第44回 コイルセンター業務システム構築のポイント(2)

コイルセンターの業務システムを構築するにあたっての、システムの信ぴょう性を高める方法をお伝えします。

コイルセンター業務システム構築のポイント

コイルセンターの業務システム構築・見直し・導入に数多く携わってきました。業務システムへの要望は、現状足元で困っていることや煩雑で手間が掛かっている業務の解決などに向きがちですが、業務をうまくシステムに乗せ効果を上げるポイントがあります。
前回はシステムの信ぴょう性を高めることの重要性についてお話ししましたが、システムの信ぴょう性を高めるためにはどの様な方法があるのでしょうか。今回は「ポイント2」をお伝えします。

ポイント2

情報が発生した場所で業務を行った人がシステムへの入力(登録)を行い、現品(現物)とシステム上の在庫(帳簿在庫)とを限りなく近づける

コイルセンターに限らず物流を扱うシステムでは、「現場の作業者が今現在、目で見ている現品の状態」と「システム上の在庫(帳簿在庫)」とを限りなく同期をとる(近づける)ことがシステム内の情報の信ぴょう性を高めることにつながります。
コイルセンターの業務システムは在庫状態の管理機能が大きな幹となっていると言っても過言ではありません。

コイルセンターに原コイル(母材)が入庫した、原コイルをレベラーで加工してシートに形状が変わった、製品が出荷され自社から払い出された、工場内の置き場を移動した等の在庫に関する情報がリアルタイムにシステムに反映され業務に活用できることが求められます。
そのためには情報が発生したつど、発生した場所で入力することが重要です。
加工実績はスリッター・レベラー等の加工ラインで直接入力を行うことで情報がリアルタイムにシステムに反映されます。
しかし、現状では多くのコイルセンターで加工実績が記載された伝票を事務所に持ち帰り入力しています。このため加工が完了して目の前にある製品がシステムに反映されていない状況が起きます。製品ラベルの員数・重量は加工ラインで作業者が手書き記入、または事務所で加工実績入力後に出力し加工ラインに配布すると誤記入や貼り間違いの原因となりますが、加工ラインで実績入力直後に製品ラベル出力を行えば誤記入や貼り間違いを防止できます。
加工ラインで加工実績入力を導入する場合に作業者から加工作業を優先するため入力はできないとの反対意見が出る場合がありますが、加工ライン向けに簡易画面を準備し歩留まりチェックや異常値のアラーム機能を付けることで入力負荷を軽減し誤入力の防止が可能です。
また、加工作業者の業務責任範囲への意識が変わり加工実績を正しく入力することで、入力数値の精度が高まりシステム内の情報の信ぴょう性をさらに高めることにつながります。

在庫情報をリアルタイムにシステムに反映させるためのツールとして自動認識技術の活用があります。自動認識技術とは人間が情報を直接入力することなく情報を取得したり物を個別に識別できたりすることで、代表的なものにバーコードやICタグがあります。

母材の入庫では、鉄鋼メーカーからの出荷情報をEDI(注1)で事前に入手し現品が入庫したその場で母材現品に貼られた鉄鋼EDI標準「鉄鋼バーコード標準ラベル(注2)」のバーコードを読み取り、入庫処理を行うことで受け入れた母材がリアルタイムにシステムに反映されます。
製品を出荷する際に製品ラベルのバーコードを読み取り、出荷指示とトラックに積み込んだ明細を突き合わせ、出荷した製品を在庫から落とし込むことで在庫状態がリアルタイムに更新されます。
これらのことが「現場の作業者が今現在、目で見ている現品の状態」と「システム上の在庫(帳簿在庫)」とを限りなく同期をとりシステム内の情報の信ぴょう性を高めることにつながります。

次回は、コイルセンター業務システムを実業務で活用するためのポイントについてお話しします。

(注1)Electronic Data Interchangeの略。異なる組織間で取引のためのメッセージを通信回線を介して標準的な規約を用いてコンピューター間で交換すること

(注2)鉄鋼EDI標準では、鋼材製品に貼り付けられる現品ラベル等にバーコードを表示し、これを読み取ることによって、EDIメッセージとの対応をとることができる。鋼材現品受け入れ時にラベルに表示されたバーコードをスキャナーで読み取ることで、事前に伝送されたEDI情報と鋼材現品とを照合し、検収業務を正確・迅速に行えるほか、日常の在庫管理、出庫管理業務等に利用することも可能。
出典:一般社団法人日本鉄鋼連盟 鉄鋼EDIセンターWebサイトより要約

http://www.jisf.or.jp/steeledi/edistand/edigaiyo.html

次回は11月17日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社日本金城印 横浜オフィス シニアマネージャ

三山 裕司

2003年10月、株式会社CANVASを起業。
2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移し現職。
鉄鋼流通/コイルセンターの実務とITに精通した専門家集団として、業務改善・システム導入でお客様をサポート。RFIDを代表とする自動認識技術・物流効率化を実現するサービス・システムの情報提供・導入支援を行う。
株式会社日本金城印
株式会社日本金城印 コイルセンター情報ブログ(鉄鋼流通・加工)

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