第22回 「コイルセンター機能」を読み解く(かんばん最終編)

前回まで2回にわたり、コイルセンターを中心とした代表的な「かんばん」の流れと鋼材供給における管理方法について説明させていただきました。
そこで今回は最終編として、既に当たり前のようになっていますが、今後もう一歩踏み込んでの取り組みが期待される「かんばんにおける実績分析」について説明させていただきます。

そもそも「かんばん方式」は必要なものを必要なタイミングで必要な量だけ調達するという目的で機能しています。そのせいか、多くの企業では供給切れに対する危機感こそあれ、鋼材調達の基礎となる生産計画の的中率や使用予定達成率についての分析はあまり実施されていません。鋼材調達の発注量計算が終われば、その計画の結果は検証されることなく忘れ去られているのが現状です。

コイルセンターでは鋼材調達を先物契約で行い、契約時点での在庫や生産計画を基に数か月後の鋼材発注を行うため、「かんばん」振出元である製造メーカーの生産計画に変動があった場合、コイルセンターの在庫量は大きな影響を受けます。しかも、鋼材調達と部品調達のリードタイムの違いから、より早いタイミングでの調達数量の修正が必要となります。

もちろん「かんばん方式」は「かんばん」振出元からの中長期の生産計画の提示をもとに運用されおり、生産計画の大幅な変動により過剰在庫が発生した場合の「かんばん」振出元による在庫責任の取り決めは多くの企業で交わされています。しかし、実際に取引を行う中で取引先の生産変動に対し単に受け身になるだけではなく、自社の「かんばん」に対するかかわり方を川上の高炉メーカーの鋼材作りこみ状況から下流に向かう鋼材切断加工、最終工程の製品へとより広く積極的に実績分析を行うことで、取引先と一緒になった生産計画変動による影響の予測や対応に取り組むことができるようになり、よりお客様から頼られる企業になることができるのではないでしょうか。

「かんばん」における実績分析のポイント

 1)「かんばん」対象最終製品(例えば自動車・家電)の生産計画と実績の差異確認
 2)「かんばん」対象製品鋼材の使用予定と使用実績の差異確認
 3)「かんばん」対象母材鋼材の使用予定と使用実績の差異確認

上記3点の計画と過去の実績との差異分析を集計結果だけではなく、必要であれば小計レベルまで細かく分析することで、現状と未来の「かんばん」の課題ばかりか、自社および取引先を含めたSCM全体の課題も浮き彫りにすることが可能となります。

次回は10月11日(金)更新の予定です。

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この記事の著者

三由 浩司

株式会社CANVASは 2018年12月、株式会社日本金城印へ事業を移管いたしました。
鉄鋼流通・コイルセンターにおける業務全般(営業・生産・IT)のコンサルタントを中心に製造業全般の提案活動を実施。国内外における複数コイルセンターの標準化システム構築実績有。
株式会社日本金城印

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