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第44回 運送業の労務管理のデジタル化~(9)2024年問題のシミュレーション
前回のコラムでは、「運行指示書」についてお話ししました。2024年問題をはじめとした運送業の労務問題に対応していくためには、計画を立て、それを守っていくことが重要です。今回は、運送業が行うべき2024年問題のシミュレーションについてお話しします。
運送業の労務管理のデジタル化~(9)2024年問題のシミュレーション
前回のコラムでは、「運行指示書」についてお話ししました。2024年問題をはじめとした運送業の労務問題に対応していくためには、年間や月間の拘束時間などの計画を立て、それを守っていくことがとても重要になってきます。それをより確実にしていくためには、日ごとの運行指示がしっかりとしたものになっているかどうかがキーになるでしょう。これがドライバー任せでは、できない人はすぐに運行停止になってしまいます。「大まかな計画」と「明確な指示」これが大事かと思います。
さて本日は、いよいよ一年を切った働き方改革関連法の実施に向けて、運送業が行うべきシミュレーションについてお話しします。
運送業への働き方改革関連法は2024年4月1日より施行、ということは?
運送業の働き方改革関連法の実施で注視すべき項目は、年間の残業時間が上限960時間に設定されることです。重ねてですが、年間の残業時間です。ということは、実際一年間を通して試行錯誤することができる最終ラウンドは、本年度限りということになります。
今月4月1日から正規の残業時間計算を行い、実際に960時間に収まるのかどうかを検証しなければいけません。やってみないと分からない、ができる最終ラウンドということですね。
ほとんどの運送事業者が残業時間の定義について勘違いをしているケースがあります。よくあるのは、
- 「残業代は○○手当として払っているから大丈夫」
- 「拘束時間は『出庫』してから『帰庫』するまでの間でちゃんと計算しているよ」
などです。両方アウトです。
残業代は時間×単価として支払わないと残業代を支払っていることになりません。その計算には必ず「出勤時間」(出庫ではない)と「退勤時間」(帰庫ではない)の時間について休憩時間を差し引いたものが労働時間になり、そこから法定労働時間である8時間を差し引いたものが残業時間になります。この計算式以外に当てはめるものはありません。
この計算式が適用されている企業は、今年が検証期間になりますが、できていない企業は早急にこれを決めなければいけません。急ぎましょう!
年間残業時間960時間=月間80時間×12カ月ではない
前述したように2024年問題・働き方改革関連法は、残業時間960時間が注視されています。長距離運行を行っている企業はおおむね月間100時間オーバーのケースが多いようですから、年間換算で1,200時間となり簡単にオーバーしてしまいます。
関連して、「960時間を12カ月で割ると、月あたり80時間だから、それ以内に抑えればいいのだな」といったような会話がよく行われますが、実は月間の残業時間の上限はありません。むしろ80時間上限という考え方をしてしまうと営業日数の多い6月は残業が多くなり、1月は少なくなるということになります。それでは年間の考え方にはなりません。よって80時間を超える月があることを前提として、月間の残業許容カレンダーを作る必要があります。
4月 | 5月 | 6月 | 7月 |
---|---|---|---|
77h(22日) | 77h(22日) | 90h(26日) | 80h(23日) |
8月 | 9月 | 10月 | 11月 |
---|---|---|---|
77h(22日) | 80h(23日) | 83h(24日) | 83h(24日) |
12月 | 1月 | 2月 | 3月 |
---|---|---|---|
80h(23日) | 73h(21日) | 80h(23日) | 80h(23日) |
土曜日は月に2日出勤することとして、残業960時間を年間で配分してみると上記のような表になりました。だんだん現実に近づいてきましたね。もちろん各社、出勤日数も違えば週40時間労働の考え方も入ると日数と残業時間の考え方はもう少し複雑化しますが、基本的な考え方としては月ごとに残業時間は変わるはずだということです。
2023年度はこのようなシミュレーションを実績と合わせて考えながら行っていく必要があります。
面倒なことだからこそ、しっかりとやっている企業は生き残ります。ぜひやってみてください。
次回は4月21日(金)更新予定です。