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第5回 ついにあと1年!利用開始が迫るマイナンバー制度で企業は何をするべきか!?
マイナンバー制度の利用開始(2016年1月)まで、ついにあと1年を切りました。この制度の開始により、行政だけでなく民間企業でもさまざまな対応が必要となります。しかし、その制度自体の認識が乏しく、対策が遅れている企業も少なくありません。今回は、最新の動向と対策のポイントをお伝えします。
◆ マイナンバー対応、7割の企業が「まだ始めていない」…
マイナンバー制度は、2015年10月に国民への個人番号の通知、2016年1月に個人番号の利用開始、2017年1月には国機関での情報連携が開始されます。企業がこれらに合わせて対応するには、2015年12月までにはシステムの整備を完了させ、年末には漏れがないかどうかチェックできる段取りが必要になります。
しかし、アイ・キューの調査によれば企業の認識はいまだに乏しく、「まだ準備を始めていない」という企業が69.6%と全体の約7割を占めています(2014年9月時点)。また、ノークリサーチの調査では「内容を理解しており、自社で対応すべき事項も全て把握している」とした企業はわずか18.0%にとどまり、各民間企業での対応の遅れが目立ちます。未対応の企業は、一日でも早い検討と対策が必要です。
◆ 全ての企業が対象に!求められる対応とは?
まず、2016年1月以降、全ての企業が社会保障や税の手続きにおいてマイナンバー制度に対応することが義務付けられます。つまり、マイナンバー無しでは各種行政手続きができなくなるのです。(具体的には後述の≪ワンポイント解説≫に記載)。
また、企業は全ての従業員とその家族のマイナンバーの情報を収集・管理する必要が出てきます。収集したマイナンバーは管理面でさまざまな厳しい規則に従う必要があり、例えば、個人番号利用事務等に従事する者が正当な理由なく、特定個人情報ファイルを提供する場合は「4年以下の懲役 若しくは200万円以下の罰金、またはその両方」が本人と企業との両方に科せられてしまう可能性があります。
そのため、各企業は全社員にこの制度の周知徹底・意識付けを行い、かつ取り扱いルールを決めていくことがまずは求められます。その上で、マイナンバー対応、およびセキュリティ的にもしっかりした「人事・給与管理システム」や、そもそもの個人情報管理体制や環境の仕組み作りが必要となってきます。マイナンバーに限らず、基幹業務システムは機密情報の宝庫です。流出を防ぐためにも、PCやサーバー、ネットワーク環境など、社内のセキュリティ対策がどこまで整備されているのか、この機会に再点検してみてはいかがでしょうか。
≪ワンポイント解説≫ ~ 今さら聞けない、マイナンバー制度とその影響 ~
マイナンバー制度とは、「社会保障・税番号制度」と呼ばれるもので、日本国民と日本に滞在する外国人に対して、一人一人重複しない固有の「番号(=マイナンバー)」を振り、複数の機関に存在する個人の情報を紐付け、各機関の間で情報連携を可能とする制度になります。具体的には住民票に記載される12桁の数字です。
2016年1月の利用開始以降は、社会保障、税、災害対策の行政手続でマイナンバーが必要になるため、「年金・雇用保険・医療保険の手続」「生活保護・児童手当・その他福祉の給付」「確定申告などの税の手続」などにおいて、マイナンバー無しでは手続きができなくなってしまうのです。