第6回 銀行は債務者区分であなたの会社への融資スタンスを決める

債務者区分とは、銀行が融資先企業ごとに付けている区分で、企業の財務状況と、融資の返済状況により決められます。
金融庁の金融検査マニュアルに基づき、銀行は融資を出している企業それぞれに、債務者区分を付けます。
なお銀行は、債務者区分とは別に、その区分ごとに銀行独自の信用格付を融資先企業に付けています。
債務者区分は、次の五つの区分に分けられます。

1.正常先
2.要注意先
3.破綻懸念先
4.実質破綻先
5.破綻先

また「2.要注意先」は「その他要注意先」と「要管理先」に分かれています。
債務者区分は、下の区分になるほど、悪い状況の区分ということになります。

この債務者区分により、銀行は、その企業への融資スタンスを大きく変えています。
自分の会社の債務者区分を良い区分にすることが、銀行があなたの会社へ融資を出しやすくするためにとるべき対策の一つとなります。

次にそれぞれの債務者区分の定義を見てみます。

■債務者区分の定義

1.正常先

業況が良好であり、財務内容に特段の問題もなく、延滞もない企業のことです。

2.要注意先

要注意先は、その他要注意先と、要管理先、に分けられます。
要注意先とは、業況不調で財務内容に問題がある、もしくは融資に延滞がある企業のことを言います。
要注意先の中でも、特に融資の全部または一部が要管理債権である企業は要管理先となります。

ちなみに要管理債権とは、3ヶ月以上の延滞となっている融資、もしくは貸出条件緩和債権である融資のことを言います。
貸出条件緩和債権とは、債務者の経営再建または支援を図ることを目的として、金利の減額や免除、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄などを行った融資のことを言います。
要は、3ヶ月以上の延滞、もしくは貸出条件緩和債権にあてはまる融資のことを要管理債権と言い、要管理債権がある企業は要注意先の中の要管理先となり、そうではないが業況不調で、財務内容に問題がある、もしくは融資に延滞がある企業はその他要注意先、となります。

3.破綻懸念先

経営難にあり、改善の状況になく、長期延滞の融資がある企業のことです。

4.実質破綻先

法的・形式的には経営破綻の事実は発生していないが、自主廃業により営業所を廃止しているなど、実質的に営業を行っていないと認められる企業です。

5.破綻先

破産などの法的手続きが開始されていたり、手形の不渡りにより取引停止処分となっている企業のことです。

■実際に銀行はどうやって債務者区分を査定するか

銀行は企業に債務者区分を付けるにあたって、銀行それぞれでマニュアルを作成しており、それにのっとって査定を行っています。
その査定の方法は、企業の財務状況と、融資の返済状況を見るものであり、損益計算書の経常利益もしくは当期利益が赤字になればなるほど、また赤字の年数が連続するほど悪い債務者区分となり、また貸借対照表の純資産がマイナスであればあるほど悪い債務者区分となります。
またこの純資産は、決算書の表面上の数字ではなく、不良資産や実体のない資産を除いた実質の純資産で銀行は査定します。
また融資の延滞状況や返済の減額・猶予状況によっても、債務者区分は査定されます。

■債務者区分により銀行はどう融資スタンスを変えるか

債務者区分がどう付けられているかにより、銀行は融資のスタンスを変えてきます。
要注意先以下になると、新規融資が厳しくなってきます。なお要注意先でも「その他要注意先」と「要管理先」がありますが、その他要注意先であれば正常先に比べて融資は出にくいものの、まだ融資を受けられる可能性はあります。
しかし要管理先であれば、新規融資は困難となります。
破綻懸念先以下も、新規融資は困難です。
なお要管理先・破綻懸念先以下であれば、新規融資は困難だけならまだしも、銀行はできるだけ早く回収しようと考えます。
こう考えると、債務者区分をできるだけ良い区分に保つということは、銀行があなたの会社へ融資を行いやすくする上で、重要なこととなります。

■信用格付とは

銀行は融資先企業に、債務者区分とともに信用格付を付けております。信用格付は債務者区分に連動します。
例えば、ある銀行では、

正常先       1格~6格
その他要注意先 7格・8格
要管理先      9格
破綻懸念先    10格
実質破綻先    11格
破綻先       12格

というように、債務者区分と連動しながら、信用格付が決められます。
この信用格付は、企業の財務状況や、定性の状況(経営者の能力、企業の技術力、販売力など)によって決められます。
また信用格付においても、良い格付になるほど融資は受けやすくなります。
例えば正常先の中でも、良い格付である1格と、悪い格付である6格では、その企業に対して銀行の融資スタンスは異なってきます。
銀行は、融資先企業に対し、下記のように融資のスタンスを決めています。

(取引方針の区分の例)

A.積極推進方針
B.推進方針
C.現状維持方針
D.消極方針
E.取引解消方針

正常先       1・2格 → A.積極推進方針
正常先       3・4格 → B.推進方針
正常先       5・6格 → C.現状維持方針
その他要注意先 7格 → C.現状維持方針
その他要注意先 8格 → D.消極方針
要管理先      9格 → D.消極方針
破綻懸念先    10格 → E.取引解消方針
実質破綻先    11格 → E.取引解消方針
破綻先       12格 → E.取引解消方針

これを見ると、債務者区分を良い区分に保つこと、そして信用格付を良い格付に保つことが重要、ということが分かるでしょう。

■債務者区分を銀行に聞く方法

では、銀行があなたの会社に付けている債務者区分を知るにはどうしたらよいのでしょうか。
もっとも良い方法は、銀行に直接、聞いてみることです。
昔は、債務者区分を銀行は企業に教えたがらないものでした。
なぜなら、債務者区分を正直に言うことで、経営者とトラブルになることをおそれたからです。
例えばあなたの会社が破綻懸念先だとしましょう。あなたが

「私の会社の債務者区分は何でしょう?」

と聞いた場合、銀行員が

「御社は破綻懸念先です。」

と答えたとしましょう。あなたは銀行員から破綻懸念先と言われ、どんな気分でしょうか。
気が短い経営者でしたら、銀行員をどなりつけるかもしれません。
このようにトラブルになりかねないため、銀行員は債務者区分を言いたがらないものでした。
しかし今は、銀行が金融庁から、企業に対しコンサルティング機能を発揮するように言われており、債務者区分を企業に伝え、企業に現状をしっかり認識してもらう考えが浸透しつつあります。
債務者区分を銀行から聞くには、次のように銀行に言ってみます。

「私の会社の債務者区分を教えてください。破綻懸念先だったらそれでかまいません。現状をしっかり認識し、今後は少しでも良い債務者区分になれるよう、経営努力をしていきますので。」

こう言われたら、銀行員も債務者区分を伝えやすいでしょう。
なお、銀行ごとに、あなたの債務者区分は異なることがあります。
債務者区分は、銀行ごとに、決めているのです。 A銀行では正常先、B銀行ではその他要注意先、ということもありうるわけです。
債務者区分は、銀行ごとに聞いていくようにしてください。
そして現状の債務者区分を知ったら、一つでも良い債務者区分になるにはどうしたらよいか、銀行にアドバイスを求めてみるとよいでしょう。
このようにして債務者区分を良くし、銀行から融資を受けやすいようにしていってください。

次回は年3月18日(火)更新予定です。

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