第38回 失敗してなんぼ

◆仕事上での失敗
2015年はじめのコラムですが、「失敗」の話を取り上げようと思います。皆さんは日々仕事をしている訳ですが、今まで仕事で失敗したことがありますか?失敗したことが無い人はいないと思います。失敗の大きい小さいはあると思いますが、誰でも仕事のミスはするものです。大事なのは失敗をどう乗り切るか。失敗を次にどのように活かすかです。医療においての失敗というとドキッとするかもしれませんが、今回はミスが患者の生命に直結するような職種(医師や看護師など)以外のケースを想定してお話しします。

「失敗」という言葉には、マイナスイメージがあると思いますが、「失敗学」や「失敗力」などという言葉もあります。失敗という言葉に何かを足すと、プラスのイメージに変わりませんか?
失敗学とは、失敗に学び、同じ愚を繰り返さないようにするにはどうすればいいかを考える学問です。さらに、こうして得られた知識を社会に広め、ほかでも似たような失敗を起こさないように考えることと定義されています。ポジティブな学問ですね。失敗学によると失敗の種類は大きく三つに分けられます。

 1.織り込み済みの失敗。ある程度の損害やデメリットは承知の上での失敗
 2.結果としての失敗。果敢なトライアルの結果としての失敗
 3.回避可能であった失敗。ヒューマンエラーでの失敗

1と2の失敗は、「失敗は成功の元」となり得る失敗とされています。また、この二つの失敗については、状況・結果などがある程度予測できたり、経験からくる的確な判断で対処したりすることができるとされています。
2については、リーダーという職種の方は職種の特性上、チャレンジすることが求められる機会が多くあります。失敗を数多く経験しているということは、それだけ多くの「挑戦」してきた証拠とも言えます。言われた仕事以外の仕事にチャレンジしてきた結果とも言えます。
3の失敗は、失敗からさらなる悪循環が生まれる失敗です。予想しておけば回避可能であったにも関わらず、予想をしていなかったためにパニックに陥り、ますます、状況を悪くしてしまうというものです。この失敗は少ない方が良いですね。
医療現場では、ミスをできる限り少なくするツールとして、マニュアルやヒヤリハット報告などを活用しているのは、ご承知の通りです。最近では電子カルテなどのITツールを活用して医療安全を図る取組みも行われています。

失敗力に関しても、最近数多くのセミナーが開かれていたり、書籍が販売されていたりするようです。内容は「失敗から学びましょう」というものが多いようです。

◆ 失敗したらどうする
失敗したら皆さんは、どうしますか?自分のミスによって周りの人たちに迷惑をかけたケースでは、直ちに謝罪しますよね。なんだ当たり前じゃないかとお思いですよね。では、「直ぐに謝罪することは待ってください」と言ったら、どうですか?日本人は即座に自らの非を認め、潔く謝ることが一種の美徳とするところがありますが、これは、同じ職場の人間同士に限定されることです。近年、医療訴訟が日本でも急激に増加しています。患者や患者家族などから、時には反社会的勢力からのクレームに対して、安易に謝罪することは、非を認めたことになりますから、謝罪するかどうかの判断は熟考が必要です。上司の判断も仰ぎましょう。場合によっては院長の判断も仰がなければいけません。対応次第では病院全体に多大な損害を与えることにもなりかねませんから。

クレームや(不本意な)要求に対しては、まず初めに客観的な事実や現在行っている対応状況などを説明することが重要です。対外的な対応、交渉には十分な注意が必要です。しかもその説明や対応は真摯に行わなければ、いけません。さらに対外的な対応は、決して一人では行わず、複数で行いましょう。できれば録音や録画など客観的な証拠があると尚良いでしょう。これは最悪のケースを想定してのことです。

◆ 失敗経験を活かす
失敗した経験は誰にとっても、人に話すことはもちろん、思い出したくもない嫌な経験でしょう。しかし、そこから目を逸らしたり、忘れようとしたりせずに、あえてその経験の失敗原因を分析して、解決策を考えることが重要です。失敗原因を分析するときは、後悔などの気持ちに影響されがちですが、徹底的に客観的に事実だけを分析しましょう。そして、その分析や対策立案には自分一人で行うのではなく、チーム全員で失敗の内容を共有することが大事です。理由は、失敗及びその原因を組織全員でシェアすることにより、組織のリスク管理のレベルが引きあがることに繋がるからです。つまり、自分の失敗が組織全体の財産となるということです。失敗した本人も少しは気が楽になるでしょう。
日本は減点主義で評価しますから、失敗しづらい国と言えます。ヒヤリハット報告でも、提出した報告による評価をしない医療機関が多いです。多くの報告書を提出して改善策を考えることが目的ですから、報告書の提出しにより悪い評価が下り、その結果、報告書が提出されなくなるほうが危険だからです。
失敗こそが人や組織を成長させると言ったら言い過ぎでしょうか?是非、組織のトップやリーダーが積極的に失敗体験を語ってほしいと思います。 

皆さんは、どう思いますか?

次回は2月12日(木)の更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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