第21回 銀行員に言ってよいこと、いけないこと

銀行に、自社のことをどこまで言ってよいか?とは、経営者からよく聞かれる質問です。

まず、自社の業績が悪くなった場合。それは、試算表や決算書に現れることでしょう。それを粉飾して良い業績のように見せるわけにはいきません。この場合、実際に悪くなった試算表や決算書は包み隠さずに見せるべきです。

そして銀行は、この悪くなった業績を、経営者はどのように立て直すか、経営者としての手腕を見ています。経営改善計画書を作成して提出し、どのように会社を良くしていくかを銀行に伝えるべきです。

業績が悪くなり、融資が受けられなくなってもおかしくないのに、会社をどう良くしていくか、経営改善計画書を見て、銀行は融資を行うことがよくあります。融資が受けられないのは、経営が不透明だから、そして将来の見通しが見えないからです。

悪くなった時に包み隠さず銀行に相談してくれる社長、そして悪くなったらどのように会社を良くしていくのか、計画を立てられる社長を、銀行員は信用します。

多少業績が悪くなっても、融資は行ってくれることが多いですし、また融資が行えなくても、一方で既存の融資の返済負担が大きい、その返済を減額・猶予するリスケジュールという方法を検討してくれます。

逆に、業績が悪くなったら、決算書や試算表を粉飾して良く見せようとする経営者。そのような企業は、粉飾決算を銀行は見破れず、銀行は融資を行ってしまいます。しかしその融資は企業の赤字補てんに消え、銀行からの借入金はどんどん膨れ上がっていきます。

しかし銀行は、一企業に融資を限界なく行えるわけではありません。やがて粉飾決算でも融資を受けられない時がきます。その時には膨大な借入金が残り、銀行としても手の打ちようがなくなってしまいます。

また、例えばある事業や店舗を撤退する時。これは悪いことのように見えますが、撤退すれば赤字事業や赤字店舗がなくなる、そのような前向きの理由を、部門別損益などの資料も添えて銀行に説明することにより、撤退資金の融資を受けることも可能です。

例えば、株式の後継者への売却などで株価を下げたく、政策的に赤字にした場合、その理由を株価算定や事業承継計画などの資料も添えて銀行に説明することにより、銀行は変わらず融資を行ってくれるでしょう。

なお銀行と、口頭で交渉した記録は、銀行内でとっておかれるものです。

ある時、社長は銀行員に言いました。「これから三ヵ月に一回、試算表を銀行に提出します。」それは銀行内に記録されます。

試算表の内容が悪いからと、社長が忘れたふりをしても、銀行では三ヵ月に一回、この会社から試算表が提出されることが記録されています。

企業側も、銀行とどのような交渉をしてきたか記録をとっておき、約束したことは忠実に守っていくと、銀行からの信用は高くなることでしょう。

銀行員に言うことを気をつけた方がよいこと

一方で、余計なことを言ったばっかりに、銀行から融資が出なくなるケースを時々、目にします。

注意しなければならないことは、経営者や会社が、反社会的勢力と思われてしまうことです。

反社会的勢力とは、暴力や詐欺的手法などを駆使して経済的利益を追求する集団や個人のことを言います。

代表的な反社会的勢力は暴力団ですが、そうでなくても、犯罪歴があったり、犯罪ととらえられかねないことでもめていたりする場合、それが銀行に伝わると、それは銀行内に記録され、今後の融資が受けられなくなってしまいます。

また自分が反社会的勢力でなくても、反社会的勢力と取引していたり、懇意にしていたりすると、銀行は警戒することでしょう。

経営者の中には、自分の武勇伝として余計なことを銀行に言ってしまう人もいます。

例えば、自社が取引先をだまして不当な利益を得たと、取引先から損害賠償を請求されている場合。

この場合、身に覚えがなければ、取引先と争っているというようなことは、わざわざ銀行に伝える必要はありません。

銀行は、一回聞いたことは聞かなかったことにはできないのです。それが上司、支店長に報告され、それが本部にも報告され、融資を受けることは以後、困難となります。

ここまでの話でなくても、昔はやんちゃだったとか、不倫をしているとか、そのような話でも、銀行員や銀行の体質によっては、それを大きくとらえることもあります。そしてその銀行から融資が受けられなくなることがあります。

そして一つの銀行から融資が受けられなくなれば、やがて他の銀行もその事実に気づくため、どの銀行でも融資が受けられなくなる可能性が高いでしょう。

反社会的勢力については、銀行とつきあうためには特に気をつけなければならないことです。

当然ですが、自分や会社が反社会的勢力にならないこと、反社会的勢力とつきあわないこと、そして自らが犯罪をしないことです。

そして、余計なことは銀行に言わないこと。武勇伝を話したがる経営者は特に気を付けなければなりません。

次回は6月16日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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