ITとビジネスの専門家によるコラム。経営、業種・業界、さまざまな切り口で、現場に生きる情報をお届けします。
第157回 管理の死角
事故やミスを起こさないために、人が「考える・決める・守る」のがルールであり、また事故に至らずとも、ルールを守らなかった時点で指導をするのが「事故防止の指導」です。その状況が視界に入っていながらも、事故が起こるまで指導をしないのは安全の盲点であり「管理の死角」といえます。
管理の死角
職場において改善以上の改革を進めると、その効果への期待から喜ばれる一方で、その内容により誰かの否定や一部の人から反発を受けることも想定されます。
そのようなときにも改革の実行をためらうのではなく。
今は意見が違う人からも理解や協力を得られるために。
実行を前提に、正しく伝えられる方法を選択します。
会社で決めたルールとは、全ての管理者が同様に「伝える・確認する・評価する」ことにより、全てのドライバーが守れるようになるものです。
ルールを守らないドライバーに対して、特定の上司しか口うるさくなっていない状態では、「会社が言っている」のではなく「あの人が言っている」との受け取り方が生じることで、その人の前でしかルールを履行しなくなるドライバーも散見されます。
ドライバー不足の背景も鑑みて、指摘や指導をためらって「いい上司」に思われようとすると、ドライバーからは「どうでもいい上司」として認識されます。
関心以上の愛情の表現として指摘や指導を続ける管理者の姿は、ドライバーには「嫌がられる」かもしれませんが、全力で向き合えば「嫌われる」ことはないものです。
逆に、しつこく指摘をするときとあっさり放置する場合がある「ムラがある上司」は付き合いにくく、ドライバーから一番「嫌われる」上司の姿かもしれません。
まずは指摘をするときとしないときがないように「個人のムラ」をなくすこと。
次に全員が同じ指導ができるように「管理者のムラ」をなくすこと。
その「ムラ」の原因である「できない」のと「やらない」には大きな違いがあります
継続していつもやらなければ、結果としていつまでもできないことがあります。
会社がやるべきことは、法律を守って社員を守ろうとすること。
社員がやるべきことは、ルールを守って仕事を守ろうとすること。
全員がやろうとすることで、やろうとしない人がよくない人との見方が強まります。
また、できない人もできるように、できた人から「一緒にやろう」と会話も生まれます。
一人で決めても「誰も見ていないから」と、すぐに崩してしまう決意もあります。
全員で決めて全員が一人を応援したり、一人が全員から刺激を受けたりすることで、全員ができるようになります。
全員が何となくでもできている簡単なことに、あえてルールを付けることから始めてみましょう。
一人で「できた!」との成功体験や、全員が「できた!」との達成経験から得られることもあります。
法律を守ろうとする改革よりも、法律未満のルールを守るための改善の方が、すぐに取り組みやすいものです。
法律とは「会社として守るもの」が多く、法律を守れていても「当たり前(プラスマイナスゼロ)の評価」であり、できていなければ「マイナスの評価」です。
「社員として守るもの」には仕事のルールが多く、仕事のミスによる時間のロスを抑止すれば「プラスの評価」を得ることができます。
ミスは人が起こすものであるが故、人にしか防げないものです。
事故やミスを起こさないために、人が「考える・決める・守る」のがルールです。
事故には至っていなくても、ルールを守らなかった時点で指導をするのが「事故防止の指導」です。
事故後の指導のみでは「事故待ちの指導」といえます。
管理者が指導すべき行動を見逃していることと同じく。
その状況が視界に入っていながらも、事故が起こるまで指導をしないのは安全の盲点であり「管理の死角」といえます。
ありがとうございました。
次回は10月4日(金)更新予定です。
前の記事を読む
次の記事を読む