第129回 調剤薬局は、対人業務重視にシフトチェンジ!

調剤薬局は非常に多く存在し、調剤薬局の選択権は患者側にあるといえます。また、厚生労働省は、調剤薬局の主な業務内容を対物業務から対人業務をシフトさせようと考えています。厳しさを増す調剤薬局が生き残っていく方法について考察していきます。

調剤薬局は、対人業務重視にシフトチェンジ!

処方箋を持って調剤薬局に行く経験は、ほとんどの人がしていると思います。皆さんはその調剤薬局でどんな経験をされたり、印象を持たれたりしているでしょうか。先日私が経験したのは、処方された薬の在庫がなく、後日送ると言われた対応です。処方された薬剤は2薬剤で、1薬剤は全く在庫なし。もう一つは、処方された日数分に足りないというものでした。数日後自宅に郵送された医薬品は全く在庫がなかった薬だけでした。連絡して確認してみると、薬剤師同士の伝達ミスで残りの薬が送られていなかったとのことでした。その数日後に同じ薬局で家内も全く同じミスに合いました。調剤薬局は非常に多く存在し、調剤薬局の選択権は患者側にあるといっても良いでしょう。さらに現在厚生労働省は、調剤薬局の主な業務内容を、対物業務から対人業務をシフトさせようと考えています。このような状況下で考えさせられる経験でした。

薬剤師の主な対人業務

厚生労働省医薬・生活衛生局の2022年3月15日の「薬局業務に関する対人業務の充実について」という資料では、健康サポート機能、服薬情報の一元的・継続的把握とそれに基づく薬学的管理・指導、24時間対応・在宅対応が「患者のための薬局ビジョン」として掲げられています。そして、薬剤師の主な対人業務として以下の内容が挙げられています。

  1. 処方内容のチェック(重複投薬・飲み合わせ)、処方提案
  2. 調剤時の情報提供、服薬指導
  3. 調剤後の継続的な服薬指導、服薬状況などの把握
  4. 服薬状況などの処方医へのフィードバック
  5. 在宅訪問での薬学的管理
  • * 1~2は厚生労働省資料引用。3~5は筆者加筆

特に3の服薬指導、服薬状況などの把握は「義務」として規定され、4のフィードバックは努力義務として規定されています。

主な対人業務(一部対物業務あり)

  • 患者インタビュー(目的、動機、症状、経験などの確認)
  • 自薬局の情報(OTC購入希望・履歴、服用中の処方薬の確認など)
  • 他の医療機関・薬局の情報収集(他処方薬との禁忌・相互作用・作用相反・重複の確認)
  • 医薬品の説明、使用方法、注意点の説明(対物業務)
  • 服薬モニタリング、服薬上の確認、副作用の発現確認

ポリファーマシーへの取り組み

多くの薬剤師は、患者との会話の中から患者を観察し、お薬手帳なども活用して間違いのないように処方された医薬品を患者に提供しています。しかし、厚生労働省が求める調剤薬局の薬剤師の姿は、その先にあります。

具体的には、「ポリファーマシーへの積極的な取り組み」です。ポリファーマシーとは、非常に多くの薬を服用している患者(特に高齢者)に対し、多くの薬を服用することで引き起こされる副作用や副反応もあることから、必要最小限度の薬にしましょうというものです。薬を最小限度にすることが目的として、調剤薬局の薬剤師の求められる対人業務を考えると、前述した対人業務の中では、服薬状況の確認が絶対必要です。

さらに厚生労働省の考える対人業務(前述)をみると、処方医へのフィードバックと書かれてあります。この意味は、調剤薬局の薬剤師がポリファーマシーに積極的に取り組み、処方薬を減らす提案を薬剤師から医師へ提案しなさいという意味に解釈できます。ポリファーマシーについては、診療報酬改定でも診療点数が付いており、厚生労働省の本気度もうかがえます。ポリファーマシーの取り組みは、重複投薬や減薬が実現したら、相当額の国民医療費の削減につながることにもなります。

しかし現実問題としては、なかなかポリファーマシーが進んでいない状況です。その理由はいくつかありますが、調剤薬局の薬剤師が、「医師と議論したことがない」とか「臨床の現場を知らない」という人が多いことが薬局学会で指摘されています。

対人業務へのシフトチェンジが大きなポイント

診療報酬改定では、薬価を下げて財源とし、その財源をもとに診療報酬本体を上げる手法が使われていますが、薬価改定はすでに毎年実施されていますので、2022年度の診療報酬改定では、調剤薬局に関しての診療報酬点数が下げられ財源の一部とされました。この流れは、次回改定も続くと思われます。調剤薬局の経営はますます厳しくなることが推測されますので、ポリファーマシーを目的とした対人業務にシフトしていかないとますます経営が厳しくなる可能性が高いと考えます。

調剤薬局の生き残りにはまだ課題がありそうですが、対物業務から厚生労働省の考える姿の対人業務にシフトチェンジすることが大きなポイントになると考えます。いずれにしても冒頭に紹介した私たちが経験したことは論外です。対人業務にシフトする以前の調剤薬局の基本です。

皆さんはどう思いますか?

次回は10月12日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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