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第195回 くるまはへこまず、おなかがへこむ。
安全な運送会社ほど日ごろから安全の教育に尽力し、不安全な運送会社では事故が起こってから安全に取り組もうとする。安全(事故を減らす)と健康(体重を減らす)の取り組みにおける共通点は、どちらも事故や病気になる前に「何かを始める」か「何かを止める」ことが効果的です。
くるまはへこまず、おなかがへこむ。
出先で食事を取ることが多いのもドライバー職の特徴です。
一般道路における運行経路の選択と同様に会社から指示されるものではなく、「いつ・何を・どれぐらい食べるか」はドライバーが自分で選択するものです。
健康の三要素といわれる「食事・睡眠・運動」の中で、翌日の運行に関わる睡眠以外は法令対象外ですが、食事は安全確認と同様に毎日複数回行うことから、個々の取り組みの差が年月を経て如実に表れるものです。
食事については睡眠と同じく、「量」だけでなく「質」にも関心を持ちましょう。
時間に追われるドライバーは「食事も急いで済まさなければならない」との心理から、待機時間を利用して運転室内で手早く食べ終えることもあります。
全国各地でのおいしい食事や、仲間と談笑しながら名物料理に舌鼓を打つのがドライバーの仕事の特権というイメージは、残念ながら古き良き昭和時代の映画の中だけの世界かもしれません。
運行中には、トラックが駐車しやすい大型のコンビニエンスストアでの食料調達をするドライバーが多くなっています。
コンビニエンスストアの食料は食物成分表示が明確であったり、野菜摂取のためのサラダも一人分から手頃な価格で購入できたりするなどの良い点も多々あります。ただ、運転室内に持ち込んだカップ麺を食べながら残ったスープの処理に困り、体には良くないことと知りつつも「ゴクゴクゴク」と無理に飲み干してしまうことも……。
運送会社においては、通年での飲酒運転防止や夏の熱中症対策での飲み物に関する「教育=管理」だけでなく、食べ物に関しても心配以上の「管理=教育」をするのが次世代に通じる「安全=健康」の管理です。
車内での睡眠や食事に関しても、社内で他のドライバーの知恵や工夫の事例を聞くことができれば、体調における自身の不調に気付き、健康に向けて不節制を改めようとするきっかけにもなると思います。
近距離ドライバー同士であれば、家族から協力を得ている方法の情報交換を。
長距離ドライバー同士であれば、休憩場所やバランスの良い食事方法の情報交換を。
身近な人の取り組みは参考にしやすく、また取り組んでいる人も他の人から参考にされたり、取り組みの方法や進捗(しんちょく)状況を聞かれたりすることで励みになると思います。
食事を選択する際の優先順位に「満腹ではなく健康」や、「節約ではなく体調」を上位にすることで、何かしらの体の数値が良化すれば励みになると思います。
ちなみに、書店でダイエットの本を自分のお金で買う人は、太っている人よりも痩せている人が多いと聞きました。
その理由は、痩せている人は「体形=健康」への関心の高さから痩せようと努力をしたり、努力をして得た体形を維持しようとしたりする人が多いからだそうです。
そのことは、安全な運送会社ほど日ごろから安全の教育に尽力をしていることや、不安全な運送会社では事故が起こってから安全に取り組もうとすることにも似ています。
事故発生の前に安全を。
病気になる前に健康を。
安全(事故を減らす)と健康(体重を減らす)の取り組みにおける共通点は、どちらも事故や病気になる前に「何かを始める」か「何かを止める」ことが効果的です。
バック事故防止においては、ドライバーに「降りて確認」ではなく「歩いて確認」と表現することで、安全と健康の「一歩二鳥」を狙いましょう。
くるまはへこまず、おなかがへこむ。
安全には速度の出し過ぎによる速度超過違反の法律があっても、健康には食べ過ぎによる体重超過違反などの法律がないのが特徴です。
おなかいっぱいバイキングもよいですが、
おなかがへこむハイキングもお勧めです。
ありがとうございました。
次回は4月9日(金)更新予定です。
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