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第145回 安全のプロを目指して
交通ルールを守らなくても周囲が安全な状態であれば事故にはなりにくいものです。同様に、交通ルールを守らなくても周囲に警察官がいなければ違反にはなりません。しかし誰かがルールを守らずに失敗すると、全員に新たなルールが増えてしまいます。事故を起こさない前に、ルールを守ることは自身で完結できる努力です。
安全のプロを目指して
交通ルールを守らなくても周囲が安全な状態であれば事故にはなりにくいものです。
同様に、交通ルールを守らなくても周囲に警察官がいなければ違反にはなりません。
事故にならず違反にならずの状態を「ラッキー」と思っていると、その期間が長ければ長いほど、自身が「危ないことや悪いこと」をやっているとの自覚が薄れます。
その期間の長さに応じて、次は大きな事故や違反を起こしてしまう可能性が高まります。
ルールを守らない状態は、ヒヤリハット状態の前段階と位置付けることもできます。
事故を起こさない前に、ルールを守ることは自身で完結できる努力です。
誰かがルールを守らずに失敗すると、全員に新たなルールが増えてしまいます。
確認を含むひと手間は面倒に感じることもありますが、仕事とは面倒な行動を繰り返す時間といえます。
運転中は、認知・判断・操作・確認の繰り返し。
荷役中は、挨拶・会話・作業・確認の繰り返し。
「決めたことを忙しいときでも実践できる習慣」に向けた努力の結果は、繁忙期に表れます。
手順を守るか手間を省くかの判断には「ルールと教育と評価」が影響していると思います。
ではドライバーが何をすれば「良い評価=高い給料」を得られるのか。
長距離の量で売り上げを稼ぐ運送会社と、地場の効率で利益を稼ぐ運送会社には、ドライバーが「何をすれば給料が上がるのか」に違いがあるようです。
「積載貨物の重さ×走行距離の長さ」により給料が決まるのならば、多くのドライバーが「大きな車両で長距離運行」に従事したいと考えるでしょう。
しかしながら、同じドライバー職でも担当する運行形態により、事故発生傾向に違いがあることを、事前に教育しなければなりません。
共同配送は、配達件数に比例して、商品事故やバック事故を含む“事故件数”が多い。
地場配送は、運行経路に比例して、交差点事故を含む“人身事故”が多い。
長距離輸送は、走行距離に比例して、追突事故を含む“重大事故”が多い。
教育するためには、それぞれの事故を防止するためのルールを事前に決めなければなりません。
職業ドライバーと称されるレーシングドライバーとトラックドライバーには、当然ながら仕事の環境の違いにより「ルールと教育と評価」に違いが生じます。
プロが集まって猛スピードで疾走するサーキットコースと、歩行者や対向車の存在する一般公道との危険の違い。
速さを求められるレースと、安全を最優先する運送の違い。
装着するタイヤに求める性能も「より速く走れる」と「より正しく停まれる」との違いがあります。
走り方を重視するレーシングドライバーは、速く走るのが仕事です。
停まり方を重視するトラックドライバーは、無事に届けるのが仕事です。
共通点として、どちらもプロでなければ就いてはならない職業です。
トラックドライバーとして。
速さを競う「運転のプロ」ではなく、事故を起こさない「安全のプロ」を目指しましょう。
最後に。
私たちが得意なトラックと、運転したことがないバスの比較をしましょう。
運送会社とバス会社では、仕事で使う車種や言葉に違いはあれども。
車両の先頭で運転しているのは、愛すべき社員であることには変わりなく。
その社員を守ろうとすることで、結果的に貨物も旅客も守れることは「安全のプロ」を目指す理由の共通点です。
ありがとうございました。
次回は4月5日(金)更新予定です。
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