第7回 リスケジュール中でも新規融資が受けられる

リスケジュール、つまり銀行への毎月の返済を、減額・猶予すること。
このような状態の企業は、新規融資を受けることはできないのが常識でした。

なぜならリスケジュールを行っているということは、業績が悪化して銀行の融資審査が厳しくなり、新規融資を受けることが困難で資金繰りが厳しかったから返済を減額・猶予してもらった、というのが通常の流れであり、そのような企業へ新規融資を銀行が行うことは困難だからです。

また返済が減額・猶予されているということは、その銀行での融資残高がなかなか減っていかないということであり、その中で新規融資による融資残高の増加は銀行として考えられない、というのも理由です。

しかし金融庁は銀行に、リスケジュール中であることを理由として、新規融資を拒んではならない、と指導しています。ただこれは、リスケジュールしていること自体を理由として新規融資を拒んではならない、という意味であり、業績悪化や、返済が進んでいないことを理由として、実際にリスケジュールしている企業は、銀行から新規融資を受けることは困難でした。

しかし最近、リスケジュール中でも新規融資が受けられたケースが増えてきました。

事例を一つ、紹介します。

■A社の事例

 ・年商 5億円

 ・借入金 四つの銀行で1億2,000万円

 ・四つの銀行で、月300万円返済していたものを3年前にリスケジュールして月返済を0円にしていたが、直近では月90万円の返済にまで戻していた。

 ・担保はサブ銀行(A社に対しての融資金額がメイン銀行の次の銀行)にて時価評価6,000万円の不動産。

 このA社が、四つの銀行のうちのメイン銀行で、1億2,000万円・10年返済で全て借り換えして通常返済となり、リスケジュール状態を解消することができました。

 A社は四つの銀行に経営改善計画を提出し、コンサルタントによる指導のもと、経営改善計画の毎月の予算実績管理を徹底して行い、リスケジュール前の利益は赤字であったのが黒字に転換し、着実に利益を増やしていきました。

 また1年ごとにリスケジュールを更新していましたが、事業で稼ぐ利益でキャッシュフローが出ていたことから、直近の更新時には元の返済金額月300万円の3割である月90万円まで、返済金額を戻していました。

 また3か月に1回の、四つの銀行への現状報告も欠かさず行っていました。

 そのような取り組みを続けていた中、借り換えにより通常返済に戻してリスケジュール状態を解消し正常返済に戻す計画を立て、その計画をメイン銀行に相談したところ、サブ銀行に担保として入れている不動産をメイン銀行に担保を移すことを条件に、メイン銀行でプロパー融資(信用保証協会保証付でない融資)で全ての融資を借り換えることに成功し、リスケジュール状態
 を解消することができました。

 このケースは、新規融資を受けられただけではなく、リスケジュール状態を解消し通常返済に戻すことができた、とてもうまくいった事例です。

 通常返済に戻せば、今後は多くの銀行で、新規融資を受けやすくなります。

 このように、経営改善計画を立て、その計画を着実にこなして利益を増やしていき、リスケジュール更新時に返済を少しずつ再開させ、銀行とのコミュニケーションも欠かさなければ、新規融資を受けられることがあるかもしれません。

 新規融資は水ものですので、そこに過度の期待をするのは禁物です。
 しかしリスケジュールは、返済の減額・猶予で資金繰りの時間を稼ぎ、その間に経営改善を行って会社を立て直していくものだという本来の趣旨に立ち返って、やるべきことをしっかりやっていくことが経営者に望まれます。

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 川北 英貴 メールアドレス < info@financial-i.co.jp >

次回は4月15日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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