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第16回 パッケージソフト導入のツボ
現在の鋼材業界のIT化の状況は、企業により大きな差があります。
これは主に流通機能に重点を置いている企業と流通機能に加え加工・在庫機能を有する企業とでは業務の範囲に違いがあるためです。
そのため同じ鋼材業といっても、業態による機能規模や情報連携の面で必要とされる機能も違い、投資対効果の面からもIT化の推進度合いには大きな違いが発生しています。
加えて最近では、システム化の内容はより複雑となり、以前のような事後処理での情報の更新ではない、よりリアルタイムに近い情報処理が要求されるようになっています。
中でも、国内の流通から加工・在庫機能をカバーする必要がある鋼材加工業(コイルセンター)では、ほとんどの企業で複雑な業務処理を行う業務システムを自社固有の業務に合わせた形で開発し運用しています。
コイルセンターの業務が手作業で行われていた20年以上前から鋼材業に携わってきた私としては、各社固有の業務システムに対する違和感もなく、システム化の進歩に感慨すら覚えていました。
しかし、最近の企業統合や日系企業の海外進出等を考えた場合、オーダーメイドではない既製服の選択(自社固有システムではないパッケージソフトの選択)がなぜ少ないのか改めて考えさせられました。
【パッケージソフトが採用されない理由】
[1]機能自体が不足しすぎ、業務運用に耐えない。
私自身も多くのパッケージソフトを見てきましたが、パッケージソフトにはいろいろな業種を意識しているケースもあり、ソフトによっては自社での運用が合わないケースは多々あります。
[2]自社の業務内容にフィットしているかわからない。
これは選定される側が、自社の課題や運用方法を十分把握できていないため、パッケージの正当な評価ができないケースです。
こういう場合、安易に従来からのシステムの再構築となるケースが多く再構築のメリットもあまり期待できません。
しかし、システム会社は多くの場合に導入検討のツールとして、実際の業務とパッケージとのフィット&ギャップを行うことがあります。
この結果を全面的に受け入れるかどうかは別として、この機会に実務担当者をも巻き込み自社の仕事の棚卸(業務分析)を行い、本当に必要な業務は何か、全体の効率を考えた場合の業務フローの改善はできないのかといった検討を導入の可否に関係なく行うことが重要だと思います。
[3]システム会社の知識・説明不足によるパッケージソフトへの信頼性の欠如。
これは、発注検討をする企業にもシステム会社にもお互いに不幸な結果となります。簡単に事例を挙げて言うと、同じパッケージソフトを導入したにもかかわらず、導入企業によって評価がまったく違うケースです。
評価が高かったシステム会社担当者は、導入当初よりソフトのコンセプト・全体像それに合わせた運用方法の説明を十分に行い、運用上での取り扱いも十分実務担当者と検討でき、正しい評価を受けることができました。
一方評価が低かったシステム会社担当者は、導入企業の対応にも問題はあったものの、おざなりな対応での説明を行ったため、実務担当者が理解不足のまま本番導入となり混乱をきたすことがありました。
[2]や[3]は人的要因であるにもかかわらず、パッケージソフトが採用されない要因となっています。
やはり、パッケージソフト導入のツボはシステム会社と導入企業が汗をかいてお互いのノウハウを本気で出し合うことではないでしょうか。
パッケージだからといって両社がなんの努力もなく導入し効果を出せるほど世の中は甘くないということです。
次回は4月19日(金)更新の予定です。