第101回 2026年の運送業~記録があるだけでは足りない時代へ~

前回のコラムでは、「2024年問題とその後の対応~運送会社が取るべきステップ~」というテーマを取り上げました。今回は、今後2~3年の間に運送業界が対応を迫られる、いわゆる「2026年対応」について解説します。

2026年の運送業~記録があるだけでは足りない時代へ~

前回のコラムでは、「2024年問題とその後の対応~運送会社が取るべきステップ~」というテーマを取り上げました。まとめとして自社の状況をご確認いただけると幸いです。今回は、今後2~3年の間に運送業界が対応を迫られる、いわゆる「2026年対応」について解説します(毎年いろいろありますね)。

厳しくなることが予想できる「電子帳簿保存法」

一言でいえば、紙やExcelによる業務記録が証拠として機能しなくなるリスクのことです。
具体的には、

  • 電子帳簿保存法におけるデジタル保存要件の厳格化
  • 点呼簿・整備記録・勤怠・日報など、監査対象資料の電子化の普及
  • 労働基準監督署・運輸支局による即時提示・改ざん不可・検索可能の要求強化

つまり、「書いてある」「保存してある」だけでは不十分で、それが本当に正しい記録かどうかを証明できるかが問われる時代に入るのです。

今、運送業の現場で起きていること

既に一部ではこうした兆候が表れています。

  • Excel管理の日報が、「改ざん可能」であるとして証拠として否認された事例
  • 点呼簿に手書きで記録したものの、担当者印がなく「未記録扱い」となった例
  • 勤怠ソフトのログ提出を求められたが、紙タイムカードしかなく差し戻しされたケース

これらは全て「記録はあるが、監査基準を満たせていない」ことが原因です。

監査・処分基準は「技術基準ベース」に移っている

従来、運送業の監査は「実施したかどうか」の確認でした。しかし、今は実施の証明=記録の証明性(技術的要件)が求められます。
例えば、

要件
具体的な内容
原本性
改ざん・削除されていないことが保証される記録形式
即時提示性
監査時に数分から数時間以内に提出できる状態
検索性
運転者名・日付・運行番号などで素早く抽出できる仕組み

このような要件を技術的に満たせる仕組みでなければ、記録として認められにくいというのが、これからの標準です。

2025年度中の対応が最後のタイミング

2026年問題と呼ばれるのは、「法令施行そのもの」ではなく、業界監査水準と実務との乖離(かいり)が限界を迎えるタイミングであるためです。

  • 現在はまだ紙管理でも実質黙認されている企業が多い
  • しかし、2025年度中に体制整備を始めないと2026年の監査対応に間に合わない
  • 帳票の種類が多く、関係者(運転者・点呼者・配車・整備・経理)も多岐にわたるため、移行には時間がかかる

つまり、1年前に始めても遅いのが今回の本質です。

まとめ~2026年は「デジタル化の最終猶予」

これまでの数年、運送業界では「デジタル化しましょう」という言葉が繰り返されてきました。しかし、今後は「デジタルでなければ違反」という段階に入っていきます。

  • 記録はある。しかし証拠にならない。
  • 管理はしている。しかし監査では通らない。

こうした状態にならないよう、今後2年間で準備することが全ての運送会社に共通する課題です。

次回は10月10日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社AppLogi 代表取締役

廣田 幹浩

国内大手コンサルティング会社SCM&ロジスティクスソリューショングループ グループマネージャー職を経て現職。300社を超える荷主向け物流効率化、数100社超の運輸・配送関連経営コンサルティングの実績をベースとして、2018年に株式会社AppLogiを設立。最新の運輸・配送関連クラウドアプリケーションを提供する。
株式会社AppLogi

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