第163回 配車の「技術+品格=実力」

安全担当者は「安全=守備」の業務ですが、配車担当者は「商売=攻撃」という成果が求められる業務を担う、いわば運送会社の番頭格であり、今も昔も花形職です。

配車の「技術+品格=実力」

安全を担う運行管理者ではなく商売を担う配車担当者向けの研修内容では、たとえば計画通りの運行を目指すバス会社向けのものではなく、計画を立てる旅行代理店向けに近い内容です。

安全を軽視するのではなく、交通事故防止にもつながる配車ミス(行き違いや連絡漏れ)の防止や、長時間運行による運行ロスの削減を目的としています。

配車担当者にお悩み事やお困り事がないか聞いてみると、「配車内容へのドライバーからの反発」が挙がることがあります。

ドライバーは一人で過ごす時間が長い分、狭義の判断に陥りやすい面も否めません。

「自分だけ割に合わない仕事をしている」と悲観されないように、翌日の配車表を掲示してほかの人の運行も見てもらうこともドライバーのストレスをためない方法の一つです。

それでも人は必ず愚痴を言うものであり、自身の言い分を誰かに聞いてほしいものです。

少し荒っぽく聞こえるかもしれませんが、私の配車担当経験から「愚痴を聞くことも想定内」と考えることで、自身が落ち込まずに済むともお伝えしています。

同時刻に退社する同僚とは居酒屋に寄って「酔って愚痴を吐いて帰る」こともできますが、退社時間がまちまちで、車通勤が多く翌朝にも運行が控えているドライバーには、そういったストレスの発散や解消の方法が取れません。

配車担当者がカウンター席の代わりにカウンター越しに「話を聞く時間」を設定することで、ドライバーの事故防止や離職防止にも貢献できます。
また、収受運賃が思うように上昇しない現況において、運送会社がお客様からの受注により頂くものは売り上げのみであり、利益は社内で生み出すものと考えましょう。

安価な仕事でも利益を生み出せる努力と工夫の方法は、以下の3点です。

  1. 交通事故や貨物事故を防止して会社の原価を下げましょう。
    誰かのミスは全員のロスになるので、個々人がよく確認をして仕事のミスを削減しましょう。
  2. 積み合わせにより1運行当たりの単価を上げましょう。
    単純な貸切便は常に受け身であり、1車単位の貸切市況は以降も好転しないと想定されます。顧客ニーズを知り融通配車の可能性を探りながら、積み合わせ輸送で付加価値を創造しましょう。
  3. 時間の交渉により効率を上げましょう。
    交渉を優位に進めるためにも、配車担当者の機転とドライバーの品質を上げましょう。

運送会社の経営者と交わす配車談義での、配車担当者が考える「仕事とトラックをあてがう配車」と、経営者が期待する「売り上げと利益を上げる配車」には視野の違いがあります。

「あてがう配車」は今日と明日の配車のみを重視して、「上げる配車」は来週や今月や来月の貨物動向も視野に入れています。

「仕事とトラックをあてがう配車」と「仕事とトラックを集める配車」は違います。

さらに配車担当者への信頼が高まれば「集める配車」から「集まる配車」に進化します。

時期や履歴から新たな受注を予測して、現時点での受注を「先に確定させる」や「あえて先延ばしにする」ことを決断するのも「配車の技術」です。

求車や求貨の情報をWeb上で求めたり、そのネットワーク機能でビジネスが完結したりする時代です。

しかしながら「便利なものは危ないもの」であり、その特長の裏側に想定されるトラブル事例とその対策を事前に把握しておきましょう。

仲間内での仕事とは異なりWebのネットワークを用いたビジネスでは、融通やあうんの呼吸ではなく不特定多数の運送会社との取引が円滑に進むよう、的確な情報(依頼)の発信が求められます。

荷待ち時間への対処においては、接車時間の指示だけでなく出発予定時間も把握して伝達すること。

受発注行為においては文章に数字を入れて説明や確認をする方法など、年末の繁忙期においても「配車の品格」をマナーからルールに変えて取り組みましょう。

繁忙期は普段以上に「配車の実力」をいかんなく発揮できる期間です。

今もこれからも。

商売を担う配車担当者は運送会社の番頭格であり、運送会社の花形職です。

ありがとうございました。

次回は12月27日(金)更新予定です。

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この記事の著者

株式会社プロデキューブ 代表取締役

高柳 勝二

運送会社の管理者育成と安全教育をサポートしている株式会社プロデキューブの代表取締役。
前職は中堅運送会社にドライバーとして入社し18年間勤務。
安全管理・品質管理・開発営業などの実務経験が豊富な物流インストラクター。
現在ではドライバーの交通事故防止による利益確保と輸送品質の向上による単価の向上で得た原資によって、働き方改革を実現するまでを事業領域として、現場を親身にサポートしている。
中小運送会社からの依頼が多い“提案型”研修は、受講されたドライバーや管理者からの「おもしろい・眠くならない・わかりやすい」との評判が口コミで広がり、各社内で開催される社員研修の外部講師として全国45都道府県で講演。
また、全日本トラック協会主催の「全国トラック運送事業者大会」における交通安全対策推進の分科会で、7年連続コーディネータを担当(2013年札幌開催:2014年福岡開催:2015年金沢開催:2016年度米子開催:2017年仙台開催:2018年高松開催:2019年千葉開催)。
2013年度:全日本トラック協会「トラック運送事業における運行管理者のあり方研究会」委員
2015年度:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会ワーキンググループ」委員
2016年度:「貸切バス運転者に対して行う指導及び監督の改正検討ワーキンググループ」委員
2016年度より現在:国土交通省「自動車運送事業に係る交通事故対策検討会」委員
2017年度より現在:熊本県トラック協会 専門アドバイザー(企業経営・労務管理)
各都道府県のトラック協会や青年部会、支部や協同組合単位での各研修会で講演多数。
プロデキューブ
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