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第38回 コイルセンターにおけるIT人材とは
コイルセンター(鋼材加工業)におけるIT人材とは、どのような人なのかをITの変遷も参考にしながら考えてみたいと思います。
ITを経営のツール(道具)として活用し、成果を上げている事例はたくさんあります。
しかし、コイルセンターではIT専任者を置けず総務・経理部門との兼務が現状です。
また、IT担当に期待する役割や必要とされるスキルは幅広く漠然としています。セキュリティ・ウイルス対策、ネットワーク、パソコン管理(Windows XPから7への移行・入替等)の技術的な知見と業務システムの開発・導入検討の際のリーダー役まで技術・業務を含め多岐に渡っています。
では、コイルセンターの経営にとって有益なIT人材とはどのような人なのでしょうか。
はじめに、鉄鋼業を含めたITの変遷について簡単に振り返ってみましょう。
鉄鋼業界は、昭和40年(1965年)頃から他業界に先駆け鉄鋼メーカー・商社とのEDI(Electronic Data Interchange)をはじめとした電算化(当時はまだITという言葉はありませんでした)に取り組んできました。
電子計算機(EDP)の出現
人間より正確に早く計算を行う機械の出現です。
当初は電子計算機を使用したシステムをEDP(Electronic Data Processing)と呼んでいました。
筆者がコイルセンターに入社した昭和52年(1977年)は、既に電子計算機が導入されており、入社内定後に人事部からEDPのキーボード入力に慣れるためにとキー配列を実物大に印刷したものが送られてきたことを覚えています。
ただし、当時のシステムはバッチ処理で過去に発生した実績(仕入・加工実績・売上)を入力することが目的で、現物の動きとシステム内のデータに乖離(かいり)・ズレ・が発生していました。
システムから出力された在庫表には既に加工された製品や出荷されて払い出しされた在庫が載っている場合が多く、システムからの在庫表を使用せずに業務担当者は手書き台帳に加工手配・加工実績・出荷の落とし込みを行い管理していました。
また、単重計算機能が無いため、鉄の比重を板厚ごとに暗記して電卓で計算していたのを懐かしく思います。
その後、電子計算機がコンピューターと呼ばれるようになりその特長を活かした事例が普及してきました。
主な活用事例は
1)事務効率化の道具
-1 省力化・合理化ツール:重量計算、伝票発行等の自動化
-2 管理精度向上:手作業で行っていた伝票の起票 → 台帳への転記 → 落込をコンピューターで自動処理を行うことによる管理精度向上
例えば、納品書を発行すると売上・請求書・売掛金・入金・残債管理までの業務が自動的に連動して処理が行われる。
2)経営戦略立案のための道具
手作業では時間を要してできなかった、大量のデータの集計・分析処理行い、各種実績の推移と予想から意思決定ツールとしての活用を行う。
例:前期と今期の「鋼種別・得意先別売上推移」から加工予想・販売戦略の参考とする。
3)情報活用の道具
社内外の情報共有の道具として、パソコン・インターネットを活用しメール・ホームページから、社内外の行事・スケジュールの共有、エクセル・ワード・パワーポイントによる資料作成と共有化
電子計算機からITと呼ばれる昨今まで著しい変化がありますが、一貫していることは電子計算機もITもあくまでも、我々の道具であることです。
また、電子計算機の出現当初の価格は、極端な言い方をするとハード(電子計算機器)を買うとソフト(プログラム開発)がおまけについてくるイメージと聞いたことがあります。
当時、ハードがあまりにも高額なためソフト開発は陰に隠れて目立たなかったようです。
しかし、現在はハードとソフトの価格は逆転し、ソフトを有効に活用することが重要視されています。
次回は、このような背景の中で、コイルセンターにおけるIT人材について考えてみます。
次回は9月11日(金)更新予定です。
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