第146回 日常使う言葉が組織風土にも影響することがあるという話

どんな場面でどんな言葉を使うかということは、組織やチームを束ねていく中ではとても重要な部分であり、さまざまな分野で優秀とされるリーダー、マネージャーたちはこの点にとても気を遣っています。

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日常使う言葉が組織風土にも影響することがあるという話

以前、某プロ野球チームの監督が選手への禁止事項として決めた中にあった「禁止語」が話題になったことがありました。行き過ぎた茶髪やひげなどの身なり、試合中のガムやツバ吐きなどの不快に見える行動と合わせて、「できません」や「分かりません」といったネガティブな言葉が禁止だったといいます。
ちなみにファンの間では、特に「分かりません」の禁止が妥当なのか、あまり納得できなかったり効果自体を疑問視したりする人もいたようです。このあたりはチーム事情や監督の考えを確認できませんし、その良し悪しは何とも言いようがありません。こういった言葉のとらえ方は、人によって違いがあるものです。

ただ、私の経験と共通するのは、組織やチームを束ねる中で、どんな場面でどんな言葉を使うかということは、実はとても重要な部分であり、さまざまな分野で優秀とされるリーダーたちは、この点にかなり気を遣っているということです。

日常にあるさまざまな呼び方の違いにある価値観

私の身近であった例を紹介します。社内の役職呼称を「○○マネージャー」と横文字表現をしていた会社が、「課長」「部長」などの一般的な呼び方に変更したことがありました。
どちらかというと最近の流れに逆行するように見えますが、変更した理由は「○○マネージャー」というと、どうしても現場に近いフラットな立場をイメージしてしまいがちで、その人たちの責任感が希薄になったり、リーダーシップが低下したりという様子があったからだそうです。あえて権威が強いイメージの言葉で自覚を持たせるために「課長」「部長」と呼ぶようにしたとのことでした。

他にも各社の人事評価制度については、会社によって日常的な呼び方に違いがあり、大きく分けて「評価」「考課」「査定」の三通りの呼び方が見られます。それぞれの言葉のニュアンスを調べたところでは、「評価」は広い意味でいろいろなものの価値判断をすること、「考課」は主に勤務成績上の“優劣”を決めること、「査定」は金額や合否など、もう少し白黒はっきり決めること、ということです。

この三つの呼び方が、それぞれの会社でそれぞれ使われていますが、ニュアンスの違いはそれほど意識されていなかったり、当事者は同じような意味で使っていたりすることが多いようです。しかし、言葉が違えば厳密な意味は違い、それぞれの言葉の持つニュアンスが実際に制度を運用する中にも表れてくる部分があります。
例えば「評価」と言っている会社では、その結果を育成面で活用する意識が強かったりするのに対し、「査定」と言っている会社では、給与や賞与の金額を決めることが中心で、それ以外の用途はあまり意識されていなかったりします。

このように社内で一般的に使っている言葉や何気なく使っている言葉は、実はその会社の組織風土や雰囲気、組織運用の方法など、さまざまなものを象徴的に表します。よく使われる言葉が、そこに属する人たちの心理や価値観を無意識のうちに表現しているのです。

言葉のニュアンスは周りの雰囲気に影響を与える

こんなことを逆手にとって、組織改革の一環として、「日常使っている言葉を変える」という方法をとることがあります。企業理念や社内制度での用語を変え、社長や上司がスピーチや訓示、会議などで使う言葉を変えます。
少し前に注目された「ネガポジ変換(ネガティブな物事をポジティブな視点で見直す)」でも、例えば「おせっかい」→「面倒見が良い」など、前向きなニュアンスの言葉への言い換えが取り上げられています。

もしも自分の会社、属している部門やチームの中で、良くない雰囲気や好ましくない行動が見受けられたとしたら、その周辺で使われている言葉を見直してみると、意外に効果があるかもしれません。日常何気なく使っている言葉のニュアンスやイメージが、組織風土やチームの雰囲気に影響していることは、意外に多いはずです。

次回は11月25日(火)の更新予定です。

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この記事の著者

ユニティ・サポート 代表

小笠原 隆夫

IT業界の企業人事出身の人事コンサルタント。 2007年に独立し、以降システム開発のSE経験と豊富な人事実務経験を背景に、社風や一体感など組織が持っているムードを的確に捉えることを得意とし、自律・自発・自責の切り口で、組織風土を見据えた人事制度作り、採用活動支援、人材育成、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務を専門的に支援するなど、人事や組織の課題解決、改善に向けたコンサルティングを様々な規模の企業に対して行っている。
上から目線のコンサルティングではなく、パートナー、サポーターとして、顧客と協働することを信条とする。
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