第21回 「コイルセンター機能」を読み解く(かんばん編2)

前回は、コイルセンター在庫保管機能と代表的な「かんばん」の流れについての概略を説明させていただきました。
今回は鋼材供給における管理方法について説明していきます。

さて「かんばん方式」はプル方式とも呼ばれ、後工程が主体となり必要な前工程の部品生産を「かんばん」で指示します。
必要なタイミングで必要な量を最終工程から遡って調達することで無駄な在庫を持たず、ギリギリでの生産変更にも対応可能となります。
 
しかし、ここで鋼材調達と部品調達のリードタイムのギャップが問題となります。
部品調達のリードタイムが製造の前段取り時間と製造時間にプラス輸送時間を加味したものでせいぜい数時間から数日であるのに対し、鋼材調達のリードタイムは高炉メーカーでの鉄鉱石からの製造になるため鋼材が作られるのは一般的に2~3か月後となり、その後コイルセンターでの加工となるわけです。このギャップを調整するため鋼材調達では事前に先物契約を行い、常に最終工程の生産計画とコイルセンターの財源(在庫+発注残)を把握した供給体制を維持することが重要になります。

【鋼材の発注量検討フロー】

上記の図は、毎月末コイルセンターにて財源の過不足予測を算出し、関連各社とのヒアリングを基に鋼材の発注数量を決定するフローです。
ここでは3か月後の不足に対しマイナス19tの不足となるため、発注ロットを配慮した20tの発注が確定されています。

このように「かんばん方式」を含む在庫保管機能はコイルセンターだけで成立する機能ではなく、関連各社との協業でこそ大きな効果が得られるものです。

下記に、在庫保管機能を充実させる上での流通およびコイルセンターでの鋼材供給におけるポイントとヒントを挙げてみました。

【鋼材供給管理でのポイントとヒント】
ポイント1:在庫品は保管場所や保管形態にかかわらず、すべての在庫を計上する。
 ヒント1)在庫が母材・仕掛・製品と変化しても集計キーでの管理を可能にする。
 ヒント2)返品材・不具合品は除外できるよう別管理する。

ポイント2:発注残に関しては自社管理データと発注先データとの差異があれば、修正を実施。
 ヒント1)発注した数量に対する納入実績管理と発注残管理を発注単位で行う。

ポイント3:生産計画の変動に伴う使用予定変更は需要家へ確認のうえ、財源バランスを再計算、必要に応じ商社・高炉メーカーへ過不足状況を連絡。
 ヒント1)当月の鋼材供給状況をいつでも把握・分析できるようにする。
 ヒント2)上記ポイント1・2の再計算がいつでもできるようにする。

実業務を行っていれば当たり前のことばかりですが、手作業や集計確認作業を考えると雑多で厄介な仕事です。
しかし、この業務をシステム化や運用ルールの変更を図ることで効率化できれば、自社内だけではなく協業している企業からも評価されるポイントになると思います。

なぜなら、それによりコイルセンターの業務効率化だけではなく、協業企業を含めたSCM全体の最新動向を反映した発注計画の立案へとつながり、さらなる全体在庫の削減と鋼材調達リードタイムの短縮といったSCMの強化が期待できるからです。

次回は9月13日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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