝を行う
    ・同業他社にも同時に同様の交渉を行う
    * 院内の該当部署とも密接に連携して業者折衝を行わないと、交渉がうまくいかない可能性もあるので注意が必要
  7. 契約の見直し
    ・新しい契約内容、契約金額で委託業務をリスタートさせる
  8. フォロー
    ・効果検証、維持管理
    ・必ず次回契約更改時期は決めておく
    * 委託業者にも伝えておく(契約に至らなかった業者にも伝えておく)

具体例:清掃委託 * 多少アレンジしていますが実例です
・院内の清掃業務を外部業者に委託していた。その業者と契約して7年経つが、一度も契約更改をしたことがない(担当者の入れ替えなどで引き継ぎが不十分だった)
・契約内容、契約金額は、7年前のまま一度も見直しがされていない
・院内の主要部署にアンケート調査を実施(清掃に関しての満足度など)
* この結果、ごみ箱にごみが溜まる時間帯の前にごみの収集が行われていた。トイレの清掃時間も決められた時間には清掃していたが、トイレが汚れる時間と不一致していた。汚れなどを指摘してもすぐに対応してくれないなどが分かった
* このアンケート調査の結果は、委託業者にも示し提案や委託業務仕様にも反映してもらう
・契約時の契約内容や見積もり内容のチェック
・他院の契約内容の調査
・試算の結果、m2当たりの清掃委託金額が、約3,300円となり、非常に高額な契約金額のままであることが判明
・m2当たりの契約目標金額を設定した
・現在の契約業者との折衝(事情説明と新たな提案を求める。また、同業他社からも話を聞き、見積もりも取ることを伝える)
・数回の折衝を経て、契約内容の見直し(清掃場所、回数、時間、随時対応の有無など)、契約金額の変更(今回の折衝では目標金額までには至らなかったが、年間削減額は1,000万円を超えた)を行った
*結果的には現在の契約業者と継続契約することになった
・今後は、定期的にアンケート調査を行い、調査結果を順次実施することや毎年契約更改を実施することを取り決めた

委託費削減の際に、委託業者を変更し契約金額を削減する手法もあるが、その方法は最後の手段とした方がよい。
現在の委託企業との契約更改を基本路線に考えほうが院内に無用な混乱を起こすことなく費用削減できるメリットがあります。

委託費には、今回の事例(清掃)の他に検査や医事業務など多種にわたります。その委託業務内容によっては、担当部署と打ち合わせを実施しながら進めることも大事です。

委託に求めることは、「最小のコストで最大のパフォーマンス(サービス)を」ということです。

皆さんは、どう思いますか?

次回は11月13日(水)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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