第44回 ソフトウェア品質の品質測定2

独立行政法人情報処理推進機構(略称IPA)が“つながる世界のソフトウェア品質モデル”として国際標準規格「SQuaRE」を共通言語とすることは何度も書きました。第37回で少し書きましたが具体的な取り組みがあったので今回加筆しました。

ソフトウェア品質の品質測定2

独立行政法人情報処理推進機構(略称IPA)が“つながる世界のソフトウェア品質モデル”として国際標準規格「SQuaRE」を共通言語とすることは何度も書きました。
このシリーズの中でISO / IEC 2502nが品質測定の規格で昨年25022および25023が利用時の品質およびソフトウェア製品の品質測定量として定義されました。

第37回で少し書きましたが具体的な取り組みがあったので今回加筆します。

第37回 ソフトウェア品質の測定

国内では早稲田大学グローバルソフトウェアエンジニアリング研究所の鷲崎研究室が、このSQuaREシリーズをベースとして調査研究を行いました。テーマは「ソフトウェア製品群の測定評価と分析による製品品質の実態定量化および総合的品質評価枠組みの確立」です。なんとも長くて分かりにくい表現ですが、ソフトウェアにもいろいろな分野があります。会計のシステム、建設用の計算ソフト、Web作成の支援ツール等々利用目的別にたくさんの製品があります。これを群として分類します。できれば群ごとに複数製品があれば良いのですが、協力できる製品が少なく苦労したようです。研究は群ごとに外部品質、内部品質の測定方法の確立から入りました。測定の単位はこれまでお話しした品質特性もしくは副特性となります。例えば、ソフトウェア製品を一定の条件で運用して不具合の件数をカウントします。計算式は運用していた総時間もしくは入力件数/不具合時間もしくは件数となります。これを平均故障時間もしくは平均不具合件数とします。故障や不具合ですから品質特性としては信頼性や使用性となり、副特性としては成熟性となります。
このように一定の条件を決めて測定し、その測定値を品質特性に紐付けて複数の観点で比較することで品質を判断します。利用時の品質でしたら、複数の人に同条件で操作してもらい停止した機能や時間を測定して分析することも可能です。

一方では実際にソフトウェアを動作しないで検証測定する手法があります。仕様書と照合や項目チェックを行い、整合性の取れていない項目をカウントします。または、画面遷移のレビューを行い設計どおり動くかをチェックします。テスト結果がある場合は、設計時の目標値と比較して達成率をカウントすることも可能です。これにより当初の目的、意図とした性能が達成できているか分析でき、製品の妥当性確認ができると考えられます。

これまで利用時の品質を測定することは難しいと考えられていました。しかし今回の規格で代表的な測定方法が紹介されています。作業目標を設定し、正しく満たして完了できた割合を測定する方法です。誤操作を起こす頻度、正しく作業を完了できる時間や、学習効果で短縮されていく作業効率性の時間変化を測定します。利用者が作業を行うためにシステムを操作している時間や運用期間中の設定した項目の一定時間を測定します。これらを品質特性と組み合わせて分析します。この手法はソフトウェアに限らず家電や工場の機械の操作性等々、何でも活用が可能と考えられます。作業時間を測定するとか、故障時間を測定することで利用時の品質を測定できます。「使いづらいなあ、この製品」こんな声が聞こえたら、感覚だけでなく数値化して示せる手法があることだけ覚えてください。

次回は5月25日(木)更新予定です。

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この記事の著者

日本ナレッジ株式会社 代表取締役社長

藤井 洋一

1957年生まれ。大学卒業後、金融機関を経て27歳で創業。業種に特化したパッケージソフトウェア開発を中心にビジネス展開し、2005年からソフトウェアの品質向上の手法として、第三者検証の有効性と必要性を説き事業化。
一般社団法人 IT検証産業協会 会長
一般社団法人 コンピュータソフトウェア協会 理事兼PSQ品質基準委員会 委員長
著書:
「スポーツでの映像システム活用法」 日本文化出版
「IT検証技術者認定試験 知識試験テキスト」 BCN
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