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第39回 コイルセンターにおけるIT人材とは(2)
前回は鉄鋼業界では他業界に先駆けた電算化をはじめ、コンピューターを事務効率化から経営戦略立案・情報活用の道具へと変遷してきたことを申し上げましたが、コイルセンターにおけるIT人材とはどのようなことなのでしょうか。
繰り返しになりますが、ITはあくまでも道具です。
ITを経営課題の解決の道具に活用する場合はIT利用技術(コンピューターや情報活用の能力)が重要となります。
IT活用を営業担当者による車での得意先訪問に例えると、ハンドル操作や安全運手はもちろんですが、道路状況・混雑時間帯や裏道を多く知っている程、訪問順も考慮し効率良く得意先を回ることができ、商談の時間を確保することにつながります。
つまり、IT(ハンドル操作・安全運転)を使う能力は「情報(コンピューター)リテラシー」と呼ばれ、上手く使える(道路状況・混雑時間帯等の情報を活用)会社が経営革新や改善を効率良く行えることになります。
リテラシーとは読み書き能力のことですが、情報リテラシーとはパソコンを上手く使えることではありません。
コイルセンター経営者から、他社のIT状況はどうなっているのかと尋ねられることがたびたびあります。他社の先進事例を紹介すると、そこまではIT化の必要はなく予算もないとのお話も伺います。コイルセンターでのIT活用事例には、EDI(Electronic Data Interchange)による鉄鋼メーカー・商社との契約・出荷や得意先との受発注・納品・請求データ等の送受信、基幹業務システムの見直し・再構築、システムと加工設備(レベラー・スリッター)との加工指示・実績の連結や自動刃組装置との連携、バーコード・ICタグ等の自動認識技術による在庫管理、メール・スケジュール共有化等々と多岐にわたり、それぞれ目的や狙った効果があり、IT活用の成功事例には必ず背景にある「何を解決するためのものだったのかという目的・目標」があります。
自社の経営課題の解決のために現状の問題は何か、ITの活用の目的・目標・効果は何かを考えることが重要です。
コイルセンターでは、IT専任者を置けず兼務が多いのも現状ですが、ITだけではなく会社全体の業務に精通し、経営課題にも関心を持つことが不可欠です。
コイルセンターに必要なIT人材とは鉄鋼業界で自社が生き残っていくために、トップダウンの指示待ちではなく自ら経営者に進言できる人です。
・ITで何ができて何ができないか理解し説明できる人
ITでできることできないことを判断し、現状にこだわらず将来を見据えて自社に有益なIT活用を自分の言葉で説明し進言できる人
・技術(ソフトウェアを含む)やサービスの導入が会社の経営に役立のか見極められ得られる効果と予算の目利きができる人
この様な人が、ものをつくるコイルセンターに必要とされているのではないでしょうか。
次回は12月11日(金)更新予定です。
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