第11回 銀行は融資を実行した後の資金の動きを見ている

銀行には「実効金利」という考え方があります。例えば5,000万円の融資がある場合、金利1.8%では1年間の支払利息は90万円ですが(その期間の返済はないものとして)、同じ5,000万円の融資を受けている企業でも預金残高が0円の企業と、2,000万円の企業とでは、銀行がその企業からどれだけの収益があるかが違ってきます。

5,000万円の融資を受けていて、一方で預金が2,000万円の企業であれば、実質的に銀行から融資を受けている金額は

融資額5,000万円-預金額2,000万円=実質融資額3,000万円

となりますから、実質3,000万円の融資に対して90万円の利息であると、預金による利息は0円として、実効金利は

利息90万円÷実質融資額3,000万円=3%

と計算され、3%が実効金利、となります。

この例では、融資が5,000万円の企業において、一方で預金が0円の企業であれば実効金利は1.8%ですが、預金を2,000万円置いている企業であれば実効金利は3.0%となるのです。こう考えると、銀行としては、融資を5,000万円実行したらできるだけ長い期間その資金を使わずに多くを預金として置いておいてくれる企業の方を好ましく思うことが分かります。

融資を受けたら資金をすぐに他の銀行に移す企業がありますが、そのような企業のことを銀行はあまり好ましく思いません。

なお、融資実行後すぐに資金を他の銀行に移すのであれば、移した先の銀行の方が、融資を出した銀行より企業においての優先順位が上である、という見方も銀行はしがちなので、融資を出した銀行としてはそのような企業を好ましく思わないというのもあります。

銀行は各融資先企業において、融資金額だけでなく、預金金額の推移も毎日チェックしているものです。

私は銀行員時代、担当している企業の預金残高がいくらであるか、毎日チェックするように、上司から言われていました。

支店には、本部から毎日、それぞれの融資先企業の預金残高がいくらであるかが分かる資料が送られてきました。その資料を見て、融資を実行した企業がすぐに他の銀行へ資金を移動させたことがわかると、私は上司から理由を聞かれるのです。そのため私は、上司から資金移動の理由を聞かれる前に、その企業に電話してすぐに資金移動した理由を聞かなければなりませんでした。

このように、銀行は融資を実行した後、その資金の動きを見ているものです。
そのため企業としては、一気に資金を他の銀行に移すのではなく、仕入代金や経費の支払いなどで資金を少しずつ使うようにするなど、融資で受けた資金をどのように流出させていくのか、銀行と良いつきあいをする上でたえず考えておかなければなりません。

次回は8月26日(火)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社グラティチュード・トゥーユー 代表取締役

川北 英貴

株式会社グラティチュード・トゥーユー代表取締役。資金繰り改善コンサルタント。1974年、愛知県東海市生まれ。早稲田大学法学部卒業後、97年、大垣共立銀行入行、主に中小企業向け融資業務を行う。同行を退職後、2004年に株式会社フィナンシャル・インスティチュートを設立。代表を退いた後、2016年、株式会社グラティチュード・トゥーユー設立。中小企業向けに資金繰り改善・経営改善のコンサルティングを行う。著者は『絶対にカネ詰まりを起こさな い!資金繰りの教科書』他、合計11冊。
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