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第196回 元新入社員より
全ての社員が元新入社員です。まずは新入社員を「おもてなし」の心で迎える「おもいやり」が必要でしょう。私たちも、数(十)年前の新入社員として、新鮮な気持ちで新しい年度を迎えたいものです。
元新入社員より
新入社員にとっての門出となる春は、既存社員にとっては迎賓のような春です。
おかげさまで、自社を選んで入社してくれた新入社員には、入社したその日から社員として働いてもらいたくても、まずは「おもてなし」の心で迎える「おもいやり」が必要でしょう。
特に高校卒や大学卒の新卒社員を迎えますと、準備や指導の場面を通じて、施設やルールにおける自社の長所や短所にも気付けることがあります。
また、既存社員の全員が会社だけでなく社会の先輩にあたり、先輩として後輩に教える場面から伝えることの難しさや楽しさを知ることができます。
「伝えることができる人」は「伝えたことをできている人」であり、新入社員の指導役を担う既存社員が「先輩として模範を示さなければならない」と考えることで仕事の取り組み方を今一度正すこともできます。
先輩と後輩の区別とは社歴や年齢により判別されることが多いのですが、物事の先を見られることや出来事を広く見られる人が上司ですと、組織がさらに正しく機能するはずです。
例えば、組織で仕事を進めるうえでの「報告」の重要性は不変ですが、働き方が変わるように「報告」を機能させるための手法も変わりつつある状況です。
以前には新入社員側に「報告のやり方」を指導することが多かったのですが、昨今では絶対的な縦社会ではない新たな人間関係の築き方の一つとして、上司や先輩である既存社員側の「報告の受け方」により新入社員の能力を伸ばす手法、すなわち報告をしやすい職場環境や人間関係作りも注目されています。
また、入社数日後の新入社員でも既存社員よりも劣っていることばかりではなく、特に課題への向き合い方は、学生時代の授業中に難問を解くことでも習得できています。
入試などで狭き門や難関を正面から突破するために培った勤勉な努力は、社会に出ても必要かつ評価される基礎的な能力です。
入社後の研修などでは、つい先日まで現役の学生であった新入社員はメモをする回数が多く、文字や意味を読み込むのが早いなど、その吸収力を目のあたりにして期待が高まることもあるでしょう。
学問とは学んで問うと書きます。
既存社員と比較をして、学ぼうとする姿勢や準備が良いのは新入社員かもしれません。
既存社員と比較をして、問う素直さと積極性が映るのは新入社員の方かもしれません。
全ての社員にとって、今日の出来事は明日になれば過去になり、今日の努力が明日以降の結果につながります。
仕事においては日々前進することもさることながら、時に過去や過程を振り返ることも大切です。
一日の仕事を終えた時に、「今日よかったこと」と「今日よくなかったこと」を振り返ることがよいのですが、新入社員は担当する業務数が少なかったり、成功も失敗もあまり感じない仕事に就いていたりすることも多く、振り返る対象が少ないこともあります。
新入社員には既存社員が寄り添うように、まずは「今日よかったこと」を一緒に探しましょう。
会話の機会を確保できるだけでなく、その会話を通じて新入社員への「伝わり方」を確認できて、既存社員にとっても「伝え方」における今日の反省と明日への課題を発見できるでしょう。
全ての社員が元新入社員です。
私たちも、数(十)年前の新入社員として、新鮮な気持ちで新しい年度を迎えたいものです。
ありがとうございました。
次回は4月23日(金)更新予定です。
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