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第80回 “地位”の向上について
運送会社が主催される社員向け研修だけでなく、荷主企業が開催される運送協力会社向けの研修でも、講師を担当しています。
その研修で、参加している運送会社の聴く姿勢が良くない場合には「誰が注意すべきでしょうか?」
荷主企業に注意されたら、運送業界の地位が“もっともっと”低下します。
運送会社が注意しなかったら、運送業界の地位は“絶対に”向上しません。
荷主企業も運送会社も注意しない時には、運送業界の地位を守るために講師である私たちが注意します。
荷主企業が、言いたくても言えないことを注意します。
運送会社が、言うべきなのに言わないことは注意します。
ちなみに運送業界の“地位”向上との表現は、「職業上の地位の存在」と併せて「その地位が高くないと認めている」ようにも受け取れるので、プロデキューブでは一切使用していません。
しかし今回のコラムでは“地位”と書きました。
あえて何度も何度も“地位”と書かせていただきましたが、今回が最初で最後です。
荷主企業が主催している受講機会において、人の話を聴く姿勢や、人と接する際の挨拶や身だしなみなどのマナーを含めた品質は、運送会社単位の“団体戦”です。
なぜなら、同じ会社の社員を注意しないことも「容認している行為」であり“注意する義務を怠った責任”が発生しますから。
配送先でのドライバーのマナーが乏しい場合、それは一運送会社の社内的な問題ではなく、配送先からは「荷主企業が“荷主代理”として容認して起用しているドライバー」と判断されて、荷主企業にも迷惑が及びます。
なによりも、荷主企業主催の研修で講師を担当する私たちが、受講している一部の運送会社の醜態を見逃すことで、世間から「この醜態レベルは運送業界では当たり前のレベルなのだろう」「だから運送業界専門の講師はいちいち注意をしないのだろう」と思われることが悔しいのです。
運送会社のドライバーが、研修に参加している(座っている)だけで「すごくがんばっている!」と評価されることも、“運送業界を見下されている”ようで悔しいのです。
地位との表現を「認知度」や「好感度」と置き換えれば、理解できることもありますが、やはり職業は多様であるゆえ、業種を地位で示すものではないと考えています。
地位ではなく「認知度」や「好感度」と捉えれば、業界単位ではなく各社の経営トップの考え方で「認知度」や「好感度」を向上できる方法が必ず存在します。
「認知度」は、安全が低下すれば、一気に“悪い評判”が広まってしまい、結末として会社は残れません。
だから安全確保に取り組むのです。
「好感度」は、挨拶や身だしなみ等の品質を高めることで、徐々に“良い評判”が広まり、お客様の記憶に残ります。
だから品質向上に取り組むのです。
製造業では世の中が便利になる新製品の開発に向けて、絶え間なく研究に励むことで存在感を増しています。
サービス業では集客力や接客力を高めて、売上と利益を高める努力をカタチにして提供しています。
創り出される製品やサービスは、全て社員教育の成果によるものであり、運送業界でも「正しく認知されて好感を抱いてもらう努力」の方法として、同様に社員教育が挙げられます。
各社内でできる努力をせずに業界全体の「地位向上」と唱えることで、「認知度」や「好感度」が好転しない原因や責任を、一方的に世間に押し付けているように思われることも悔しいのです。
運送業界として足並みをそろえてやるべきことも重要ですが、その前に運送会社で今すぐできることが有ります。
ありがとうございました。
次回は9月2日(金)更新予定です。
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