第144回 用度・購買・調達 その1

医療機関の費用構成は、人件費に次いで材料費が多く占めています。外科系の病院であれば、その割合はさらに高いです。利益を確保するためには、材料費のコントロールが重要です。そこで用度課などと呼称されることが多い医療機関の材料費の購買、調達について記述します。

用度・購買・調達 その1

院長「○○先生は、手術に●●(診療材料名)を使っているんですか」
○○先生「はい。いつも●●を使っています。かなり安く仕入れているようですよ」

これはある病院の院長と医師との会話です。この病院は当社が医師別原価計算をお手伝いしている病院で、実は○○先生は赤字になることが多く、その原因は材料費であると、毎回私が指摘をさせていただいた先生です。院長先生が●●(診療材料名)の定価と購入価格を用度課に問い合わせたところ、ほとんど値引きはされていないことが判明しました。

医療機関の費用構成は、人件費に次いで材料費が多く占めています。外科系の病院であれば、その割合はさらに高いです。利益を確保するためには、材料費のコントロールが重要です。そこで用度課などと呼称されることが多い医療機関の材料費の購買、調達について記述します。

利益を拡大する方法は、収益を伸ばすか費用を圧縮するかの2通り

利益を拡大するためには、収益(売上)を伸ばすことと、費用を圧縮する方法があります。特に医療界においては、診療報酬という公定価格という制約がありますので、収益を大幅に伸ばすことは非常に困難な状況です。収益を伸ばす努力はしますが、同時に費用を縮小させる取り組みも行われます。費用構成割合の最も大きい人件費は、収益を伸ばす原動力にもなりますので、簡単に削減するわけにはいきません。

そこで次に構成割合が大きい材料費について注目が集まるわけです。しかし、多くの用度課職員は、材料費削減に努力しても、または削減に成果をあげても正しく評価されていないことが多いように思います。仕入価格を●%削減することは、利益を○%生み出したことと同じだということを経営者の皆さんは認識してください。用度課は利益を生み出す可能性のある部署(プロフィットセンター)ということです。

 現状コスト削減売上拡大
売上10,000円10,000円20,000円
利益1,000円2,000円2,000円
コスト9,000円8,000円16,000円

上表をご覧ください。現状が1万円の売上で9,000円がコスト、1,000円が利益だとします。コストを1,000円削減できると、利益が倍の2,000円になります。現状の条件で2,000円の利益を可能とするためには、売上を倍にしなければなりません。前述したように収益を伸ばすことが難しい現在の医療機関経営にとって、コストを削減できるかどうかが大きな経営の分岐点になるのです。

用度課の主な業務内容

ソーシング(Sourcing)購入の仕様や契約条件の作成
サプライヤーの選定と購入価格の交渉、決定
パーチェシング(Purchasing)発注/検収
納期管理

用度課の主な業務内容は上記表のとおりで、ソーシングとパーチェリングに分かれています。いずれも大事な業務ですが、コスト削減に注目すると、ソーシングの業務内容がポイントになります。今回は全面的に見直すということを前提にソーシングの部分の話を続けます。

Step1:コスト削減PT(プロジェクトチーム)の収集

用度課メンバーが中心になることは間違いありませんが、用度課メンバーだけでは人手不足、あるいは経験不足になることも考えられます。さらにコスト削減を病院全体で真剣に取り組み、重要な経営課題であると全職員に周知するうえでは、期間限定のPTを発足させて取り組むことが重要です。
病院で使用する材料はそれぞれの特徴があり、用度課が全ての材料の特徴を把握、理解することは困難です。そのため、専門知識を有している職員などをメンバーに加えることも検討します。

Step2:選定項目の抽出

用度課の取り扱っている物品は非常にたくさんありますので、全てを見直すことは得策ではありません。まずはコスト削減の効果が高いと考えられる対象物品の選定を行います。選定には原価計算のデータからも選定候補を抽出可能ですし、ABC分析(注)などの手法による抽出も可能です。

  • (注)ABC分析:売上高・コスト・在庫といった評価軸を一つ定め、多い順にA、B、Cと三つのグループ分けをし、優先度を決める方法

Step3:計画立案

メンバーが決まり、コスト削減の対象項目が決定したら、メンバーの役割、担当を決め、全体計画(アクションプラン)を作成します。全体計画にはマイルストーンなどのスケジュールも網羅されており、そして何より削減効果金額という目標数値を事前に決めておくことが大切です。

Step4:現状調査

まずは現状を知ることから始めます。対象物品については、購入実績の有無にかかわらず、あらゆる情報を収集し、まとめます。その収集する情報の中には、課題や問題点なども含みます。そして調査結果はPT内で情報共有します。
また、コストに関係する要因(購入数、仕様など)については、後の価格交渉において必須の情報になりますから意識して情報収集します。

Step5:サプライヤー説明会

現在取引しているサプライヤーや、未取引サプライヤーに対してコスト削減の宣言を行います。ただし、一方的にコスト削減を叫んでは逆効果です。病院の置かれている状況の説明を行い、決して一方的な値引き交渉ではないことを理解してもらいます。病院とサプライヤーの双方がWin-Winの関係となることが究極の目標です。今回は価格に注目しますが、新たな提案などもあれば、積極的に提出してもらいます。

今回はサプライヤーとの交渉前における準備段階までの話でした。次回はいよいよ交渉術、交渉ノウハウを中心に記述します。

皆さんはどう思いますか?

次回は1月10日(水)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社FMCA 代表取締役

藤井 昌弘

1984年に医療関連企業入社。院内の各種改善活動を指導。急性期医療機関出向、帰任後、厚生労働省担当主任研究員として厚生行政の政策分析に従事。2005年退職、株式会社FMCAを設立。原価計算の導入と活用、病院移転に伴うマネジメントも実施。
株式会社FMCA

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