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第98回 「賃と費」の違い
品質はサービスとして、ゼロ円で提供するのではなく。品質の価値を高めて、価格になるサービスとして提供しましょう。
「賃と費」の違い
運送会社は「安全輸送のプロ」であるがゆえに。
運送会社が安全で目指す事故ゼロとは、お客様からの評価がプラスマイナスゼロの地点とも言えます。
事故を起こせばお客様はマイナス評価をくだされます。
お客様からのプラス評価を得るためにも品質の向上を。
品質はサービスとして、ゼロ円で提供するのではなく。
品質の価値を高めて、価格になるサービスとして提供しましょう。
運送会社が取り組むべき項目を、飲食店の定食に例えれば……。
安全とは主食である“白飯”のようなもの。
品質とは副食として盛り付けられる“おかず”のようなもの。
安全(白飯)が不味いお店には、お客様は来ません。
安全(白飯)が美味しいのは、お客様からすれば「あたりまえ」の評価です。
美味しいのが「あたりまえ」と思っているからこそ、注文時にいちいち白飯の味を確認するお客様はいません。
安全(白飯)が美味しいうえで、品質(おかず)が美味しいお店には、料金が少々高くてもお客様の行列が絶えません。
運送会社が安全と品質の両面を高めることは、飲食店が選ばれる定食を提供し続けるようなもの。
値段が高くても「行列ができる運送会社」になるために。
まずは安全(主食)、次に品質(おかず)に取り組みましょう。
値段の安さではなく、味の良さで評価を得るために。
運送会社の“味”を高める努力として、社内教育という仕込みの時間が必要です。
仕事の対価として「距離×量」で決まるとされる運賃の対象は「運ぶ行為」を指します。
「運ぶ行為」の対象である「距離×量」は、お客様もご依頼時には把握されていても、実際の「運んでいる行為」はお客様には見てもらえないものです。
この「見えない世界」は飲食店でいうところの「壁の向こう側の厨房での出来事」と同じこと。
見えないものには違いが分かりにくく、違いを感じなければ値段が安い方が喜ばれるのは必然です。
最近の飲食店の流行を見ると「オープンキッチンスタイル」を代表例に、調理している姿を見せたり、食材の産地やこだわりを見せたりすることが付加価値となっているようです。
お客様から運送会社が見えるのは、道の上の安全な姿よりも構内での品質の姿のようです。
運賃とは道の上での安全に対する対価であり、その安全に「お客様先での時間と労力」であると品質を足した対価が運送費用であると考えます。
「距離×量=運賃」だけでなく「距離×量+時間×作業=運送費」との考え方です。
これが「賃と費」の違いです。
例えばラーメンのトッピングと同じく、運賃が基本料金で時間や作業は別料金であるべき。
時間というトッピングには「待機・急ぎ・指定」の3種類があります。
鉄道業界における、券種と料金設定が参考になるのではと思います。
乗車券とは、その区間の輸送に対する基本運賃。
特急券とは、乗客の到着時間を早める付加価値。
指定券とは、乗客が並ばずに座席を確保できて、乗車前の待ち時間を縮める付加価値。
それぞれの付加価値には、乗客の時間を縮めることで対価が発生しています。
これからの運送業界は、お客様が行うべきと思われる作業を無料で引き受けたり、遅い時間や当日の出荷でもすぐに届けたりすることで、お客様の時間を縮めるだけでなく。
お客様にも、運送会社も時間を縮める努力が必要であることへの理解を得なければなりません。
そして、運送会社が「待機時間を縮める」もしくは「空車時間を縮める」ための努力として、他社より値段が高くてもお客様が待ってでも「あの運送会社に運んでほしい」と思う「行列ができる運送会社」になるために。
まずは、マイナス評価をくだされないためにも安全を。
次に、プラス評価を得るための品質にも取り組みましょう。
ありがとうございました。
次回は5月26日(金)更新予定です。
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